第61話「分断」
王都は、歓喜に包まれていた。
黒衣に覆われていた街は一転し、色彩を取り戻す。
花弁が舞い、鐘が鳴り、人々は声を枯らして叫んでいた。
そして、王都の大通りに豪華な馬車が通る。
その上には、レイアとアスベルが立ち、民衆に手を振っていた。
「レイア・ガーネット四世、万歳!」
「女王陛下に栄光あれ!」
「王配アスベルに祝福を!」
そして、王城の門の前につく。そこには大きな櫓が組まれていた。
アスベルはレイアの手を引き、レイアを導く。
そして、櫓の上に立った若き女王は、背筋を伸ばし、はっきりと宣言した。
レイア「私は、レイア・ガーネット四世として王位を継承します」
その声に、騎士たちが剣を鳴らし、貴族たちは一斉に頭を下げた。
レイア「そして」
女王は隣に立つ男へと視線を向ける。
レイア「アスベルを、我が王配とします」
一瞬の静寂。
次の瞬間、割れるような拍手が王都全体を満たした。
隻眼の男。しかし、レイアを陰ながら支えてきた。
彼は、いまや女王の隣に立っていた。
だが、その拍手の中に、確かな“異音”が混じっていた。
微笑みながらも拍手しない者。
視線を逸らす者。
沈黙を選ぶ者。
祝福は一枚岩ではないのをアスベルは見逃していなかった。
北方、ノースティナ辺境伯領。
重苦しい空気の漂う屋敷で、バーンズは苛立ちを隠さず声を荒げた。
バーンズ「……王配はアスベル、だと?」
机を叩き、吐き捨てる。
バーンズ「ランドバーグ家を捨てられた落第貴族が!」
バーンズは拳を机に叩きつけた。
向かいに立つフリーマンは、歯を食いしばっていた。
フリーマン「まあいい。それも計算通りなんだろ?」
バーンズは肩で息をしていたが、急に落ち着く。
バーンズ「当たり前だ」
サイリーはソファでゆっくりと本を読んでいる。
サイリー「戴冠式まであと一月」
サイリーは本を閉じる。
サイリー「それまでにアスベルが余りに王配にふさわしくないという噂を流して、世間を動かす」
バーンズはゆっくりと椅子に座る。
バーンズ「レイア・ガーネット四世……若いが、覚悟を決めたか」
バーンズは葉巻を取り出し、吸い始めた。
バーンズ「フリーマンを王にするシナリオを進めようか」
同じ頃。
王城の回廊。
歓声を背に、アスベルは静かに歩いていた。
アスベル(割れる)
拍手も、忠誠も、祝福も。
すべてが同じではないことを、彼は知っている。
アスベル(王配という立場は、便利だ)
アスベルは、微かに笑った。
アスベル(正義は我が手に。そして、闇は…)
戴冠式まで、残り一ヶ月。
王都は祝福に包まれ、
そして確実に分断され始めていた。
読んでくださり、ありがとうございます。
光と影はどちらとも主役になり得る。




