第59話「噂」
会議が終わり、
王城・評議の間には、三人だけが残されていた。
西の女傑、メラ・ルクシード公爵。
東の雄、レクシア・サファイア公爵。
南の老獪、ユルド・ヴァレンシュタイン公爵。
重い扉が閉じられ、
ようやく、誰に聞かれることもない空気が戻る。
メラは、深く息を吐いた。
メラ「……私たちは、本当に正しい人を推したのかしら」
その声には、迷いがあった。
レクシアは、苦笑する。
レクシア「今さらだよ。彼はああいう男だ」
ユルドが、静かに頷いた。
ユルド「学園時代を思い出すな」
ユルド「当時はアスタの影武者を演じながらだったがな」
ユルド「盤面を読む力は別格だ」
ユルドは視線を落とす。
ユルド「……まあ、それで我が息子は身分を落とされたがね」
メラ「……恨んでないの?」
ユルド「恨むものか。あれは完璧だった。」
ユルド「それに、今や息子は王国の3番目だ。むしろ誇りだ。」
その言葉が、重く残る。
メラ「もし――もし、あの男が道を踏み外すことがあれば」
彼女は、はっきりと言った。
メラ「その時は、私たち三人で必ず止めましょう」
レクシアは一瞬、考え込み、そして肩をすくめる。
レクシア「まあ……スキを見せるとは思えないけどね」
冗談めかした口調だったが、そこに油断はなかった。
ユルドが話題を切り替える。
ユルド「それよりも問題は、フリーマンとサイリーだ」
二人の名が出た瞬間、空気がさらに冷える。
ユルド「民が扇動されるのを防がねばならん」
レクシア「噂は、すでに流れ始めている」
レクシアは、低い声で続けた。
ユルド「噂は更なる嘘の噂を呼ぶ」
ユルドは立ち上がる。
ユルド「急ぎ、領地へ戻ろう」
ユルド「民草を安心させるのが、今の我々の役目だ」
メラとレクシアも立ち上がった。
三人は、同意するように頷き合い、
それぞれの帰路についた。
別室
レイア「アスベル?どうするの?」
アスベルは無表情で返事をする。
アスベル「国王の崩御を公表し、盛大な葬儀を行う。」
アスベル「コルド。2日後だ。」
コルド「…はいよ。人遣いが荒すぎる。」
アスベル「俺は、すこし用事がある。あとは任せる。」
レイア「……どこにいくの?」
アスベル「なあに……危険なことではないさ」
アスベルは意味ありげに去って行った。
深夜
アスベルは人気のない路地裏に居た。
アスベル「ルーク」
すると、路地裏の影から飄々と男が出てきた。
ルーク「呼び出しとは珍しいな」
アスベル「無駄口を叩くな」
ルークは気にせず、近づいてきた。
ルーク「それで?」
アスベル「裏の金の動きを掌握しろ。この1週間のだ。」
ルーク「…なんでまた。めんどくさいことを」
アスベル「……国王が崩御された。」
ルークは驚く。
ルーク「噂だと思ってたが…」
アスベル「あと、もう一つ。」
アスベル「レイア王女がアスベルを王配に選んだと噂を流せ。」
ルーク「……アスベルさん。あんた何を企んでいるんだ。」
アスベル「俺は非効率は嫌いだ。平民まがいの俺が国王になるのを嫌うやつが絶対に居るからな」
ルークはわけわからんという顔で闇の中に去って行った。
アスベル(さて……狩りを始めようか)
読んで下さりありがとうございます。
噂は民衆が広げるが、噂は誰かが流している




