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悪徳貴族として酒池肉林を目指しているが、世間がうるさいので黙らせることにした  作者: ルピナス
王国編

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第50話「支配構造」

王城西棟。

静まり返った書斎で、第二王子サイリー・ガーネットは書物を読んでいた。


夜更け

蝋燭の炎に照らされ、人の影を揺ら揺らと揺らしている。

そこへ、扉が乱暴に開いた。

フリーマン「……クソが」

第一王子フリーマン・ガーネットだった。

鎧も外さず、苛立ちを隠そうともせず、椅子を蹴って座る。

サイリー「鎧ぐらい脱いできなよ」

サイリーは本を閉じて、溜息をつく。

サイリーはソファに座る。

サイリー「随分と手酷くやられたようだね」

フリーマン「見ての通りだ。レイアのくせに……」

フリーマン「それよりもあの“側近”だ」

サイリーは足を組んで手を口の前に持ってくる。

サイリー「アスベル、だったね。レイアが拾った男にしては、出来すぎている」

フリーマン「出来すぎどころじゃねぇ。魔道士への仕打ちはわざとだ。周りに恐怖を植え付けに来てやがる」

サイリー「同感だ。あれは“勝つため”の模擬戦じゃない。“逆らうとこうなる”という見せしめだ」

フリーマンは舌打ちした。


フリーマン「殺すか?」

サイリー「ダメだ」


即答だった。

サイリー「今、あれを殺せば“レイア派が迫害された”という物語が生まれる」

サイリー「彼女は弱者の顔をしている。」

サイリー「だからこそ、殺せない」

フリーマン「ふざけやがって…」

フリーマンは顔を手で抑える。

フリーマン「……じゃあ、どうすんだよ」

サイリーは静かに立ち上がり、窓の外を見る。

サイリー「派閥固めを進めよう」

サイリー「貴族は、結局“どちらが得か”で動く」

フリーマン「西、東のどっちだ?」

サイリー「どちらもだ」

サイリー「レイアの派閥は貧弱だ。公爵家が我らにつけばすぐに崩れる」

フリーマンは獰猛に笑った。

フリーマン「じゃあ、俺は西に行こう」

サイリー「では、私は東に」

その言葉に、部屋の空気が冷えた。

フリーマン「俺たちの王国のために」

サイリー「お前は王、私は宰相になるために」

二人の王子は、同時に理解していた。

これはただの兄妹喧嘩ではない。

王国を賭けた、戦争の始まりだということを。



同刻。

王城の別室。

レイア・ガーネットは、机に広げられた地図を見下ろしていた。

その隣には、アスベルとコルド。

アスベル「というような派閥固めの相談をしている頃でしょう」

レイア「なぜ2人が組んでいると?」

コルドが外を見ながら話し出す。

コルド「サイリーが動いてないからか」

アスベル「その通り」

アスベル「俺たちでもフリーマンを動かせた。」

コルド「つまり、サイリーは王に興味がない」

アスベル「フリーマンを王にして、自分は宰相として王国を私物化するつもりなんだろ」

レイアは拳を握る。

レイア「させません」

アスベルは笑う。

アスベル「しかし、権力には我々は勝てません。なので、手法を変える。」

コルドはこちらを向く。

コルド「商人だな。つまり、金の力だ。」

レイア「……なぜ、商人なのです?金なら私が……」

レイアの問いに、アスベルは一瞬だけ微笑んだ。

アスベル「王子たちは“貴族”しか見ていません」

アスベル「ですが、この国を動かしているのは、実際には“物”と“金”です」

アスベル「…そこにつけ入るスキがある。」

アスベルは目の前に広がる王国の地図の西側を指差す。

アスベル「西は貧しい。山が多く畜産は盛んですが、販路が弱い」

次に東を指す。

アスベル「東は栄えています。理由は分かりますね?」

レイア「海運……」

アスベル「はい」

アスベル「そこで、レイア様に宣言して頂たい。」

アスベルは、淡々と口にした。

アスベル「海産物の関税を下げましょう、と」

コルドが口笛を吹いた。

コルド「東の商人は飛びつくな」

アスベル「次に、別の商人にはこう言います」

アスベル「西の販路を整備する公共事業を計画すると」

レイアは目を見開いた。

レイア「……西と東、両方を?」

アスベル「ええ。東には“利益”を」

コルド「西には“希望”か」

アスベルは静かに続ける。

アスベル「商人は政治理念では動きません」

アスベル「金と安定で動く」

コルド「王子側は“権力で脅す”」

コルド「こっちは“儲かるから従う”」

アスベル「その通り」

アスベル「どちらが長く続くかは、言うまでもない」

レイアは、ゆっくりと息を吐いた。

コルド「西の金はどうする?」

アスベル「そこは、コルドに任せます。」

コルド「面白くなってきた。」

レイアは2人を見て、安心する。

レイア「……つまり」

レイア「王子たちは“力”で国を縛る」

レイア「私たちは“金”で国を包む」

アスベルは頷いた。

アスベル「そうです」

アスベル「気づいた時には、誰も王子達の命令を聞かなくなる」

レイアは、初めてはっきりと笑った。

レイア「……恐ろしい方ですね、アスベル」

アスベルは、視線を落とす。

アスベル「恐ろしいのは、この世間の仕組みです」

アスベル「私は、それを使うだけだ」

その夜。

王城の水面下で、二つの流れが動き始めた。

一つは、権力による支配。

もう一つは、金による支配。

そして後者は、音もなく、確実に国を侵食していく。

王位継承戦争は、

剣より先に、金で始まった。

読んで下さり、ありがとうございます。

経済こそ、全ての根幹

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