第33話「取引」
ローズ「教皇様!これを見てください。」
ローズはまとめられた紙束を差し出す。
教皇ライン「これは!」
教皇ライン「ハイツ!これをどう説明する!」
教皇ラインは紙束をハイツに投げつける。
ハイツは慌てて、紙束を拾って読み始めた。
ローズ「ハイツ…お前は寄付金を不当に横領しただけではなく、それを使って人身売買をしていた。」
シンシアが驚く。
ローズ「寄付金が払えず、奇跡を得られなかった信者を囲ったり、奴隷に落としていることも確認している。」
ハイツは紙束を見て、肩を揺らし始める。
ハイツ「言わせておけば…これは嘘に決まってる!」
ハイツはアスベルを見る。
ハイツ「またこいつの差し金です!次は我々の内部分裂を引き起こそうと」
ローズ「黙れ!これは我々警備部隊が調べたことだ!」
教皇がゆっくりと立ち上がる。
教皇ライン「ハイツよ。許してはおけぬ。処刑だ。死をもって償え!」
ハイツの元に聖騎士が駆ける。
ハイツ「やめろ!離せ!」
「お待ちください」
アスベル「今は開国祭前です。現役の祭司が処刑されたならば、信仰がさがる恐れがあります。」
ハイツは困惑した表情でアスベルを見ていた。
アスベル「闇に手を出したものは闇によって葬られるべきです。」
今や会議場はアスベルに集中していた。
アスベル「入ってきてください。」
会議場の扉が開く
顔に傷がある男が入ってくる。
ハイツの顔面が蒼白になる。
グリース「俺の名前はグリース。そこにいるハイツと共に人身売買をやっていた者です。」
ローズ「アスベル様!何のマネですか!」
ローズと聖騎士が教皇の周りに集まる。
アスベル「落ち着いて、まずは話を聞きましょう」
グリース「我々はハイツ様に脅されていたのです。従わなければ処刑、奇跡を与えないなど言われました。」
グリース「しかし、このままでは何も変わらないとアスベル様と話し、改心致しました。」
グリースは膝をつく。
グリース「我々は教会に対し、5000枚の金貨を寄付し、その男の処理を致しましょう。」
ローズ「司法取り引きか…お前の罪が消えたわけではないぞ?」
グリース「承知の上です。これから償って参ります。」
アスベル(まあ、嘘だがな)
遡ること襲撃された夜
アスベル「お前がボスか」
グリース「若いのにやるじゃねえか。」
グリースは酒を飲みながら、語り始める。
グリース「俺を殺しに来たわけではないんだろ?まあ座れや」
アスベルはゆっくりと座る。
アスベル「単刀直入に言う。このままだとそっちは破滅だ。」
グリースの顔が変わる。
グリース「それはハイツの野郎の件か?勝つから大丈夫だって言ってたぜ。」
アスベル「ハイツと戦うのが俺だとしてもか?」
グリース「………」
グリースは酒を飲み干す。
グリース「それで、どうしてほしい?」
アスベル「金貨5000枚の用意と裏切りだ。それでお前たちは助かる。」
グリース「お前個人は?」
アスベル「しかるべきときに協力してもらう。人や肉の用意も含めてな」
グリースは笑い出す。
グリース「ハイツより大物だな。任しておけ」
場面は大聖堂の奥の会議場に戻る。
アスベル「教皇様。私の案を飲んでいただければ、教皇様は手を汚すことなく処理が可能です。ナハト教の教えに背くことはありません。」
沈黙が走る
教皇ライン「条件を飲もう。」
ローズ「教皇様!」
教皇ライン「改革案を滞りなく成就するためにも止むを得まい。」
ローズは黙った。
教皇ライン「グリースよ。ハイツを連れていけ」
グリース「……承りました。」
グリースはハイツの首を掴んで、引っ張っていく。
ハイツ「シンシア!シンシア!助けてくれ!」
ハイツはシンシアに助けを求める。
シンシア「さようなら、ハイツ。」
シンシアはアスベルの肩に顔を寄せて泣き始める。
アスベルはシンシアを抱きしめる。
ハイツ(ああ…全て奪われた。あいつに……)
読んで下さり、ありがとうございます。
取引は対等な立場でやりましょう。




