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悪徳貴族として酒池肉林を目指しているが、世間がうるさいので黙らせることにした  作者: ルピナス
聖王国編

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第29話「邂逅」

夜。

宿屋での一室。アスベルは1人で考えごとをしていた。

アスベル(ルークのおかげだな)

机の上にはメモがあった。

ハイツ祭司

本名ハイツ・ローレンツ

教会での総務を担当

出世欲が強く、教皇を目指している。

裏では人身売買や薬物の取引に手を出しているという噂

そして、一番下には

“シンシア司祭とは幼馴染”


アスベル(やはり、どの組織にも1人はこんなやつが居るもんだな)

アスベルはメモを見て笑う。

ミスティ「……何を笑っているんだ?」

アスベルはゆっくりとミスティを方を向く。

アスベル「なんだ、ミスティか」

ミスティ「……アイミスがよかったか?」

アスベル「まあいい。用件は?」

ミスティ「ローズ司祭が明日来るそうだ。冒険者ギルドから聞いた。」

アスベル(いいタイミングだ。)

アスベル「明日、ローズと会ったらここに連れてこい」

ミスティ「……承知した」

ミスティは部屋から出て行った。

アスベル(さあ…聖王国をより良くする話し合いを始めようか)


次の日の昼

ミスティ「アスベル様、連れてきました。」

ローズ「ローズ司祭だ。君が善良な旅人のリーダーかな?」

ローズは緊張していた。目の前に居る男は明らかに格が違うからだ。

シンシア「……ローズさん?」

ローズ「シンシア!なぜここに!」

シンシア「このアスベルさんに相談に乗ってもらってたの」

ローズ「そうだったのか」

ローズは頭を下げる。

ローズ「アスベルさん、本当にありがとう。シンシアはあなたのおかげで持ちこたえていたのですね」

アスベルは優しい笑顔を浮かべる。

アスベル「いえいえ。」

アスベル「それより、話があるんですよ。座ってください。」


アイミスがコーヒーを持ってくる。

ソファにローズとシンシアが並んで座り、アスベルが向かい側に座っていた。

アスベルはコーヒーを飲み、カップを置く。

アスベル「単刀直入に言います。私は寄付金制度を変えるべきだと思っています。」

シンシア「それはダメです…ハイツが何と言うか」

ローズ司祭は少し考える。

ローズ「考えを聞かせてもらっても?」

シンシア「ローズさん!」

ローズ「シンシア、まずは話を聞いてみよう。」

アスベルは笑顔になる。

アスベル「ありがとうございます。」

アスベル「まず、現段階の寄付金制度は奇跡を報酬としたビジネスです。」

アスベル「小さい組織なら良いですが、聖王国となると話は別だ。」

シンシア「小さい病気でも奇跡を受けるのが難しくなる。」

アスベルは笑う。

アスベル「なので、これです。」

アスベルは懐から小瓶を取り出す。

ローズ「これは!奇跡が起きた家にあったやつと同じですね」

シンシア「ということは…」

アスベルはニヤリとする。

アスベル「そうです。私が奇跡を起こしていた人間です。」

ローズとシンシアは驚く。

アスベル「話を続けても…?」

ローズとシンシアは頷く。

アスベル「これは私が開発した風邪薬です。これを教会で売る。寄付金とは別でね。」

アスベル「そうすれば、教会も儲かり、民は喜ぶ。」

シンシア「……そうすれば寄付金が減るのでは?」

アスベル「寄付金を貰う機会を年に一度にする。」

ローズ「無理に決まってる。」

アスベル「教皇を説得し、発表させるんです。1年は365日、1日銅貨1枚を貯金しよう。それを開国記念祭にて寄付をしようってね。」

アスベルは続ける。

アスベル「銅貨365枚だと、3級信仰で風邪薬の値段は据え置き。銅貨730枚だと2級で風邪薬は2割引きというようにするのです。」


アスベルは淡々と続ける。

アスベル「要はこうです。“奇跡”は神のものとして残す。“治療”は人の知恵として切り分ける。」

ローズは腕を組み、低く唸った。

ローズ「……教会が“奇跡の独占”を手放すことになる」

アスベル「いいえ」

アスベル「“奇跡の価値”を守るんです」

アスベルは立ち上がり、窓から街を見る。

アスベル「私はここでよく見てきました。軽い病でも奇跡を求め、払えない者は絶望する。」

アスベル「民が救われるために信仰しているのに苦しんでいる。」

ローズは、ゆっくりと息を吐いた。

ローズ「最近は“奇跡を出せ”と怒鳴る信者も増えた」

アスベル「でしょう?」

沈黙が落ちる。

シンシアは、両手を胸の前で握りしめていた。

シンシア「でも……」

シンシア「ハイツは、絶対に反対します」

アスベルは、穏やかに笑った。

アスベル「でしょうね」

ローズが、鋭く視線を上げる。

ローズ「……ハイツは狡猾な男だ。」

アスベル「考えを改めなければ」

アスベルは、コーヒーの残りを一口飲む。

アスベル「ただの“時代に取り残される人”です」

ローズは、しばらくアスベルを見つめ――

やがて、低く笑った。

ローズ「……なるほど」

ローズ「だから俺を呼んだのか」

アスベルはニヤリとする。

シンシア「どういうこと?」

ローズは立ち上がり、シンシアを見た。

ローズ「ハイツは黒い噂が絶えない男だ。」

ローズ「この話を出せばハイツは動く。必ずな」

アスベルは、楽しそうに目を細めた。

ローズ「シンシア、この話を教皇に提案しよう。私も味方をする。」

シンシア「ローズさん…私頑張ります!」

ローズ「……ただし」

ローズ「もし君が嘘をついていたら、その時は私が君を捕まえる」

アスベル(ローズ…やはり扱いやすい)

アスベルは、穏やかな笑みを浮かべたまま答えた。

アスベル「宗教改革を成し遂げましょう。」

その夜。

聖王国クリアリースの空に、鐘の音が響いた。

誰も知らない場所で――

教会の歯車が、静かに、しかし確実に噛み合い始めていた。

アスベル(さあ……)

アスベル(楽しくなってきた)

読んで下さり、ありがとうございます。

悪巧み?いいえ、違います

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