第23話「パルティア大聖堂」
白い石畳を踏みしめながら、三人は歩いていた。
先導するのは、司祭シンシア。
街の中心へ近づくにつれ、音が消えていく。
屋台の呼び声も、笑い声も、足音さえも――
まるで、音そのものが吸い取られているかのようだった。
アイミス「……静かですね」
ミスティ「さっきまで、あんなに人がいたのに」
シンシア「大聖堂は神聖な場所ですから」
柔らかな声。
シンシア「ナハト様の御前では、不要な言葉は慎むものです」
アスベル(神が作ったわけではあるまいに)
やがて、それは見えてきた。
パルティア大聖堂。
巨大な建造物。
白一色で統一された外壁は、装飾を最小限に抑えながらも、圧倒的な存在感を放っている。
中央には高くそびえる尖塔。入り口までは天へと伸びるような階段がつながっていた。
アスベル(これが宗教の力か)
アイミス「こ、これ……全部、石ですか?」
ミスティ「綺麗だな」
アスベルは、無言で建物を見上げていた。
アスベル(信仰の象徴…権力の誇示…)
長い階段を登りきる。
入口の前には、すでに多くの信者が並んでいた。
皆、フードを被り、静かに順番を待っている。
誰一人、喋らない。
シンシア「さあ、こちらへ」
シンシアは自然な所作で列に混ざる。
扉が開く。
――瞬間、空気が変わった。
外よりも、さらに静か。
高い天井が広がり、柱に刻まれた無数の紋様。
壁一面に描かれた、創造神ナハトの聖画。
アイミス「すごい!」
ミスティ「壮観だ。」
アスベルは周りをみる。
祈る人々。
数え切れないほどの信者たちが、床に膝をつき、頭を垂れていた。
誰一人、顔を上げない。
誰一人、視線を彷徨わせない。
まるで、同じ意志を与えられたかのように。
アスベル(反吐が出そうだ。)
すると1人の老人が歩み寄ってくる。
老人「シンシア司祭…」
シンシア「敬虔な信徒よ。何かありましたか?」
老人は話し出す。
老人「孫娘が、病気なんじゃ」
シンシア「それはお辛いですね。」
シンシアは悲しそうな表情をする。
シンシア「あなたが諦めなければ、必ず救いがあります。これから信仰を忘れなければ必ず救われます。」
老人「奇跡の技で助けてはくれませぬか?」
シンシアは笑顔で応える。
シンシア「奇跡は授けることは出来ます。しかし、奇跡はナハト様を信じたものしか与えられません。信頼を得るには毎日の祈りと寄付です。」
老人はそれを聞き、去っていく。
アイミス「シンシアさん…良い人ですね」
アスベル(良い人?結局、救ってほしければ金を寄越せってことじゃないか)
アスベル「……素晴らしい場所ですね」
心にもない言葉。
シンシアはニコリとする。
シンシア「みなさん、この講堂がパルティア大聖堂の中心。ナハトの間です。皆さんも祈りを捧げましょう。」
アスベル達も膝をついて祈る。
アスベル(居もしない神、救ってくれる神)
アスベル(結局、信じられるのは自分だけだ)
アスベル達はパルティア大聖堂を後にした。
読んで下さり、ありがとうございます。
神は沈黙、人は饒舌




