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悪徳貴族として酒池肉林を目指しているが、世間がうるさいので黙らせることにした  作者: ルピナス
学園編

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17/30

第17話「宴」

夜。

 レンブラント学園の大講堂は、昼とは別の顔を見せていた。

 天井から吊るされた魔導灯が柔らかな光を放ち、

 長卓には豪奢な料理と酒が並ぶ。

 貴族、平民、教員、来賓――

 文化祭の成功を祝う宴が、華やかに始まろうとしていた。

 中央上座。

 ガーネット三世国王と王妃ハイネ。

 その隣には校長レイア。

 そして、少し下がった位置に文化祭実行委員長、アスベル・ランドバーグ。

 誰もが、今日の成功を疑っていなかった。

ガーネット三世「見事な文化祭であった」

杯を掲げ、満足そうに言う。

ガーネット三世「若者たちの力は、国の未来そのものだな」  

拍手が起こる。

そのとき、講堂の扉が勢いよく開かれる。

「お待ちください、陛下」

 場違いな声が、空気を裂いた。

 振り返る視線の先。  

そこに立っていたのは、コルド・ヴァレンシュタインとゴーン、ライブだった。

コルドは顔は強張り、だが口元には勝ち誇った笑み。

コルド「この宴の前に、どうしても申し上げねばならないことがございます」  

宰相ヴァレンシュタインの顔色が変わる。

ヴァレンシュタイン「コルド、何を」

コルド「父上、これは“正義”のためです」

大講堂の空気は、一瞬で凍りついた。


 コルド・ヴァレンシュタインが掲げる一冊の帳簿。  その表紙に記された文字を、誰もが見ていた。

コルド「文化祭の寄付金の一部が」

コルド「不正に、実行委員長アスタ・ランドバーグの元へ流れていた証拠です」

 ざわめき。 好奇と不安が、波のように広がる。


 アスベルは、眉一つ動かさなかった。

アスベル「……」

静かな声

アスベル「帳簿、ですか」

 視線を横に向ける。

アスベル「スルト」

スルト「……こちらです」

スルトが、一冊の帳簿を差し出す。

 それは、まったく同じ体裁。

アスベル「おかしなことに」

ページをめくりながら、淡々と続ける。

アスベル「同じような帳簿がここにもあります」

アスベル「校長先生の印鑑を正式に頂いたものがね」

アスベルはレイアに帳簿を渡す。

 レイアが受け取り、中身を確認する。

レイア「……確かに」

レイア「こちらが、私がサインした原本です」

 どよめきが、大きくなる。

コルド「な……!?」

コルド「そんなはずは……!」

 アスベルは、帳簿を閉じた。

アスベル「しかしながら」

アスベル「なぜか外見は全く同じの帳簿が存在している。」

 視線が、静かにコルドを射抜く。

アスベル「それを、どこから手に入れたのですか?」

コルドは押し黙る。

 アスベルは、わずかに首を傾けた。

アスベル「なるほど」

アスベル「では、質問を変えましょう」

 声は、あくまで穏やか。

アスベル「その帳簿」

アスベル「あなたが“改ざん”したのではないですか?」

ライブ「無礼者!」

即座に叫ぶ。

ライブ「それは、調停委員会の部屋に置いてあった!」

 ライブははっとして、口を押さえる。

 遅かった。

 アスベルは、深く息を吐いた。

アスベル「……はぁ」  困ったように、肩をすくめる。 アスベル「今、認めましたね」 アスベル「“盗んだ”と」

 静寂。

 誰も、何も言えない。

 宰相ヴァレンシュタインが、ゆっくりと立ち上がった。


ヴァレンシュタイン「……陛下」

 重々しい音とともに、床に膝をつく。  

額が、石床に叩きつけられる。

ヴァレンシュタイン「すべて……」

ヴァレンシュタイン「すべて、私の不徳の致すところにございます……!」

 完全な、土下座。

 大講堂が、息を呑む。

ヴァレンシュタイン「倅が……」

ヴァレンシュタイン「倅はまだ若い……」

ヴァレンシュタイン「どうか、我が命にて……!」

 だが。

 国王ガーネット三世の声は、冷たかった。

ガーネット三世「顔を上げよ、ヴァレンシュタイン」  低く、鋭い声。

 宰相が、恐る恐る顔を上げる。

ガーネット三世「お主の有能さは認めている」

ガーネット三世「だが――」

ガーネット三世「倅の罪は倅のものだ」

 ヴァレンシュタインの顔が蒼白になる。

ガーネット3世「お前の功績に免じて死罪はやめよう」

ガーネット3世が立ち上がる。

ガーネット3世「コルド・ヴァレンシュタイン及び後ろの2人を奴隷送りとする。」


コルド「父上!」

コルド「僕は、ただ貴族の誇りを――!」

ガーネット三世「誇り?」

国王の目が、完全に据わった。

ガーネット三世「偽造と窃盗が、誇りか」

 短い沈黙。

ガーネット三世「連れて行け」

 衛兵が動く。  

コルド達は抵抗し、叫びながら引きずられていく。

コルド「アスタ……!」

 アスベルは、ただ静かに頭を下げた。

アスベル(掃除完了)



 宴は、やがて再開された。  

誰も、アスベルを責めることはできない。

むしろ、称賛されていた。


 深夜。

 誰もいない回廊で、アスベルは立ち止まる。


 声を出して笑うことも、

 感情を表に出すこともない。

 残ったのは、この学園に彼を止められる者はいないという事実だけだった。

読んで下さり、ありがとうございます。

良い宴でした。

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