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悪徳貴族として酒池肉林を目指しているが、世間がうるさいので黙らせることにした  作者: ルピナス
学園編

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第15話「準備」

文化祭開催まで、残り一か月。

 レンブラント学園は、これまでにない熱気に包まれていた。

 廊下のあちこちで、生徒たちが立ち止まり、紙を広げ、声を弾ませる。

「この料理、出していいと思う?」

「うちの地元の酒……いや、酒はダメか」

「展示だけなら問題ないよな?」

 出し物は、クラス単位ではない。

 学年も、身分も、関係ない。

 共通の趣味、友人関係、地元の繋がり――

 生徒個人が、自由に参加できる形。

 それが、今回の文化祭の最大の特徴だった。


 調停委員会の部屋。

 壁一面に貼られた紙には、申請一覧がびっしりと並んでいる。

出し物名

代表者

参加者

使用場所

必要予算

責任者

承認状況

 すべてが、可視化されていた。

 机の中央で、アスベルは腕を組み、その一覧を眺めている。

アスベル(……いい流れだ)

 平民が多い。

 だが、貴族も混ざっている。

 特に目立つのは――

 貴族と平民が混ざった申請だった。

アスベル(貴族派はやっぱりいないな)

 強制ではない。

 押し付けでもない。

 「楽しそうだから参加する」

 それだけの理由。

 だからこそ、拒否した者は自ら孤立する。

アスベルは心の中で笑う。


アイミス「委員長、今週分の申請です」

 分厚い紙束が、机に置かれる。

ミスティ「警備計画の再確認もお願いします。人の流れが想定より多いです」

スルト「予算の仮配分、まとめました」

 それぞれが、淡々と役割を果たしている。

 半年前とは、まるで別人だ。

アスベル「ありがとう。順調だ」

 アスベルは一枚ずつ目を通し、ペンを走らせる。

アスベル「これは場所変更。

     これは安全確認を追加。

     これは問題なし」

 即断。

 だが、決して雑ではない。

 すべてが、後から責任の所在を追える形で処理されていく。

アイミス(……やっぱり、すごい)

 アイミスは記録を取りながら、思う。

 優しい。

 丁寧。

 公平。

 けれど――

 どこか、冷たいほど合理的。



しかし、事件が起きる。


 その日の午後。

スルト「……委員長」

 珍しく、スルトが硬い表情をしていた。

アスベル「どうした?」

スルト「帳簿が……ありません」

 空気が、わずかに張りつめる。

ミスティ「盗難?」

スルト「はい。今朝までは、確かに……」

 スルトの声が、震える。

スルト「……貴族派だと思われます。」

 その言葉には何か確信があった。

スルト「部屋からゴーンとライブが出て行ったのをみた学生がいます。」

アイミス「そんな……」

 一瞬、沈黙。

 だが。

アスベル「……なるほど」

 アスベルは、驚かなかった。

アスベル(予想通りだ)

 椅子から立ち上がり、机の引き出しを開ける。

 そして――

 一冊の帳簿を、静かに取り出した。

アスベル「大丈夫だ」

 スルトの肩に、手を置く。

スルト「……え?」

 アスベルは、帳簿を机に置いた。

アスベル「これが、本物だ」

 ページを開く。

 寄付金。

 協賛金。

 用途。

 承認欄。

 すべてが、完璧に揃っている。

スルト「……じゃあ、盗まれた帳簿は……」

アスベル「フェイクだ。大事な帳簿を部屋に置いたままにしないだろう。」

 淡々とした声。

アスベル「君が狙われるのはわかっていた。」

スルト「す、すみません……!」

アスベル「謝る必要はない」

 視線を上げる。

アスベル「君は、正しく仕事をした」

 その言葉に、スルトの目が潤む。



 同じ頃。

 学園の一角。

コルド「……帳簿は?」

ゴーン「確かに、持ち出しました」

ライブ「中身も、完璧でしたよ」

 コルドは、満足そうに笑う。

コルド「よし……これでいい」

コルド「文化祭当日、

    “公平な実行委員長”の化けの皮を剥ぐ」


 夜。

 調停委員会の部屋。

 アスベルは、一人、帳簿を閉じる。

アスベル(餌は食いついた)

 最初から、想定していた。

 金。

 平民。

 会計。

 だからこそ、

 一番“悪く見える偽物”を用意した。

アスベル(あとは、舞台を整えるだけだ)

 文化祭は、まだ始まっていない。

 だが。

 すでに、

 勝敗を分ける準備は――

 すべて、終わっていた。

読んで頂き、ありがとうございます。

自由っていうのは時には残酷ですね

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