抱擁
掲載日:2026/03/07
ほどけかけた靴紐を
結びなおした路地の端
庭先からこぼれる
鮮やかな黄色
イペーの花はこんもりと咲き
そこを一際明るくした
何気ない日々の何気なさが
不意に色づいて
風すらも濡れた光を帯びる 昼下がり
雲の揺れるかたちのままに
覗いた青が胸を透き
日付のない懐かしさを
掬いあげて行く
カーブミラーの曲がった景色に
短い橋の合間のせせらぎに
はにかむように微笑んでいる
道しるべにもならない 淡い影に
ばったりと また
出会えたのなら
抱きしめずには
抱きしめられずには
いられない
たとえそれが
空を 掻き抱いたとしても




