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50話 チュートリアル

 四人は、話を聞いた翌日、早々に教えてもらった吸血種の根城へ旅立った。

 出発には、村の人々から期待と希望が伝わってきた。


「これ、ニンニクらしいけど………………」


 アイリスは、葉の部分を持って観察する。

 それは村の人が餞別に贈った物だ。


「お守りのような物らしいですよ」


 タケが見聞きした情報を追加する。

 村人たちからの受け売りだ。


「ニンニクがお守り………………吸血種を恐れるのなら理にかなってるね」


 そう呟くとアイリスは、ニンニクをタケに渡して、『盗人庫』へ収納させる。

 普通なら食料だが、相手が相手のため効果的な武器となる。

 お守りは、案外盾としてだが、間違っていないのかもしれない。


「ここら辺にも吸血種がいるのかもしれないんですかね?」


 タケが心配そうに聞く。


「夜ならね。今は、日が出てるから安心できるよ」


 アイリスは、タケの緊張を取り除くように言う。


「そう言えば、日光が弱点だったか?」


 タイムは、吸血種の情報を思い出し、口にする。


「それなら、安心ですね」


 タケが胸をなでおろす。

 ほっ、と一息吐く。


「あぁ、でも、警戒はしておかないと………………」


 アイリスが思い出して、訂正する。


「警戒? でも、昼間は、吸血種がいないのでは?」


 タケがアイリスの訂正に不思議そうに聞き返す。


「いや、確かに吸血種“は”、ね?」


 アイリスがそう言うと、魔物が飛び出して道をふさぐ。

 パキラが素早く反応して、「閃焔」で両断し、退治する。


「こんな感じで普通の魔物は、通常通りだから」


 何てことないようにアイリスが教える。


「それは、警戒が必要ですね」


 タケは、納得した。


「これは………………大体、Cランクくらいか?」


 その横でタイムが魔物の分析を軽く行う。

 目の前で二つに切り裂かれた魔物は、植物の魔物だ。

 大きいが火を使えば、容易に倒せるので、ランクは意外に低い。


「これは、魔石の回収くらいですかね?」


 タケが作業を見積もる。


「あぁ、ほぼ植物と同じみたいだ」


 タイムがナイフで魔石を確認し、摘出した。

 魔石をタケへ渡し、収納させた。


 ◆


 夜、タイム以外の三名は、眠っている。

 タイムは、焚火を管理しながら警戒している。


 昼は、数匹の魔物に遭遇したが、何も問題なく突破した。

 悪くともBランクで大抵Cランクの個体がほとんど。


 タイムたちからすれば、うっとうしい羽虫のようなもので特に危険はなかった。


 そんなタイムに忍び寄る存在がいる。

 気配を完全に消し、不意打ちを狙う。


 牙を剥き、襲い掛かる。


「………………ん?」


 タイムが振り返るとそこには、吸血種と化した人間――――――吸血人(バンパイヤ)がいた。

 血走った目で理性は感じられず、実際に存在しない。


「………………」


 タイムは、無言で剣を振るい胴を真っ二つにする。


「アアアアアアァァァァァァ!」


 バンパイヤは、切り離された上半身でもがく。

 下半身は、ピクリとも動かない。

 本来であれば、ただ切られただけでは再生するが、タイムの斬撃は不死族(アンデット)への特効を持つ聖属性なので再生が阻害される。


 タイムは、そんなバンパイヤにとどめを刺す。

 弱点の聖剣で心臓を貫く。

 死体は、灰となって風に吹かれて散っていった。


『こいつがバンパイヤか………………』


 タイムは、弱いと思った。

 肩透かしだったのだろう。

 記憶にある強敵に比べれば、そうなってしまう。


『一体だけだったからか? 複数で統率をとられれば、まだ討伐が難しくなるか?』


 タイムは、疑問に考えた。

 それから追加で数体のバンパイヤに襲撃されたが、作業のように対応し、時間になるとパキラに交代した。


 ◆


 翌日、起床、朝食。

 パキラも見張りを問題なく終えた。

 襲撃の回数は、タイムより多かったそうだ。


「それでパキラ。閃焔は、効いたの?」


 アイリスがパキラへ聞く。


「あぁ、再生を遅らせて、心臓を貫くには、充分だった」


 パキラは、魔剣「閃焔」を空へかざす。

 魔剣を自慢しているようだ。

 魔剣「閃焔」は、火属性なので聖剣には及ばぬものの、それなりにアンデットへの優位性を持つ。


「この調子なら、案外簡単に終わるかもしれませんね」


 タケが冗談半分に言う。

 実際、ここまで安全に旅ができているので、そう考えてもおかしくない。


「タケ。多分、これからそんなことが言えなくなってくるよ」


 アイリスが忠告する。


「今回の事案で最も異様で厄介なのは、数と連携らしい。タケ、もしもゾンビが1体いたら脅威になる?」


「一体くらいなら大丈夫でしょうね」


「じゃあ、十体だったら?」


「僕一人だと脅威になりますね。でも、人数が揃えば問題ないはずです」


 タケは、両方ともすぐに答えた。


「うん、そうだね。そしたら1000体は?」


「小さいスタンピードの規模で十分脅威です」


 タケがキッパリと断言する。


「それを踏まえて、今回の事態を説明すると、最低でも100体以上の夜行性で不死性を持つ人型の魔物が連携をとりながら明確な人間への殺意を持って襲う」


 その説明にタケの身の毛がよだつ。


「この恐ろしさが解った? これは、本来なら国家規模が対応するくらいの件だよ」


 それほど大規模でも対応する国家がなければ、野に放たれた猛獣のように強さを示す。

 ここら周辺には、ギルドさえ進出しているのか不明だ。

 対応する者は、誰一人として存在せず、対応できる者もいない。


「だから、俺たちが解決するんだ。サンクトゥスで勇者になったし、丁度いいだろ」


 タイムは、出発前に宣言した。

 村の人々に必ず、吸血種を倒すと。


「………………タイムならこの規模でも全然平気そうだよね。パキラだと不安が残るのに何でだろ?」


「強さでは、ないんでしょうね」


 二人は、パキラを見て言った。


「………………?」


 パキラは、序盤から話しに付いていけていないため、首を傾ける。


「あぁ、そう言えば、夜のバンパイヤだが………………ほとんど寝てる3人に襲いかかってたぞ」


 パキラは、首を傾けた拍子に現在の話題と関係ないが、そのことを思い出し報告した。


「じゃあ、相手は、理性が残っているタイプのバンパイヤかな………………」


「それは違うんじゃないか?」


 タイムがアイリスの考えに物申す。


「どうして?」


「俺の時は、普通に俺が襲われた。それに理性が残っているなら集団で襲ったりもできるんじゃないか? 統率もとっているみたいだし不思議じゃないだろ?」


「確かに………………でも、それだと不意打ちがおかしくなるんだよね」


 アイリスは、考察するが答えは、見つからない。

 彼方立てれば此方が立たぬというやつだ。


 その後も皆で考えたが、結論はでなかった。

 むしろ、謎は深まるばかりだった。


 ◆


 それから四人は昼間歩き、夜は寝ることを繰り返した。

 昼は、歩いて進み、魔物を蹴散らし、雑談をした。

 夜は、睡眠をとり、後退で見張って、バンパイヤを対処した。

 最も負担がかかるのは、タイムとパキラだが、本人たちには、一切の被害がでなかった。

 二人とも異常なほどの性能をしている。

 百人力や一騎当千どころではない。


「なぁ、皆。今度は、ここからどこへ旅立つ?」


 タイムが脈絡もなく質問する。


「………………何の話?」


 いきなりの質問に誰も全貌を掴めていない。


「この事件が解決したら次は、何をするかってこと」


 タイムが説明する。


「ここを離れて、別の目的地へ向かって再出発するか、それともしばらくは、ここら辺で活動するか」


「留まるべきではないと思います。少なくともギルドがある町を拠点にしなければ、僕たちの旅は簡単に終わります」


 タケは、冒険者としての利便性から言う。

 事務的な雑用の担当だからこそだろう。


「私もタケと同意見だね。ここら辺に留まる理由も無いし、強いて言えば、また山を登り下りするのが、面倒ってことかな?」


 アイリスがタケに賛同する。

 タイムやパキラは、気にする必要がないが、それ以外の者には、重大な問題だ。


「? そんなに面倒か? 一回できたし、問題ないだろ?」


 パキラは、全く分かっていない。

 その癖自信に満ちて考えるのでアイリスは、常日頃から困ることがある。

 そういう時は、アイリスが子供に教えるように指導するのだ。

 タイムとタケは、教えることに関しての才能が無いと声を大にして言えるほど指導に向いていないので、自動でアイリスがその役を引き受ける。


「パキラ、解った?」


 アイリスがパキラに確認する。


「ハイ、ワカリマシタ」


 パキラは、返事をした。


「それなら、よろしい!」


 王様のような雰囲気でパキラに告げた。

 アイリスは、この時間も楽しそうに過ごした。


 ◆


 一行は、辿り着く。


 長い道のり――――――四人はのんびりと進んだ。

 危険な試練――――――タイムとパキラが対応し、容易に突破。

 謎多き今回の事案――――――退屈しのぎに楽しく考察した。


 その他諸々を乗り越え、辿り着こうとしている。


 事前指導(チュートリアル)は、終了した。


 ならばここからは、本番の試練(メインチャレンジ)だ。


 目的地(スタート)は、目と鼻の先にそびえ立つ――――――吸血鬼の城。


 四人は、足取りを速めた。

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