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49話 村の危機

 村は、パキラの出身である獣人族の村と同じくらいの規模だった。

 村に到着すると、村の代表者である村長から空き家をあてがわれ、しばらくの滞在を許された。

 その代わり、力仕事がある場合は、手伝うことを条件とされた。

 四人は、感謝した。

 泊まる場所を与えてくれるのならそのぐらいは、全然問題なかったからだ。


「広さは十分ですね」


 空き家の広さは、宿の一室程度だ。

 年季も入っておらず、汚れは精々積もった埃くらいだ。


「まずは、掃除からかな?」


 アイリスは、人差し指で埃を見てから言う。


「他にやることもないですし、早速、始めましょう」


 タケが『盗人庫』から布や桶などの掃除に使えそうな物品を出す。

 何故か(ほうき)もある。

 旅の最中には、もちろん使われることはなかった。


「何で箒があるんだ?」


 タイムが気になって問う。


「サンクトゥスにいた頃、旅の準備に色々と入れておいたんですよ。他には、こんな物もあります」


 タケがそう言と木で作られたおおよそ円柱型の装飾品を取り出す。


「これは、何なんだ?」


「僕も知りません、遠方にある小さな島国の工芸品だと聞きました。用途は――――――そう言えば、聞いていません」


 皆で弄ってみるが、使い方は不明のまま掃除が開始された。


 ◆


「ひゃっほいー!」


 アイリスが備え付けのベッドへ飛び込む。

 掃除は終わっていて、埃も舞っていない。


「掃除したら時間がとけましたね」


 タケが窓の外を眺め、その薄暗さに一日の経過を感じる。


「さて、それじゃあ、少し話でもしようか」


 アイリスが起き上がり、座って言う。


「………………話すって、何を?」


 タイムが聞く。

 彼らには、雑談の議題が少ない。

 旅の最中、消費し尽くしたからだ。


「まぁ、まぁ、いいからそこに座って」


 タイムたち三人は、アイリスに促されるまま座る。


「話は、この村――――――というよりここら周辺の地域のことになるのかな」


 アイリスは、間を開けてから言う。


「結論から言えば、この村は、異常なほどに怯えている」


 アイリスが実に真剣な表情で言った。


「怯えてるって、何故そうなる?」


「まず、この村の警備体制だね。村に入るときに確認したけど、物騒なほどにバリケードがあったよ。相当、村を守りたいんだろうね」


 三人は、思い出す。

 確かに村の周辺は、バリケードや柵で覆われていた。


「でも、魔物から村を守るためでは?」


「そうだよ。おそらく魔物から村を守るためで間違いない」


 タケの説をあっさりと肯定する。


「では、その魔物は何?」


 アイリスが詰める。


「………………別に魔物なんて、どこにもいます。警戒するのは、当然で」


 タケが常識として言う。


「でもね。彼らは、連携をとればAランクの魔物を犠牲なしで討伐できる。目の前でされたでしょ?」


 彼らは、毒と矢でそれを可能にしていた。


「Aランクの魔物だって、そう高頻度に出現するものじゃない。それを討伐しても治安維持隊は喜びもしなかったし、村へ案内しているときも周辺を警戒していた」


 案内をしてくれた者たちは、常に弓を構えられるように武器を収めることもしなかった。


「多分だけど、その恐怖の原因は、Aランク以上――――――Sランクに相当する個体なんだろうね。弱かったらあそこまで警戒しないし」


 アイリスは、これまでの推測を踏まえて言う。


「ここら周辺は、危険だ」


 アイリスは、はっきりと言い切る。


「そうか、それじゃあ、当分の目標がきまったな」


 タイムが立ち上がって言う。


「ここを離れることですか?」


「いいや、そのSランクの魔物を討伐する」


 タイムは、当然と言わんばかりに言う。


「危険だよ? 危ないよ?」


 アイリスが不安を煽るように言う。


「それなら、余計に急がないとな」


 その言葉を聞き、タケは安心する。


「いつものタイムさんですね」


「そうそう、いつものタイムだ」


 パキラも同意した。


「はぁ、やっぱりかー」


 アイリスは、大きく息を吐く。


「言う前から薄々、解ってたよ。この結果になるのは。旅をして長くなったからね」


「それじゃあ、この後、まず何をするのかも解っているよな?」


 タイムがを問う。


「もちろん」


 アイリスは、立ち上がる。


「夕食を食べる」


 自身満々に言い切る。


「正解だ」


 タイムは、答え合わせをした。


「正解なんですか………………てっきり話を聞きに行くものだと」


 タケは、呆気にとられる。


「明日の朝、聞きに行く。でも、今は夕食が先だ」


 タケは、微笑みながら夕食の準備を始めた。


 ◆


「それで、村長さん。お聞きしますが、この村――――――延いては、ここら周辺で脅威となっている存在についてお聞かせ願います」


 アイリスが真剣な面持ちで村長に言う。

 タイムたちは、朝早くから話を聞きにやってきた。


「はい? い、一体何のことでしょうか?」


 村長は、冷や汗をかく。


「話してください」


 追及する。


「………………誰からお聞きに?」


「推測です」


「そうですか、それは素晴らしい頭脳をお持ちで………………」


 村長は諦めて、事情を話し始めた。


「確かに私たちは、ある魔物を恐れています。ですが………………」


 村長は、答えを渋るが最終的には、言ってしまう。


「ですが、魔物と呼ぶのは、少し違うのかもしれません」


「“違う”?」


 タケが不思議そうに聞き返す。


「正しくは、違うのかもしれないというだけなのですが、その魔物というのは、元人間なのですよ」


「元人間………………不死族(アンデット)でしょうか?」


「それが一番近いですが、ゾンビでは、ありません」


 村長が先の台詞を言う前にアイリスが口を挟む。


「もしかして、吸血種?」


「そうです。よくご存知で」


「あの、その吸血種と言うのは、何でしょう?」


 タケが尋ねる。

 アイリスが解説する。


 吸血種は、不死族の一種で極めて珍しい魔物だ。

 大抵の場合、吸血種は後天的になることがほとんどで生まれながらの個体となるとあまり存在しない。

 人間が吸血種に噛まれると吸血人(バンパイヤ)になる。

 生まれながらにしての吸血種は、吸血鬼(ヴァンパイヤ)となる。

 吸血種の発生方法は、吸血種がいることが前提となっているため、中々発生することはない。

 一体の強さは、最低でもBランク上位に届く。

 その代わり弱点は多く、日光、十字架、聖属性、ニンニク、流水などがある。


「なるほど、それがここら一帯に生息しているんですね」


 タケを含め、知識のなかった三人は吸血種について理解した。


「吸血種ならここまで警戒しているのも納得だね。あれは一種の感染症みたいなものだから」


 アイリスは、合点がいったように言う。


「あの怪物は、とても恐ろしい。すでに町が二つ、村が五つ襲われました」


 村長は、怯えたように言う。


「でも、そんなに多いならすぐに倒してお終いとはいかないだろうね。少しずつ倒していかないと………………」


 アイリスが計画を考えるが、村長が追加の情報を出す。


「実は、まだ厄介なことがありまして………………」


「吸血種がはびこっていることよりも厄介なことが?」


「その吸血種のことでもあるのですが、バンパイヤの根城があるのですよ」


「吸血種が根城?」


 アイリスが不思議そうになる。


「それに統率をとります」


「統率!?」


 情報がもたらされる度にアイリスの顔が青ざめていく。


「まさか、そこまでの事態になっていたとは………………最悪」


「それってどのぐらいの事なんだ?」


 タイムがアイリスに聞く。


「スタンピードと同じくらい。国家存続の危機レベル」


 アイリスが答える。


「ヤバイな」


「ヤバイでしょ?」


 二人でやり取りをする。


「あの………………冒険者の方々。黙っていて、すみません。去られたいのであれば、お好きになさってください」


「村長さん。俺たちは去るつもりはない。むしろ解決したいと思っている。だから、その根城の場所を教えてください」


 タイムが村長の前で宣言する。


「ほ、本当ですか!?」


 村長は、驚きの表情を浮かべる。


「もちろん。それに俺たちは、こう見えて勇者パーティなんですよ」


「勇者パーティ! それは心強い!」


 四人は、バンパイヤ退治に乗り出した。

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