47話 統率・整理
タイムは、いつものようにスキルについて考える。
つい最近――――――というより、獲得したての固有能力【統率長】
その機能は、三つある。
『連絡事項』
仲間といつでも情報交換ができる。
距離が離れていてもノータイムで共有することができ、イメージをそのまま脳内に伝えるなんてこともできる。
作戦を伝えるのには、もってこいの機能だ。
『視覚共有』
仲間と視覚を共有できる。
『連絡事項』と似ているが、こちらは視覚情報をそのまま仲間へ共有できる。
『連絡事項』と組み合わせ、作戦を立てたり、迅速な対応ができる。
最後に『統べる長』
この機能の効果は、自身の指揮下にあるものを統べるというもので統率の代名詞のような機能だ。
この「自身の指揮下にあるもの」とは、生物でなくとも対象となる。
例えば、武器――――――タイムであれば、聖剣を統べることができ、損傷具合、何が接触しているか、敵から付与されたデバフなどなどを把握できる。
そしてこの対象には、タイムの所持するスキルも含まれる。
全スキルは、タイムの指揮下にあるためだ。
スキルを統べた場合、武器と同様にそのスキルについて知ることができる。
さらに応用でスキルを整理させることができる。
スキル同士に指示を出す。
その指示は発動などではなく、整えというものだ。
スキルは、纏まっていく。
そして簡略化されたり、別れたりする。
まず【呪念再生】は別れ、EXスキル【再生】【呪念感知】【呪念変換】になった。
そこから【呪念感知】は【危機感知】の一部を参考に【殺意感知】として新しくつくられた。
【滝登り】は、固有能力【勇者】に融合され、機能『逆境打破』になった。
【跳躍】と【落下減速】が融合され、固有能力【天脚】になった。
耐性関係にも変化がある。
【火属性耐性】【風属性耐性】【水属性耐性】が融合され、さらに【地属性耐性】の一部が運用され、【四属性耐性】になった。
そして同じ耐性が変質、融合し、新たに【環境耐性】がつくられた。
環境――――――つまりは、熱の変動、水流の力、風の力、大地からの力から影響を受けない。
しかし、過度なものを無効化できず、例えば火山の火口に落ちれば、さすがに死ぬ。
だが、その性能は充分すぎるほどのものだった。
【天脚】の機能は、『空間機動』『重力脱却』。
『空間機動』は、宙を脚で蹴ることができる。
急な方向転換などもお手の物だ。
『重力脱却』は、惑星が物質を縛る引力へ抵抗できる機能。
耐性に言い換えれば、重力耐性や引力耐性などと言うべきだ。
タイムは最終的にEXスキル9個、内耐性が2個。
固有能力は、3個となった。
『今ならあの忍者を倒せるか?』
タイムは、新たに手に入れたスキルを振り返り、考える。
そして、すぐに無理だと結論に辿り着く。
慢心などではなく、本当に勝てないと直感で解ったからだ。
まだ勝てないと。
「よし! やっと、やっと終わりました!」
タケが嬉しそうに疲れたように言った。
気が付けば、四人の目の前に山積みになっていたバード系統の魔物の死骸が無くなっている。
皆で素材を回収し終えたのだ。
「今日は、もうここで休もう」
アイリスが提案する。
反対する者はいなかった。
タイムとパキラは、戦闘をしたもののそれによる疲れはなかった。
ただ、二人共地道な解体作業が嫌いなのだ。
二人は、ただ小さな願望を思う。
『『休みたい………………』』
彼らは、精神的に疲れていた。
◆
四名が休み、食事を取り、睡眠を取り、起床したバードを討伐した翌日。
下山を再開した。
下山の再開と中断が多いが、魔物が多いのだから仕方がない。
それに彼らの旅は、のんびりとマイペースなものだ。
よって、何も問題はない。
そして、例の如く魔物に遭遇した。
ただし、スーパーバードチーフのように強力なものではない。
ギリギリ討伐ランクがBランクに届くような個体だ。
普通ならそれでも苦戦するレベルの強さだが、タイムからすれば、楽勝も楽勝。
昨日に比べれば、ボーナスステージのような状況だった。
スキルを獲得したタイムからすれば、実験台にもならないのが、強いてもの不満点だろう。
「昨日のは、本当に例外だったんだろうね」
アイリスが言う。
確かにあそこまでの脅威は、そう簡単に出くわすものではない。
四人の運が悪かっただけだ。
「山の不死巨人もあれ以降現れませんし、本当に運なのでしょうね」
タケが手早く、素材を回収しながら言う。
「あたしは、強い奴と戦えないのは残念だが………………あの細かい作業がないのなら運があってもいいな!」
パキラが強く断言した。
「パキラ、本当に思ってる?」
アイリスが問う。
「あぁ、もちろん」
「本当に?」
アイリスが疑う。
「ほ、本当だ!」
パキラは、焦りながら事実を主張する。
「そう、それで本音は?」
アイリスが納得したように見せかけて、さりげなく聞く。
こんな手に引っ掛かる者などいないだろうが、パキラなら引っ掛かる。
「戦いが無くって、少し残念だ」
パキラは、真正面から罠にかかった。
しかも、罠に引っ掛かったことにも気が付いていない。
落とし穴に落ち、落ちたのにも関わらず、本心から平然としているような状態だ。
パキラの不満には、誰も文句を言わない。
タケとタイムは薄々察しているが、今パキラは、アイリスの玩具にされている。
アイリスも暇なのだろう。
それからしばらく、パキラを使ったアイリスの遊びが続いた。
二人は、その様子を微笑ましく見守った。
◆
四人は、その調子で下山した。
強い魔物の群や個体にも遭遇せず、幸いにも山の不死巨人も出現はしなかった。
時折、退屈しのぎにくだらない話をしながら歩いた。
日が暮れれば、野宿で夜をしのいだ。
交代制で見張りをして、魔物の襲撃にだって気を付けた。
平和な旅路が続いて、数日。
タイムたちは、下山を終え、麓に辿り着いた。
勇者パーティのサンブロ山脈踏破がなされた瞬間だった。




