45話 山頂にて
「タケ! アイリス! 大丈夫か?」
山頂へ辿り着いたタイムが先にいた二人へ向けて言う。
時は、不死巨人が消えてからそう経っていない。
「はい、何とか」
「大丈夫だよ」
二人は、タイムへ答える。
タケの手の怪我もすっかり癒え、痕も残っていない。
「タイムさんの方も大丈夫ですか?」
「あぁ、五体満足だ」
タイムは、無事なことを示すために手を広げ、回って見せる。
服のほつれや装備の小さな傷はあるが、生命に関わる身体の損傷は、二人揃って無い。
「山の不死巨人は、どうしたの? まさかと思うけど倒した?」
アイリスが疑うように問う。
「まさか、あれを倒せるわけないだろ」
「じゃあ、逃げ切ったの?」
「いいや、戦ってたら突然、消えたんだよ」
タイムは、目の前で起こった事実をありのまま話す。
「消えた?」
「消えた。霧みたいに」
タイムは、繰り返して言う。
タイムの証言にアイリスは、未だ疑いの目を向けている。
「何はともあれ、解決したのならいいでしょう」
タケが疲れた口調で言う。
「そうそう! あたしも腹が減ってるんだ! さっさと飯にしようぜ!」
パキラが不満そうに言う。
「そうだな。飯にしよう」
「そうだね………………ご飯にしようか」
二人は、そう言って、準備に取り掛かった。
◆
四人は、食事を取りながら、別れた後のことを話す。
「ドラゴンに遭遇したのか、そりゃあ大変だったな」
「死ぬかと思いましたよ」
タケが語る。
逃げている途中で土甲竜に遭遇し、戦闘したこと。
「倒したのは、アイリスの魔法か?」
タイムが聞くとアイリスは、首を横に振る。
「倒したのは、タケだよ」
「どうやって?」
「それがビックリの方法でね」
アイリスがその手段をタイムへ教える。
「そんな使い方があったのか」
タイムが発想に関心する。
「でも、痛いんですよ。触れないと使えませんから避けて通れない道です」
タケが少し不満そうに呟く。
「タイムさんは、何かありましたか?」
タケが話題を変える。
タイムは、記憶をたどる。
「そう言えば、スキルの機能が発動したな」
「【勇者】の『勇気の形』っていう、身体能力強化の機能?」
アイリスが尋ねる。
「いや、そっちの機能じゃなくって、『継承』の方だ」
タイムが訂正する。
「タケ、タイムの『継承』ってどういう機能だっけ?」
アイリスがコッソリとタケに聞く。
実際は、全然隠れられていない。
「さぁ? 僕は、知りませんよ?」
タケが答える。
パキラは、聞かれることはない。
タイムが『継承』について説明する。
「「そんな機能が………………」」
二人は、知らなかったという風に驚いている。
「だから、影魔法とか使えたんだ」
アイリスは、納得する。
「それで、何を継承したんですか?」
タケが問う。
「地魔法」
「地魔法?」
アイリスが聞き返す。
「山の不死巨人と戦ってる時に山麗竜が乱入しそうになってな」
「あたしが邪魔にならないように倒したんだ!」
パキラが補足する。
「それで『継承』が発動して、地魔法を受け継いだ」
タイムの説明に驚くのは、アイリスだ。
「地魔法って、それ凄く難易度が高い魔法だよ。私でも使えないし」
「そうなのか?」
「影魔法だって、人類では使えた人がいない特別な魔法だよ」
現在、人類によって、影魔法の術式構成は、判明していない。
アイリスの言う通り、未知の魔法だ。
「そうか………………ラッキーだな」
タイムが得をしたと喜ぶ。
「それで済ませることかな?」
アイリスがタイムの態度に言う。
「タイムさんですからね~」
タケは、慣れたように言う。
「そうかな? そうかも?」
アイリスが納得しかける。
そんな会話をして、食事を終える。
それから休息をとる。
皆、肉体的、また精神的に疲れたのだ。
山で逃げれば、体力が削られ、魔物に遭えば、緊張が走る。
「………………」
「………………」
「………………」
会話は無い。
一人が寝てしまっているが、残りの者も話さない。
気まずいわけではなく、話題が出てきていないのだ。
「………………この後どうする?」
タイムが話題を絞り出す。
「そう言えば、目的地が無かったんですね」
タケが思い出して、口にする。
彼らの目的地は、まず山頂と定められ、その後のことは考えられていない。
「取り敢えず、反対側に下山する?」
アイリスが提案する。
「そうだな。それがいい」
タイムがあっさりと提案を受諾する。
他の者も一名を除き異論はない。
その除かれた一名も反対することはないだろう。
すぐに達成されそうな目標が設定される。
「………………」
「………………」
「………………」
話題が尽きた。
「………………見ろ、タケ。あの雲、剣みたいな形だ」
「本当ですね」
中身が無い会話をして、過ごした。




