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40話 登山

 勇者となった一行。

 彼らは現在、登山をしている。

 シゲン大陸に存在する山脈、サンブロ山脈。

 神聖国サンクトゥスが隣接しており、その対極に位置する平野は、綺麗に孤立している。

 向かうために登山か船が必要とされるためだ。

 そのせいか、支配する国家は無く、小規模の町が確認されるのみだ。

 何故、そんな何もないような場所へ向かうことになったのか、それには事情がある。


 ◆


 サンクトゥスを出発してから少し経った頃。


「そう言えば、今は、何処へ向かっているんでしょうか?」


 タケがふと疑問に思い、口にする。


「そんなの決まってるだろう」


 タイムが当然とばかりに言う。


「じゃあ、どこですか?」


 タケが詳しく問いただす。


「………………?」


 タイムは、首を傾ける。

 自分でも目的地が解らない。


「なぁ、アイリス。今はどこへ向かっているんだ?」


 タイムは、アイリスに問う。


「? 私は、知らないよ。タイムが決めたんじゃないの?」


 アイリスが言う。

 次に全員がパキラへ目を向けたが、聞くことはない。

 全員がまずパキラは、絶対にないと確信しているからだ。


「じゃあ、今は、目的地もないのに歩いてたってことですか?」


 タケの言葉に全員が黙ってしまう。


「行き先、決めようか………………」


 アイリスの言葉に皆が頷いた。


 ここで重要なのが、決め方だ。


「一番の決め方は、アイリスの占いじゃないか?」


 タイムが言う。

 他二人は、あまりピンときていない。


「そう言えば、アイリスさんって占いができたんでしたね」


 タケが思い出す。

 パキラは、ずっと首を傾げている。


「でも、今回の場合は、役に立たないと思うよ」


「何で?」


「細かい条件があって、それが揃ってないんだよ」


 アイリスは、もどかしそうに言った。


「じゃあ、どうやって決める?」


「多数決とかでいいんじゃないですか? 物資は、十分ありますし、ある程度の距離は、問題ありませんから」


 タケが言う。

 食料などは、タケの『盗人庫』に収納されていて、一か月分にも及ぶ。


「それなら私は、こっち!」


 アイリスは、このまま山脈に沿って行くことを選択する。


「俺は………………そうだな、こっちがいい」


 タイムは、進みたい方向を指す。


「え!? そっちに行くの?」


 アイリスが驚く。

 タイムの指した先は、山脈の方だったからだ。


「いくら何でも無理じゃ………………」


「あたしもこっちだ!」


 アイリスの言葉を遮って、パキラが選択する。


「えっ!?」


 アイリスが驚く。


「じゃあ、僕も」


 タケも山脈を指す。


「えっ!?」


 アイリスは、驚き続けている。


「じゃあ、三対一で決まりだな」


「ええー!?」


 こうして行き先は、決定された。


 ◆


「何で皆して………………よりよって茨道を選ぶのかな?」


 アイリスが愚痴をこぼす。


「まぁ、いいじゃないか、茨も食べれば案外美味しいかもしれないし」


 タイムは、訳のわからないことを言っている。

 パキラも頷いている。


「でも、案外登っていけていますね」


 タケが場の収拾のために言う。


「登っていけるって、まだ、少ししか上がって来てないけど」


 彼らが登ったのは、おおよそ十分の一にすら満たない。


「魔物もいないですし、この道は、良かったかもしれませんよ」


「それもまだ、低いし、それよりあれがでるかもしれないし」


 アイリスは、暗い顔をする。


「あれ?」


 タイムが反応する。


「前話さなかった? 童話とかを話した時」


「何だっけ?」


 タイムは、全く思い出せない。

 というより、多く聞きすぎて、すぐに出てこないのだ。


「ほら、あれだよ! タイトルは、確か『山の不死巨人』だったはず」


「あ~!」


 タイムは、タイトルを聞いて、思い出す。


「あの童話ですか? でも、童話でしょう?」


 タケが言う。


「いや、この話に関しては、実話が混じってるんだよ。どんな話だったか憶えてる?」


 タイムとタケは、話す。


「たしか、山で巨人が登山者を襲って困っているから、主人公の冒険者が成敗するって話だろう?」


「じゃあ、どうして不死巨人って言われていると思う?」


 二人は、内容を追って確認する。

 どこにも不死という記述は、存在しない。

 最後には、巨人が倒されて終わって、復活もしない。


「何故でしょう?」


「それは、実際の怪物の情報を元にしているからだよ。昔、ある冒険者たちが遭遇したらしい」


 アイリスは、淡々と話す。


「山に直立で立っている奇妙な魔物。暴れも襲いもしなかったそうだよ。だから足を剣で切ったらしい」


 アイリスが自らのすねの辺りを指して、ジェスチャーする。


「そしたら急に暴れだして、その場にいた半数以上を殺害、残りも重症ですぐに死亡したそうだよ」


「それだけか?」


 タイムが追及する。


「実は、こういう事件は、幾つもあってね。その中にはSランクの冒険者が遭遇する事例もあったんだ。結果は、足止めが辛うじてできただけで同行していた者たちによると不死身のように再生していたそうだよ」


「Sランクって、そんなに強いんですか?」


 タケは問う。

 アイリスが答える。

 冒険者ギルドが規定する冒険者ランクは、四段階になっていて、下からC、B、A、Sだ。

 CからAは、一般的に目指すことのできるランクであり、凡人の努力の範疇に留まっている。

 ただ、Sランクは違う。

 Sランクは、規定上でさえ、一国の軍レベルの強さとされている。

 つまりは、怪物の領域だ。


「で、そのSランク冒険者は、後に遺体で発見されたそうだよ。骨が粉砕された状態でね」


「そんなのがいるんですか?」


 タケが震えた声で言う。


「でも、アイリスは、何でそんなことを知っているんだ?」


「これぐらいなら、調べれば出てくる場所にいてね」


 アイリスは、懐かしそうに言った。

それから三人に向き直り、忠告する。


「兎に角、本当に気を付けたほうがいい。襲ってくる基準もよく解ってなくって、あっちから走って来たっていう事件もあるくらいだから」


 全員が認知して、頷いた。


 ◆


「流石に疲れたな」


 タイムが言う。

 山を登るのは、普通に歩くことより体力を使うからだろう。


「そうか? あたしは、全然大丈夫だけど………………」


 パキラは、平気そうに言う。

 実際、パキラは全く疲れていない。底なしの体力だ。

 今から一度下山して、もう一度登るなんてことをしても今と同じことを言うだろう。


「それじゃあ、ここで野宿にしようか」


 アイリスは、息を切らしながら言う。

 タケは、酸欠で喋ろうとしない。


 タケは、道具を『盗人庫』から出して、休憩になった。

 簡単な設営は、タケとパキラが行う。

 アイリスは、普段からだが力仕事ができない。と言うより、二人がやってくれた方が効率がいいのだ。

 なので、アイリスは、小さい道具などを用意する。


 それから簡単な夕食を用意し、食した。

 タケも復活して、片付け、就寝である。


 ◆


 翌日、登山を再開する。

 前日のことを踏まえ、ペースを落とす。

 落とさなければ、今度こそタケが死んでしまう。

 酸素も薄くなっているので、アイリスも危険だろう。


「それにしても遠いな」


 タイムが山頂を見て言う。

 登る前に比べて、近づいているが、まだ遠い。


「そりゃあね。この大陸で一番高い山だからね」


 アイリスが言う。


 登っていると魔物に遭遇した。

 三体の鳥の魔物だ。

 怪鳥とは違い、しっかり翼で飛んでいる。


「降りてこい! 卑怯だぞ!」


 パキラが叫ぶ、魔物が言う事を聞くはずもない。

 パキラは、悔しそうに剣を振る。

 その横でアイリスは、火球を放って、撃ち落とそうとしている。


 タイムは、剣を抜き、構える。

 タケが首を傾げる。何故、剣を抜いたのかと。

 タイムは、イメージする。あの鳥の魔物を切り裂くイメージだ。

 そして、気持ちを込めて剣を振るう。


 次の瞬間、飛んでいた一体から血が噴き出した。

 斬られたのだ。


 皆、タイムの方を見る。


「チョット待ってください! 今のは何ですか!?」


 タケがタイムに問う。


「聖剣の効果………………か?」


 タイムは、何となくで答える。

 聖剣の凄さを皆、実感した。

 聖剣は、おそらく斬撃が飛ぶ。


 残りもタイムが切り落とした。


「聖剣って、便利ですね」


 タケが言う。

 確かに便利なものだ。


「でも、影魔法で強化とかは、できないんだよ」


 タイムがぼやく。

 聖剣は、神聖魔法と同じで魔力へ特効を持つ。

 そのため魔法による強化はできない。


「………………まだ威力を上げたいんですか?」


 タケは、呆れる。

 斬撃は、十分な威力を発揮しているというのに更なる強化を求めている。


「備えは、大事だっていうだろ?」


 タイムは、当然のように言う。


「そうそう! 強いのに越したことはない!」


 パキラも当然のように言った。


 四人は、登る。

 登り続ける。

 すでに標高は、低めの雲に触れられるほどだ。

 雲と少しの霧が視界を遮っている。


「………………さっきから言おうか迷ってたんだけど」


 アイリスが口を開く。

 三人は、耳を傾ける。


「今って、雰囲気的に何か出るには、丁度良い雰囲気だよね」


 アイリスは、縁起でもないことを言った。


「………………アイリスって実は、少しだけ危機的状況が好きなのか?」


「まさか~、もしも起きちゃったら仕方ないよねって楽しむけど、起きて欲しいなんて考えてないよ」


 アイリスは、弁明する。

 皆、疑いの目を向けている。


「本当だって!」


 アイリスは、少し怒る。


「それに私より、パキラでしょ!」


 矛先をパキラへ向けさせるように誘導を開始する。


「あたしか?」


 パキラは、キョトンと尋ねる。


「パキラさん、どうなんですか?」


 タケが問う。


「あたしは、常に危険関係なく、強い奴とは、遭遇したいって考えてるけど?」


「ほらぁ! 私よりパキラの方が酷いでしょ!」


 アイリスは、訴える。


「でも、パキラだし」


「パキラさんですから通常運転でしょう」


 タイムとタケは、同意見だ。


「何でなのー!」


 アイリスは、地団駄を踏んだ。


 その直後、地が揺れた。

 皆が一斉にアイリスの方を見る。


「………………いやいや、私じゃないよ?」


 アイリスは言う。


「じゃあ、何なんですか今の揺れは?」


 全員が周囲を警戒し始めた。

 地震にしては、短いし、巨体の魔物なら相当の大きさだ。


「………………あ」


 タケが一言声を漏らして、青ざめた。


 全員が正体を確認した。

 そこには、細長く霧の中を立っている謎の生物らしき肉の塊がいた。

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