4話 二人目
二人は冒険者ギルドの建物から出て、怪鳥を狩るべく町の外へ出る為に道を歩いていた。
「…………以上が怪鳥を捕まえる為の作戦だけど、質問や提案はある?」
アイリスが話し終えて聞く。
「それで大丈夫なのか? 罠とかを仕掛けた方がいいんじゃ…………」
タイムが異議を唱えるとアイリスはすぐに反論する。
「流石にそこまでお金が無くって…………」
「それなら仕方がないか…………」
タイムは納得して、作戦を受け入れた。
そんなやり取りをしている時、タイムは前から歩いて来る人にぶつかった。
タイムはすぐに、すみません、と言うが、相手はそのまま歩いて行ってしまった。
「タイム、気を付けなよ。今の人がスリとかだったら大変だったよ?」
アイリスが言うとタイムは、気を付ける、と言って歩き出そうとした。
だが、タイムは一歩足を動かすとすぐに足を止める。
「どうしたの?」
アイリスがタイムに聞く。
「ない…………」
「え?」
「カードがない。スられた」
タイムはアイリスにそう答え、先ほどぶつかってきた人物を追いかけた。
タイムが走り出すと、ぶつかってきた人物は、タイムに気が付き、同じく走り出す。
この反応により、疑惑が確信に変わった。
タイムは、『勇気の力』を使用し、かなり本気でスリを追いかけ始めた。
あのカードが無ければ、ギルドでの依頼を受けることができないのだ。
タイムは必死になり、全速力で追跡する。
スリとの距離はどんどんと縮まっていき、スリはこのままでは逃げきれないと判断し、建物の路地裏へ逃げる。
タイムはスリを追い、路地裏へ入っていった。
◇
スリは何度も道を曲がり、タイムから逃れようとした。
だが、タイムを引き離すことは叶わず、それどころか距離は縮まる一方であった。
それでもスリは諦めず、この追い駆けっこの決着がつくことを望みながら逃亡し続けた。
対してタイムは、今怒っていた。
怒りの矛先は、もちろんスリだ。
タイムはスリを捕まえ、その後の身柄をどうするのか、という想像を膨らませていた。
二名の追い駆けっこは、唐突に終わりを告げた。
否、告げられたと言った方が正しいのかもしれない。
スリが部外者の大男に捕まったのだ。
「おい、お前、その手に持ってる物は何だ?」
大男はそう言うと、スリからタイムの冒険者カードを強引に奪う。
「冒険者カードか、これは金になりそうだ。貰っていくぞ」
そう言って、スリをそこら辺に捨てるように放る。
そしてそのまま立ち去ろうとする。
「おい、お前待て」
タイムが大男を呼び止めた。
「あぁ? 何だよ?」
大男が振り返り、タイムを睨みつける。
タイムは動じずに話し続ける。
「その冒険者カードは、俺のなんだ。返してくれ」
タイムがそう言うと、大男は言葉を返す。
「あぁ、これはお前のか、そこのガキにスラれたのね。はい、はい、返せばいいんだろ」
そう言って、タイムに接近し、カードを渡そうとしてくる。
「返すかよ。バーカ!」
そう言うと、タイムの腹部に向けて拳を振るった。
だが、タイムは強化された動体視力でその拳を避け、それは空を切り、何にもぶつからず停止する。
「え?」
大男がそう一文字、発するとタイムに反撃を食らった。
「がはッ!」
大男は、殴り飛ばされ、地面に倒れる。
タイムのスキルにより強化された拳だ。
骨が折れたり内臓が傷ついたりは流石にしていないが、威力はすさまじく相当痛いはずである。
タイムは地面に倒れている大男からカードを奪い返す。
「クソ!」
大男は、立ち上がり、そう捨て台詞を吐いて、何処かへ逃げるように走って行った。
それを見届け、タイムはスリに向き直る。
スリをしたのは、タイムより少し若そうな見た目の少年だった。
少年は、まだ大男に放られたときの態勢のまま地面に座り込んでいる。
タイムは迷うこと無く、本来の目的であるスリへの報復を開始した。
◇
「うん、それで彼を馬乗りで殴っていたと?」
「あぁ、そうだ」
タイムはアイリスの質問に答えた。
スリへの報復、当初は全力で殴り飛ばそうと考えていたが、大男の状態を見るに本気で殴ったら命に関わりそうだったので、タイムは仕方が無くスキルを切って、馬乗りで殴る方に変更したのだ。
大男を殴り飛ばしたことが幸いか、タイムの怒りも少し収まっていたので、ここまで易しくなったのだった。
「まぁ、それなら自業自得で納得できるからいいか…………」
アイリスも若干納得した。
「それじゃあ、次は彼だね」
アイリスとタイムは、少年の方を向く。
少年はそこで正座をさせられていた。
「何でスリなんてしたんだ?」
タイムが少年に聞いた。
少年は数秒黙った後、口を開く。
「お金が無くって…………」
少年は金欠であることを話した。
頼れる親類がいないこと、今日の朝は何も食べていないことなどなども諸々話した。
「なるほど、何かドンマイ」
アイリスが言う。
タイムは何か考えているかのように何も言わない。
「ですが、僕はカードを盗んでしまいました。何の弁明もありません」
そう言った時だった。
先ほどまで黙っていたタイムが口を開いた。
「お前、名前は?」
「タケです」
少年は名乗る。
「タケ、罪滅ぼしをする気はあるか?」
「ありますよ。許されるのならどんなことでもしましょう」
タケは最後に小さく、馬乗りで殴られる以外であれば、と付け足した。
タイムはその答えを聞いて、一つ提案をする。
「タケ、うちのパーティに入らないか?」
タイムはどうともないかのように言い放った。
「私は人手が増えるのなら構わないけど…………」
アイリスが言う。
「いいんですか?」
タケは信じられないという表情に変わる。
「いいが、どうする? 後はタケの返事次第だぞ」
タケは生き生きとして言う。
「ぜひ、お願いします!」
こうして、二人目の仲間が加入した。




