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37話 聖剣

 そこは、晴天の青空の下より明るく、神々しい光で照らされていた。


「ふむ、ここが神聖の間であるか………………」


 忍者が入室する。


「貴様! 待て! ここがどれだけ高貴な場所か解っているのか!?」


 ヴェロニカが後を追う。

 最後にタイムが扉を潜った。


 神聖の間内部、神殿のような造りで中央に儀式用の台座がある。

 素材は、石に見えるが、表面が光り輝く障壁で覆われている。

 神々しい光の正体もそれだ。


「うむ、眩しいであるな………………」


 忍者が目を細める。

 その隙を逃さず、ヴェロニカが斬りかかる。


「賊! 滅びよ!」


 忍者は、その剣を刀で受け止める。


「せめて、譲歩は、無いのであるか? 命だけは見逃すとか………………」


 忍者は、提案する。


「無い! 貴様には、今三つの大罪がある! 反乱罪と不法侵入、そして殺人未遂だ!」


 ヴェロニカは、罪状を説明する。


「そのどれもが、国家として、宗教として、人間として重罪! 求刑は死罪だ! よって処刑は免れん!」


 ヴェロニカは、断頭台の刃のように剣を振るう。

 それを忍者は、回避する。


 タイムは、参加しようと剣を構える。


『ん?』


 だが、何らかの違和感を感じる。

 心の内で戸惑っていると、忍者がタイムへ向けて手裏剣を投げる。

 手裏剣は、回転しながら空気を切り裂き、タイムへ目がけて飛んでいく。

 タイムは、それを剣で防ぐ。


 タイムは、その時気が付いた。

 違和感の正体。

 それは、自身の持つ剣が原因だ。


 神聖の間は、常に強力な神聖結界が張られていて、内部では魔力が分解され、呪いなども浄化される。

 そして、タイムの持つ剣は、呪剣である。


 呪剣は、手裏剣の衝突により、押さえこまれていた本来の呪いが発揮される。

 それを封じこめていた呪いが浄化の盾となってしまったのだ。

 すぐに二つとも浄化されるが、それにはそれなりの時間がかかってしまう。


「その剣、呪物ではないか!」


 忍者がヴェロニカそっちのけで注目し、距離をとるようにする。

 瘴気だが、空気中に霧散したそばから浄化される。

 ただし、もしも切りつけたりなどとすれば、瘴気が一時的に体内に残留し、悪影響を引き起こすだろう。


「ヴェロニカさん! すみませんが、少し持ちこたえてください!」


「了解した!」


 タイムは、呪剣に向き合う。

 試しに魔力を流してみる。

 全く効果はない。

 そもそも、この剣にかかっている呪いは、普通のシャーマンが対処できる領域を優に超えている。

 抑え込めていたのは、セピアが優秀だったからだ。

 呪いについて知識のないタイムでは、到底無理なことだ。


 その間にもヴェロニカは、忍者の相手をしている。

 善戦しているとは、言えない。


 タイムは、焦る。

 その感情が剣へ流れる。

 呪いが揺らぐ。

 剣を握るタイムだから感じとれた。

 タイムは、剣へ感情をぶつける。

 呪いが揺らいで、黒い靄として空中に出てくる。

 神聖結界により、今にも霧散しそうなほど不安定な形をしている。

 タイムがそれを手で掴もうとする。

 実態があるわけでは無いので触れることはできない。

 だが、呪いは反応を示し、揺らめく。

 そしてタイムを覆った。

 タイムの視界が黒一色に染まった。


 ◆


 タイムは、暗い空間にいる。

 靄に包まれ、気が付けば居た。

 そして、目の前には、一人の人物が立っている。


『アザミ?』


 それは、あの存在しない村で出会ったアザミだった。


『はい、アザミです』


 アザミは、タイムの心の声に返事をする。


『何で、心の声が聞こえるのかって? それは、ここが精神の世界――――――簡単に言えば心が直接存在する場所だからです』


 アザミは説明し、タイムはある程度把握した。


『それじゃあ、質問させてもらうが、まずあの村は何だった?』


 タイムは、疑問を投げかける。


『あれは………………簡単に言えば、幻覚ですね。呪いの効果です』


 答えは、タイムの予想と変わらないものだった。


『じゃあ、次にお前は何だ?』


 タイムは、現在最大の疑問を投げる。

 岩も突き抜けそうなストレートだ。


『それを話すには、あの呪剣について話さないといけません』


『話してくれ』


 タイムは急かす。


『解りました。それでは、話しましょう。あの剣について、呪いについて、私について』


 アザミは語り始める。


 今から十年前、その頃、あの村は、ごく普通な村でアザミは、その村で生まれ育った。

 平凡な村だったが、周囲には、魔物の出る危険があった。

 魔物の被害が多くなると村人の間でも対策をどうするか、話し合うようになった。

 そんな中、村に一人の男が訪れた。

 見慣れない純白の布を羽織っていたそうだ。

 その男は、村に数日滞在した。

 そして、その間にアザミが魔物について話したそうだ。

 その男の職業が魔物に関連していると聞いたからだそうだ。

 何か有効な手立てがあると踏んで話てしまった。

 男は、その問題を聞くとすぐに解決方法を教えたそうだ。

 その方法は、討伐だ。

 だが、村に戦い慣れている者は、少ない。

 そこで男は、アザミにある物を与えた。

 それは、剣だった。

 特殊な効果の付いた魔剣だ。

 その男は言った。


「殺し尽くせ、それが方法だ」


 男が村を去った後、アザミは早速、その魔剣を使って魔物へ挑んだ。

 結果は、圧勝。

 アザミは、村で英雄のようにもてはやされたそうだ。

 だが、そんなことは一月も続かなかった。

 魔剣が暴走を初め、制御を失い、しまいには精神まで乗っ取られた。

 それが本来の剣の力だと知ったのは、全てが終わった頃だった。

 村は、壊滅していた。

 見知ったご近所さんは、皆、血だらけで死んでいた。

 そして、アザミ自身も返り血を浴びて、真っ赤な剣を強く握っていたそうだ。

 意識が戻ってから数分、アザミは理解が追いつかず、何もできなかったそうだ。

 しばらくして理解すると感情をあふれさせる前に剣を自分に突き刺し、自害したそうだ。


 それでもまだ終わりではなかった。

 アザミの魂、そして村人の魂は、剣に縛られた。

 それは時間を経るごとに変質していき、最終的に呪いと成って一つに集まった。


『そして、それがこの私です』


 つまり、アザミの魂に他の魂が混ざった呪いだ。


『なるほど………………それじゃあ、供養でもして欲しいのか?』


 タイムが尋ねる。


『いえ』


 アザミは首を横に振る。


『じゃあ、どうしろと?』


 タイムが問い詰める。


『タイム、私は、悪人なんです』


 アザミが言う。


『私のせいで皆、死んだ』


『………………』


『でも、まだ償っていないんです』


 アザミがタイムの目を確認して、続ける。


『タイム。多分(呪い)は、ここで消えます』


 空間が崩れる感覚に襲われる。

 精神世界が消えているのだ。


『なので、私の罪滅ぼしを任せます。他人任せですが、これなら罪滅ぼしになるでしょう』


 アザミの最後の言葉が届いた。

 それと同時に世界が崩れ、闇が晴れていった。


 ◆


 タイムを覆う黒い靄が霧散していく。

 呪いが解ける。

 剣の禍々しい雰囲気が消える。

 魂を縛っていた呪いが解け、魂が解き放たれる。


 だが、ただ解き放たれるだけでは、終わらない。

 長期間一つに集まっていた魂が単純に開放されるとは、限らない。

 融合した魂は、邪気が浄化され、器として空になる。

 器が空になるとその空白を埋めるため、神聖な光が注がれる。

 年月、精神、時期、所持者、細かい条件が幾つも重なり、ごく低確率で起こる現象。

 

 タイムは、その奇跡を目の当たりにしながら気が付かなかった。

 それよりもヴェロニカと忍者の戦闘へ加勢することを最優先にしたのだ。


 タイムは、【影移動】で接近。その剣で忍者に切りかかる。


「おっと、危ないのである」


 忍者は、その剣を避けるが、すぐ怪訝な表情に変わる。


「その剣………………武器を変えたのであるか?」


 忍者が問う。


「?」


 タイムは、頭上に疑問符を浮かべ、自身の握る剣へ目を向ける。

 そして、遅れてその奇跡を知るのだ。


 剣が神聖結界と反応し、共鳴し、輝く。

 そこに厄災を振りまく呪剣は、無い。

 新たに誕生したのは、聖なる剣。


 聖剣「プロファヌス」


 所持者は、タイムだ。

 しかし、奇跡の詳細を知らないタイムにとっては、謎だらけののことだ。


『まぁ、いいか』


 タイムは、考える事を諦める。

 パキラと同じになってしまった。


 タイムは、接近し聖剣を振りかぶる。

 忍者は、刀で受けようとする。

 聖剣が振り下ろされる。


 次の瞬間、忍者の背後にある神聖結界が切り裂かれる。

 刀は綺麗な断面で床に落ち、楽器のような音を出して一度跳ねる。

 忍者の胴体が肩から切られる。

 その表情は、信じられないものを見る目だった。

 次の瞬間、その忍者は、丸太に変わった。


「油断していたのである」


 忍者は、離れた場所に立っていた。


「もう、ノルマは達成したし、帰るのである」


 そう言って、姿を消し、神聖の間を去っていった。

 それと同時にヴェロニカは、膝を突く。戦闘の疲労だろう。


「ま、待て………………」


 忍者を逃すまいと叫ぶが大した声量になっていない。


 タイムは、聖剣を収める。

 タイムは追うこともできた。

 だが、最後の台詞でこれ以上の被害は出しそうにないと判断したのだ。

 忍者は、ヴェロニカへの奇襲が失敗した後、ほとんど殺しにかかって来なかった。

 それは、勘のような理由だとして、本命はタイムに戦う力が残っていなかったからだ。

 呪剣にそこそこ持っていかれ、さらに聖剣の一撃にも大量に消費し、魔力が残っていないのだ。

 だが、不思議とタイムに不調はない。

 度を越した神聖結界の効果だった。


 戦闘の終わりは、引き分けか敗北に終わった。

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