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32話 暗殺団

 タケは逃げる。

 全速力で逃げる。

 おそらく全力で逃げるのは、彼にとってタイムから逃げた時以来の事だ。

 だが、相手はタイムほど速くはないし、武器も持っていない。

 それでも相手は、暗殺業。追いつかれたくはない。


「待て、ガキ!」


 後ろからそんな言葉が聞こえてくる。

 タケが足を止める義理もないので、より一層加速する。


『引き離さないと!』


 このまま、教会へ戻ったりすれば、それこそ一大事になってしまう。

 タケが後ろを見て、距離を確認し、また前を見る。


 タケは、方向を変えた。

 右斜め後ろへ跳躍するように。

 その目的に合わない行動には、もちろん理由がある。

 タケの前方に例の三角錐――――――黒いローブたちの言うクラッカーボムという爆弾。

 それがあったからだ。


 クラッカーボムは、爆発して爆風がタケを覆った。

 タケが周囲を警戒する。

 後ろの男たちは、三人そろって立ち止まり、建物の屋根を見上げている。


『上!』


 タケが上に仲間がいると考えて、目をやる。

 何人かを一番に確認するためだ。

 タケは確認した。

 そこには、数え切れないほどの黒ローブがいた。

 数えられるだけでも十人以上。


「随分、大所帯ですね」


 タケが言う。


「あぁ、そうだろう」


 タケの目の前に一人が下り立つ。


「少年、二回もクラッカーボムを回避したようだね?」


「えぇ、これでしょう?」


 タケは、盗んだクラッカーボムを見せる。


「………………お前達、盗られたのか?」


 タケを追っていた三人に言う。


「「「はい」」」


「お前達は、減給だ」


「「「………………はい」」」


 タケに武器を盗られた三人は、気を落とした返事をし、集団へ混ざる。


「さて、少年。残念なお知らせがある」


 そう言って、タケの方を向く。

 タケは、身構える。


「それは君を殺さなければならないことだ。まぁ、もう薄々勘づいていると思うけど、一応言うよ」


 そう言って、黒いナイフを取り出す。

 タケの頭にまず、逃亡の二文字が浮かぶ。

 だが、すでに周囲は包囲されている。

 タケは、諦めてナイフを右手で握る。


 一歩一歩、慎重に接近する。

 タケは、切りかかることなんて考えていない。

 だが、相手は違う。

 タケに切りかかるつもりしかないのだから。

 タケへ黒色のナイフが振るわれる。

 タケは、ナイフで受け止めるようとする。


 衝突音が鳴らない。

 ナイフがナイフを素通りする。

 まるで透過するように。

 タケは、とっさに左手を出す。


『勝ったな』


 周囲で見守る者たちが自身らの統率者の勝利を確信した。

 もし、可能ならば、皆が全財産を賭けていただろう。

 だが、勝負は予想外の大どんでん返しがあるものだ。


『!?』


 その場の全員が目を疑った。

 次の瞬間には、血が舞っていると考えていた。

 それだというのに何も舞っていない。

 ナイフを振った彼らのリーダーもその予想外に目を丸くしている。


 リーダーは、タケから距離を取る。

 そして気が付く。


「ナイフが無い?」


 彼の手にあったはずの黒いナイフが消えている。


「探し物は、こちらでしょうか?」


 リーダーがタケを見る。

 タケの手には、消えたはずのナイフがあった。


「なるほど、そうやってあいつらからも盗ったのか………………」


 リーダーは納得する。


『握ってる物を盗るのは、そう簡単なことじゃない。つまりこいつは、持っている人間だ』


 固有能力(ユニークスキル)。この世界では、まれに所持する者が存在する。

 その力は、魔法のようで魔法でない奇怪な物だと知られている。

 彼ら暗殺団も職業柄、固有能力(ユニークスキル)を持つ者が関わることもある。

 だが、その場合、大抵は奇襲を仕掛け、正面から挑むにしても能力差を埋めるために魔道具や人数を揃える。


『だけど、相手の能力は、物や道具を盗る。つまり………………』


 相性最悪。


「少年。名前は?」


「タケです」


「そうかタケ。どうやら俺たちは、君を見誤っていたようだ」


 リーダーは、考えを改める。


「自己紹介をしよう。我々の名前は、暗殺団。名前の通り、暗殺業を営んでいる。私は、その団長であるアゲラタムだ」


 アゲラタムはそう言うと、一言呟く。


「………………やれ」


 タケが反応した時には、屋根にいたはずの者たちが下りて来て、内数人はすでに襲い掛かっている。


 彼らのタケに対する優位性は、二つだ。

 一つ目に人数。

 そして二つ目は、技術だ。


 タケは、クラッカーボムを投げる。

 それにより相手の動きは、少しだけ制限され、タケに猶予が生まれる。


『『『1、2、3』』』


 暗殺団は、秒を刻む。

 仕事道具なのだから、全員が把握している。

 クラッカーボムは、五秒で爆発する。

 全員がそう認識している。


 だが、皆が4秒目を数えようとした瞬間、クラッカーボムは爆発した。

 タイミングがずれたことで十人程度が負傷した。

 団員たちは、混乱する。


 それはタケの作戦だった。

 相手は、道具の仕様を事細かく把握していると踏んだからだ。

 だから、『盗人庫』に二秒がすでに経過した状態で収納して投げた。

 その作戦は、案の定成功した。


 そして、ここから畳かけるべく、タケは集団へ向かって走った。

 この行動には、アゲラタムも眉をひそめる。


『今度は何を?』


 混乱しているとは言え、素人が突撃するには、危険な集団だ。

 タケは、集団へ入り込む、そして………………


「………………あれ?」


 暗殺団は、異変に気が付いた。


「おい! あのガキ、何処に行った!」


 タケが消えた。

 集団へ入った瞬間、全員の視界から消えた。


「おい! お前、ローブはどうしたんだよ!」


 ローブを羽織っていない者へ向けて問う。

 

「盗られたぁぁぁぁ!」


 その一言で、混乱が拡大。

 さらに疑心暗鬼による連携の崩壊が起こった。


 そんな中、一人、また一人と倒れていく。

 コミニケーションすらままならない彼らには、対応することができない。

 そして、最後の一人も答えを知った瞬間、地に倒れた。


 タケがローブを脱ぐ。


「被ったままじゃなくていいのかい?」


「もう意味がないでしょう?」


 タケは、残ったアゲラタムに言った。

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