29話 案内
タイムたちは向かう。
教会へ向かって歩く。
前日に招待状を受け取った。
神聖の間への招待状。
タイムの剣にかかった呪いを完全に解呪するために。
そしてあわよくば、タイムの記憶喪失を解決するために。
後者の希望は薄いが、期待はできる。
その日の教会は、前に訪れた時より、人が少なかった。
気にせず歩き進められる。
そして数歩進んだところで、周囲を見回す。
探しているのは、手紙に書かれていた案内役の人物だ。
手紙では、女性で聖騎士であるということしか書かれていない。
限られた情報の中、四人は探す。
「そこの冒険者の方々」
四人は、話し掛けられた。
声の飛んできた方向を見ると、甲冑を身に付け、腰に剣を携える女性が立っていた。
「冒険者のタイム一行で間違いないか?」
女性はタイムたちに尋ねる。
首を縦に振って肯定する。
「そうですか、それではこちらへ」
女性は端にある細い廊下の入り口まで誘導する。
四人は、そこまで移動した。
「それでは、確認のため、招待状を提示していただけますか?」
タイムは、懐から招待状を取り出して、広げて見せた。
「はい、確かに確認できました」
女性が招待状の文字を目で追った後に四人に顔を向け直して言った。
「あのすみません。あなたが案内役の方ですか?」
アイリスが聞く。
「はい、名乗り遅れました。私は聖騎士のヴェロニカと申します。今回の案内役は私が行います」
ヴェロニカは、自己紹介をすると、素早く切り替えるように廊下の奥へ向き歩き出す。
「ご案内します」
その言葉が合図になったように四人は後を付いて行く。
「あのヴェロニカさん」
「何でしょう?」
「神聖の間っていうのは、どういう場所なんですか?」
タケは、その質問を投げかけた。
四人には、呪いや病気などに効き目があるとしか説明されていない。
「神聖の間は、聖神が権能によってもたらした恩恵の一つです。その空間は、常に神聖結界が維持され続けています。それもとても強力なもので、内部では魔法が瞬時に消滅します」
「そんな場所だったんですか………………」
想像を越える貴重な場所だと、四人は再認識する。
「入るのはとても難しく、重大な事情がなければ入れません。かくいう私も案内は初めてです」
そう言っているが、迷うことなく進んでいる。
「質問いいですか?」
タケに続き、タイムも質問をする。
「何でしょう? 答えられる限りお答えします」
「聖騎士というのはどういうものですか?」
タイムが知らない単語について聞く。
「聖騎士と言うのは、主に魔物から市街地を防衛し、神聖魔法を扱う騎士のことです」
ヴェロニカが説明する。
「それじゃあ、お姉さんは聖騎士になってどのくらい経つんですか?」
パキラが興味本位で聞く。
「二年ほど経ちました」
ヴェロニカは、その質問に答える。
「逆にお聞きしますが、皆様は冒険者になってからどのくらいで?」
ヴェロニカは振り返り、質問した。
「一か月くらい?」
「じゃないでしょうか?」
タイムとタケは顔を見合わせて言う。
「私は一か月と三週間くらい?」
アイリスも答える。
パキラは、首をひねって思い出しているが、とうとう諦めてしまった。
「皆さんは、冒険者になって日が浅いのですね」
それぞれの答えを聞いて、ヴェロニカは笑みをこぼす。
「実は私もかつては冒険者を志していました」
ヴェロニカは、前を向き直して続ける。
「ですが、今は聖騎士です。人生、解らないものでしょう?」
問うように言う。
「皆さんは、仲が良さそうでいいですね。ハチス様もそれを見て、招待したのでしょう」
「仲がいい?」
「そこまで会ってから経ってないよな?」
皆、ピントとこないような反応になる。
それからヴェロニカは、進みながら雑談をする。
階段を数度下って、奥深くへ進む。
ある地点で壁や床の素材が変化する。
造られた年代が違うのだろう。
白い大理石のような物から古びた石レンガに変わっている。
「もう少しで着きます」
ヴェロニカが皆に伝える。
階段を下りてからは、ほとんど曲がることなく進んだ。
廊下は、地下水道のように薄暗くなっている。
「着きました」
ヴェロニカが突き当りの扉の前で言った。
「ここが………………」
皆が扉を見る。
扉は周囲の壁になじまないほど違いがあり、金が装飾に使用され、他にも金属が使われている。
要は周りの物より高価だ。
ヴェロニカが鍵を取り出して、鍵穴に入れ、捻るところで手を止める。
「それでは、開けます。いいですね?」
ヴェロニカが最後の確認をする。
「はい」
タイムが返事する。
ヴェロニカはその返事を聞いて、鍵を握り直す。
そして回そうとした時、異変が起こった。
そのせいで扉が開かれる手は止められた。
揺れる。
何かがぶつかったような衝撃が伝わり、遅れて来た道から轟音が響いた。
「何だ!?」
ヴェロニカが言った。
「とりあえず、戻って確認しましょう」
タイムが言い、皆で来た道を戻った。
◆
突然の衝撃――――――それも地下の奥深くに位置する場所でも感じるほどのもの。
それはタイムたちに異常事態を知らせる警告音と同様だった。
タイムたちが上へ戻るにつれて、人々の声や何かの衝突音などが聞こえてくる。
教会に付けば、大勢の人がその場を埋め尽くしている。
先日に訪れた時より遥かに多い。
圧死するかもしれないと感じるほどだ。
人をかき分けて、出入口から外へ出る。
そして、そこから一望できる光景に目を見開く。
「状況を教えろ!」
ヴェロニカが近くにいる聖騎士に尋ねている。
その聖騎士が疑問の答えを叫ぶ。
「大規模テロが発生したんだ!」
タイムたちの眼前には、人々が逃げ、建物が崩れる落ちる、神聖国サンクトゥスの町並みがあった。




