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26話 神聖国

 四人は、パキラの故郷を後にして、目的地へ向かう。

 目的地は、神聖国サンクトゥス。

 宗教が基軸として根付いた宗教国家だ。

 不死族(アンデット)退治にも使用した聖水もこの国から排出されている。


「国かぁ………………」


 アイリスが呟く。


「国ってどんな感じ何だ?」


 タイムが質問する。


「僕も国へ行ったことはありません」


「あたしも」


 タケとパキラも同調する。


「私は、あるよ」


 アイリスが唯一の国へ行ったことがある人材だった。


「故郷がね。だから行ったっていうよりかは、出て行った方が正しいのかな~」


 アイリスはのんびりと言った。


「神聖国は、耳に聞いた程度のことしか知らないけど、やっぱり有名なのは、その宗教じゃない?」


 サンクトゥスで信仰されている神は、一般的に「聖神」と呼称される。

 人々に魔のものへ対抗する力――――――神聖魔法を授けたとされている。


「人を殺してはならない。人を私欲で欺いてはならない。魔のものを滅せよ。とか、他にも教えが色々とあってね。この大陸では、主流の宗教の大元だからね」


「俺には無縁だな」


「そう? 入信したりしないの?」


 アイリスが冗談っぽくからかう。


「もし、記憶を戻してくれるっていうなら神様でも何でも奉るんだけどなぁ~」


「そう言えば、タイムさんって記憶喪失でしたね」


「そう言えば、そうだな」


「そうだったね」


 三人は、タイムの記憶喪失を再認識する。


「大きい国なら情報も集まり易いんじゃない?」


「確かに!」


 タイム自信も自分が記憶喪失であることを再認識することとなった。


 ◆


「あれか?」


「はい、多分そうです」


 タイムとタケが遠くの巨大な壁の建造物を眺め確認しあう。

 壁の端が見えるが、山脈に突き刺さるようになっている。

 内部の建物の一部は、その山脈から生えるように建てられていて、壁の外からでも確認が可能だ。


「何というか、凄いな。町とはまるで規模が違う」


「あんな大きさの建築を………………」


「スゲェ」


 国を知らない三名から圧巻の言葉が出る。


「知ってはいたけど………………これは凄いね。山脈を利用するなんて」


 アイリスもその景観に感心する。

 四人の進みが速くなる。

 壁に近づき、次第に内側は隠れてしまう。

 四人がたどり着いた場所は、壁の一角の関所だった。

 そこで持ち物や身分証の代わりとなる冒険者カードを検査される。

 特に問題はなく、四人は通過した。

 ただし荷物のほとんどは、タケの『盗人庫』に入っているので、荷物検査はズルをしている。

 申請しなければならない物品もないので、ただ手間を省いただけだ。

 衛兵と自分たちの時間の節約のためだということにしている。


 小さい門を潜り、入国する。

 壁の内側に広がる光景。それは外側からも見えた建物の他に洗練された小さい家々が並んでいる。

 小さいと言っても、それは巨大で豪華な建造物と比べたからであって、町の建物の中でも大きい物と同じか少し上回るほどの物だ。

 タイム、タケ、パキラの三人は周囲を見る。

 首を回して、眺める。


「皆、キョロキョロしてないで、まずは宿を探そう。冒険者ギルドは、その後だよ」


 アイリスが三人を率いる。

 道行く人に三度尋ねて、宿を決めた。

 いくつかの候補からアイリスが一件に絞り、無事に宿を取った。

 他三人は、アイリスの手際の良さに入る隙がなく、何もできずに付いて行くだけになっている。

 普段、こういう部類の雑務を担当しているタケもタイムやパキラに同じくだ。


「アイリスさんって宿を取ったりする所とかは、手際がいいですよね。何というか………………手慣れているというか」


「そりゃあ、この中では、私がこのパーティの最古参だし」


 アイリスの旅に乗っかるようにタイム、タケ、パキラ、セピアと仲間になったので、間違ってはいない。

 四人は、部屋を少し見た後、すぐに宿を後にした。

 荷物という荷物は、タケが持っているので、置く物もないのだ。

 次に向かうのは、冒険者ギルドだ。

 この国に来た最大の目的は、冒険者ギルドの特別依頼なのだから当然だ。


 冒険者ギルドの建物は、大きかった。

 この国の建物の中でも一二を争うような規模だ。

 見つけるのも簡単だった。

 壁の外側からでも見つけることができるかもしれない。

 内側であれば、なおさらだ。


「ここが冒険者ギルド!」


 タイムは、ギルドの前で見上げて言う。


「ほら、そんなこといつでもできるし、さっさと入るよ」


 アイリスに半ば無理やり押し込まれた。

 そして流れるように受付へ行き、特別依頼を受注する。


「はい、確認が完了しました。それでは特別依頼のご説明をさせていただきます」


 そしてタイムたちは、説明を聞いた。


 ◆


 四人は、現在、サンクトゥスの地下水道にいる。

 薄暗いが視界が悪い程度ではない。

 匂いもほとんど無く、無臭だ。

 生活廃水が流れているというのに不思議なことだ。

 その種は、神聖魔法だ。

 神聖魔法の『神聖結界』で国が管理しているのだ。

 悪臭はかき消され、暗闇は照らされる。

 その通路をタイムたちは進んでいる。

 そして、発見した小型の鼠の魔物を狩り続けている。

 それが特別依頼の内容。

 「地下水道に住み着いた魔物の討伐と調査」

 『神聖結界』で寄り付かないはずの魔物が何故か住み着くという異常事態。

 場所が場所で魔物の奇襲などを予想してAランクに設定されている。


「地味なのに気が抜けないですね」


 タケが呟く。


「絶対に気を抜くな。神経を張り巡らせとかないと奇襲で簡単に死ぬ」


 タイムの言う通り、現在四名は計12回の奇襲を受けている。

 (ラット)は、十体ほどの群れで連携を取って行動するのだ。

 一体一体は大したことがなくとも、数が集まれば脅威になる。


「それにしても、物好きな魔物もいるんだね。この結界の中で魔物は肌がピリピリするだろうに」


「そもそも、何処から入ってきたのか………………」


 侵入経路がないわけではない。

 だが、その数は決して多くなく、この数の魔物が同時に侵入することもタイミングが揃い過ぎているのだ。


『特殊個体が先導してる可能性があるな………………』


 タイムは考察して、進んで行った。


 ◆


「収穫は無しか………………」


 地下水道の出口から出て来たタイムが言う。

 あの後も魔物を倒して周ったが、原因らしい原因は発見できなかった。

 手元には、大量のラットの素材だけが残った。


「まぁ、別に今日一日で終わらせるような仕事じゃないだから、明日も頑張ろう」


 アイリスが励ますように言う。


「そうですね。期限も長いですし、気長に進めましょう」


「その通りだ。まだ一日目なんだから大丈夫、大丈夫!」


 四人は会話をしながら、冒険者ギルドへ向かう。

 報告と素材を引き取ってもらうためだ。

 受付に引き渡し、換金する。


「こちらで以上です」


「ありがとうございます」


 金貨と銀貨を受けとり、タケが収納する。


「すみません。一つ聞きたいことがあるのですが………………」


 タイムが前へ出て来る。

 そして別件に移る。

 タイムは受付の人にその件を伝える。


「それでしたら………………」


 受付の人から情報を聞き、タイムたちは帰った。

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