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2話 町へ

 青年―――もといタイムは、眠りから覚める。

 タイムは目を開く前に自分が何かで叩かれているような衝撃を一定のリズムで感じ取った。

 その物体は、軽いのかあまり痛くはない。

 感触からして薄いことも解る。

 タイムはそれが何か布だろうと考えた。

 そして、タイムは、自分がそれで叩かれる状況はどんな状況なのかを考える。

 だが、タイムは一向にその状況が考えつかなかった。

 こうして考えている今もタイムは叩かれ続けている。

 タイムは痺れを切らし、目を開き、答え合わせをする。

 タイムの目に入ってきた光景は、異質であり、単純だった。

 昨日、怪鳥に襲われていたところを助け、旅仲間になった少女―――アイリスが布切れを手に持って、何度も自分を叩いている光景だった。

 タイムが不思議そうに見ていると、アイリスはタイムが起きたことに気が付く。


「おぉ、やっと起きた」


 そう言って手を止めた。


「おはよう、タイム。グッドモーニング♪」


 アイリスは、横になったままのタイムにそう言った。


「………………これはどういう状況だ?」


 タイムは少しばかり混乱しながら、アイリスに尋ねる。


「いや~、起きたらタイムがまだ寝てて、それで起こそうと思って」


 タイムは立ち上がりながらその話を聞いた。


「そうか、ありがとう。アイリス」


 タイムは礼を言い、立ち上がる。


「それで今からどこに向かうんだ?」


 タイムはアイリスに尋ねる。


「近くにある小さい町を目指すよ」

「へぇ、方角は?」


 タイムはそうアイリスに聞く。

 アイリスは地図を取り出して場所を示す。


「えっと、今は大体ここあたりだから…………多分あっち」


 アイリスは何も無い地平線を指す。


「…………どのくらい先なんだ?」


 タイムはアイリスに尋ねる。


「王都の半分くらい」


 アイリスは答える。


「アイリス、その例えじゃ解らないんだけど…………」


 タイムは文句を言う。


「でも、それくらいしか例えがないし」


 タイムはその言葉に納得する。

 そして二人は、その町へと向かった。


 ◇


「知ってる? 魔王墓の怪鳥は、首を切られても数分気が付かないらしいよ」

「へぇ」


 タイムはアイリスの豆知識を聞く。


「それじゃあ、何で俺が近づいたら逃げるんだ?」


 タイムは、疑問を口にする。


「さぁ? 特異体質じゃない?」


 アイリスは適当に答える。


「そんなものか」


 タイムはその適当な答えに納得する。


「そう言えば、タイム。町に着いたら冒険者登録をするんだけど…………」


 アイリスが思い出したように話し出す。


「その時に審査があって、多分模擬戦みたいなこともするから武器がいるんだよ」

「武器…………」

「タイムってどんな武器が使えるの? 憶えてる?」


 アイリスがそう聞くとタイムは自身の頭をフル回転させて考える。

 タイムはもちろん使える武器のことなど憶えていない。

 タイムは自分が武器を持ち、それ扱う姿を想像する。

 槍を持って振り回す姿、戦斧を持ち上げる姿、弓を構える姿、その他の武器を扱う姿を想像するが、どれも途中でイメージが破綻してしまう。

 そんな中唯一破綻せずに想像できた武器があった。

 その武器は剣である。


「憶えてないが剣だと思う」


 タイムはその武器が自分の使っていた武器だと思い、その武器を言う。


「そうなの?」


 アイリスが聞く。


「ほぼ感だ」


 タイムは正直に答える。


「まぁ、剣なら使えなくても、ある程度なら戦えるからいいか」


 アイリスはそう呟いて続ける。


「それじゃあ、町に着いたら剣を買おうか。いや、その前に服を買った方がいいかな…………」

「服も買うのか?」


 タイムは驚いてアイリスに聞く。


「そりゃあね。その服じゃ、まるで私が奴隷商人みたいでしょ」


 それを聞いて、タイムは、やっぱりこの服、奴隷みたいな服なんだ、と考えた。


 ◇


 二人―――タイムとアイリスは歩き続ける。

 あるき続けて数時間、流石に二人は話題も尽きて無言で黙々と足を前へと動かす。

 日ももうじき地平線に沈む頃になった。

 タイムは遠くを見つめる。

 地平線には変化がなく、怪鳥も岩も見えない。

 もちろん、アイリスの言う町も見えてこない。


「いつになったら町につくんだ?」


 タイムは痺れを切らし、アイリスに問う。


「あと少しのはずだよ。少なくとも今日中には着く」


 アイリスは答える。

 タイムはそれを聞いて、タイムの心は少し軽くなった。

 そして歩く、歩く、歩き続ける。

 しばらく歩き続け、地平線から何かの群れが見えてくる。

 タイムはその群れに目を凝らす。

 その群れは、建物の群れだった。

 砂漠の中、地平線にポツンと建物が並んでいる。


「あれか?」

「うん、あれが目指してた町だよ」


 日は、三分の一が地平線に隠れている。

 タイムは足を速める。

 それに伴い、アイリスも歩幅を広くする。

 そして日が完全に見えなくなった頃に町に到着した。


「よし、もう遅いし、服を買いに行こう」


 タイムはアイリスに手を引かれる。

 アイリスは道行く人に服屋の場所を尋ね、町中を歩く。

 暗いからか通行人の数は多くない。

 そして街灯に照らされた道を歩き、服屋に到着した。

 服屋に入るとタイムの意見を全て無視し、アイリスが服を選ぶ。

 タイムは買ってもらう立場なので、特に意見しなかった。

 そうしてアイリスに選ばれた服は、擦り切れていない綺麗な新品の服。

 その服を着て、二人は服屋を出る。


「時間が時間だから、武具の類はまた明日に選ぶよ」


 アイリスが宿を探しながら言う。

 タイムは付いて行きながら相槌を打つ。

 宿に着くと部屋をとり、二人は倒れるように眠る。

 何時間も歩き続けたので疲れが溜まっていたのだろう。

 二人が今日見たのは、宿の天井だった。

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