14話 影を操る悪魔
三人は、ダンジョン攻略を進める。
そしてある部屋に到達する。
その部屋は、他の部屋と違い広く、そして何よりも天井に一匹の魔物が居座っている。
その魔物は、巨大蝙蝠である。
それを確認した二人は、速やかに動きだす。
ビックバットは、その内の一人――――タイムに向けて超音波の攻撃をする。
タイムは、難なくその攻撃を避ける。
次にビックバットは、反応が遅れたタケに攻撃を放つ。
影魔法『影牙』。影を刃の形にして相手に飛ばす魔法である。
だが、その攻撃が届く前に察知したタイムによってタケの服が引かれ、魔法を回避する。
その間にパキラが棍棒を振り、宙を飛ぶビックバットを地へと叩き落とす。
後は、タイムと二人で仕留め、解決である。
「もう倒したんですか!?」
タケが言う。
「そんなことより解体するぞ」
タイムは、タケから道具を受け取り、ビックバットの素材を剥ぎ取っていく。
「こいつがボスか?」
タイムがタケに質問する。
「先に道が続いているので、まだボスでは、なさそうですよ」
タケが言うようにこの部屋からさらに通路が伸びているため、まだまだ先がある。
「長いな~」
パキラが不満気にぼやく。
二人は、表で反応がないが、内心同意している。
このダンジョンは、広い。
そして出てくる魔物もCからBランクの魔物であり、Bランクダンジョンでは、ありえないことだ。
どう考えてもBランク以上の難易度である。
『となると、Aランクのダンジョンだな』
タイムは、心の中で考える。
「早く進もう」
タイムは、この危険な場所から脱するため脚を速める。
それから三人は、奥へと進む。
その道中も魔物と遭遇するが、特に何も無く排除し、先へ進む。
彼らの歩みを止めるものなどない。
そして彼らは、最奥のボス部屋の手前のさらに手前の部屋に到達する。
その部屋は、他の魔物が居た部屋より広いが、魔物などは、いない。
その代わりに一人の少女がいる。
三人は、すぐにその少女が誰か解る。
その少女は、彼らの仲間であるアイリスである。
そんなアイリスは、何をしているのかと言うと、床にインクで模様を描きその上で紐にアクセサリーを付け垂らしている。
「あれ? 手順を間違えたのかな?」
アイリスは、三人に気付かずそんなことを呟く。
「おい! アイリス、無事か?」
タイムがアイリスに言う。
「うん、無傷だよって、え? 三人共いつの間にいたの?」
アイリスが驚きながら言う。
「今来たんだ。そんなことより、こんな奥まで一人で来たのか? 魔物は?」
タイムは、不思議に思いアイリスに問う。
「まさか、ここの近くに飛ばされたて、それからずっとここで人を待ってたんだよ」
アイリスは、自分の髪の先端を指で触りながら答える。
「そうですか、そう言えば、その模様は?」
タケが床を指し、アイリスに聞く。
「あぁ、あれは、占いだよ。皆が大体何処にいるのか調べようと思って」
アイリスが言う。
「え? アイリスさん、そんなことができたんですか!?」
タケが驚く。
「できるよ~。簡単なのだけど」
アイリスが言う。
「そんなことより、この扉の先には、行ったのか?」
パキラがアイリスに言う。
「いや、ボス部屋みたいだから一人だと厳しそうだから行ってないよ」
二人の言う扉は、この部屋にあるダンジョンに似つかわしくない豪奢な大扉だ。
「押せば開くか?」
「まかせろ」
タイムとパキラが早速、扉を開こうとする。
「ちょっと待って! 何ボスに挑もうとしてるの?」
アイリスが止めに入る。
「いや、出口見つからないし、そっちの方が手っ取り早いだろ」
そう言って再開する。
アイリスの警告も虚しく、四名は、このダンジョンのボスへと挑戦することになった。
◇
そこは、ダンジョン最奥のボス部屋。
そこは、いままでの通路などと違い、人の手が加えられていないような洞窟だ。
広さは、十分にあり、天井から鍾乳石のように尖った岩が無数に存在している。
そして中心には、一匹の魔物――――否、魔物ではない。それは人型を取っており、二足歩行をしているが、背から黒い蝙蝠のような翼が生えている。
そいつは、待っていましたとばかりにタイムたちの方を向く。
「やっと次の奴が来たか~。しかも四匹。待ったかいがあるぜ」
それは、そう言うと、タイムたちへ襲いかかった。
タイムは、その攻撃へ剣を抜き備える。
その時、この部屋のある一点に目が釘付けになる。
その部分には、赤い血痕があり、色を見るとまだ乾き切っていないことが解る。
そこから目を落とすと、一人の人間が倒れている。
その人物は、少しも動かずじっとしている。
後頭部には、血痕の元であろう傷が開いており、その他にも所々損傷をしている。
だが、タイムの目が釘付けになったのは、その為ではない。
『ゴウランさん?』
倒れている人物とは、あのゴウランであった。
そしてもう一つの理由がある。
それは誰がどう見ても彼が………………死んでいるからである。
もしかしたら遠目で見ているからそう見えるだけで、彼はまだ重症なだけという可能性もある。
だが、そんな希望などないように脳は、こう結論を出す。
彼はもう絶命している。
タイムの頭の中で様々な思いが暴れる。
接点など数えてみれば少ない人物だが、それでも死にそこまで反応する。
タイムは、そのことに気を取られ、攻撃を避けることも防ぐこともできず、被弾する。
壁に叩きつけられ意識が遠のいていく。
「タイム!」
パキラが言う。
「いやー、呆気ないね~。無様だね~」
そいつは、口角を上げながらそんな侮辱の言葉を投げかける。
「そうだ! 冥土の土産にでも自己紹介してやろう!」
そいつは、名案が思い付いたごとく言う。
「俺は、悪魔。名前は、ない。このダンジョンでダンジョンボスをやっている」
そう四人に告げた頃、タイムは、意識を失った。
残ったのは、三人の内、戦闘が可能なのは、一名であり絶望的である。
パキラは、怒りの向くままに棍棒を振り下ろす。
だが、悪魔は、そこから消え少し離れた場所に再出現する。
その間にタケとアイリスは、タイムに駆け寄り怪我の度合いを確かめる。
「気絶してる!」
「あの勢いで壁に叩きつけられて気絶で済むのは、異常だと思います」
タケがそう言うとアイリスが神妙な面持ちになる。
「そのタイムが気絶するなんてあれは、異常だよ。それに悪魔………………明らかにAランク相当だよ」
アイリスの言葉からその異常さが伝わる。
「パキラ! なるべく守りに徹して!」
「解った」
パキラが返事を返した。
◇
「そう言えば、■■■■は、目標とかあるのか?」
タイムが目の前に座る女性に問う。
「目標? 強いていうならっていうのならあるわよ」
■■■■は、素直に答える。
「どんな目標なんだ?」
タイムは、気になり追及する。
「ほとんど夢物語」
すると自身満々にこう返す。
「それ俺に言うか?」
そう言うと■■■■は、呆気にとられたような表情になる。
そしてすぐに可笑しく笑いだす。
「確かに! タイムのに比べたら全然マシね!」
それからその目標を話し出す。
「まず、私って悪魔でしょ?」
「あぁ、そうだな」
タイムは、答える。
「でも、悪魔って悪名が大きいのよ。実際、悪い奴が多いことには、多いけど少なからず、いいやつもいるわけよ」
タイムが相槌を打つ。
「だから、せめて多くの世界に悪魔にもいいやつは、いるってことを広めたいんだ」
「それは、何というか………………結構大きくでたな」
タイムは、その壮大さに引く。
「いや、引くな、引くな。大体タイムの方がでかくて壮大で実現困難だろうが!」
そう言って頭を軽く叩く。
「痛い! でも俺ほどでもないにしろその夢は、実現困難だ」
タイムは、断言する。
「それでも、俺は応援する。同じ不可能へ挑戦する身として」
「ありがとう。まぁ、だから協力しているんだけどね」
景色が霞む、景色が霞む。
それは、過去の記憶。
タイム自身、思い出していない思い出。
それは、気絶の最中に見る夢として感覚へ伝わる。
タイムがこの記憶をしっかりと思い出すのは、まだ当分先の出来事である。
◆
タイムが目覚める。
だが状況は、悪い。
現在、タイムを何とかアイリスとタケの二人で運び、その間パキラが悪魔の相手をするという状態だ。
パキラは、押されており、悪魔も本気を出していない。
「タイムさん、起きたんですか! 大丈夫ですか?」
タケが聞く。
「あぁ、夢か何か見てた気がするけど………………忘れた」
タイムは、そう言って立ち上がる。
そして剣を抜き、悪魔へ向かって接近する。
そして剣を振るい悪魔の首を斬ろうとする。
悪魔は、瞬時に遠くへ移動し回避する。
「タイム、起きたのか!」
パキラが言う。
「あぁ、一人で粘ってくれてありがとう」
タイムとパキラがそんなやり取りをしていると悪魔が割って入る。
「お前、生きてたのか。あれみたいに無駄に丈夫だな」
悪魔が指す先には、ゴウランが倒れている。
「あれも随分丈夫だった。丈夫でいい暇つぶしになったよ」
笑いながら悪魔言う。
「黙れ」
タイムが言う。
その表情からは、不快感がにじみ出ている。
「お前を見ていると知り合いをけなされているように感じる」
タイム自身、何故そこに怒っているのか解っていない。
それより、ゴウランの仇のことを理由した方がいいと本人は理解している。
だが、どうしても怒りより不快感が勝利する。
「そうかよ。まぁ、楽しめればいいからどうでもいいわ」
そう言うと突如タイムの喉元へ影の刃が出現する。
タイムは、冷静に剣で刃を止める。
その間にパキラは、悪魔へ棍棒を振るう。
「ぼろい木屑だな」
そう言って棍棒を砕く。
そしてそのままタイムの近くへ瞬時に移動する。
「もう一度、眠っとけ」
そう言って拳を握り、タイムの腹部に向ける。
タイムは、剣でその拳を受ける。
剣は、その拳を受け切るがその威力に耐えきれず刀身が折れる。
「タイムさん!」
タケは、その様子を見て焦る。
タイムの戦闘能力は、剣にある程度依存している。
剣は、無くとも戦えるが、どうしても戦力が下がるのだ。
タケは、色々と考えた後、タイムに向かって叫ぶ。
「タイムさん! 急いでこっちに来てください! 早く!」
それを聞き、タイムが走る。
「へぇ、剣でも持ってるのかい?」
「え?」
タケの背後に悪魔が現れる。
瞬間移動。
そうとしか形容することができない動きである。
タケは、反応することができない。
悪魔は、タケに手を伸ばす。
タケは、空間収納から魔剣を取り出す。
せめてもの抵抗として、一矢報いようと取り出す。
その瞬間、周囲に火がまき散らされる。
その場には、切り落とされた悪魔の腕が落ちている。
悪魔は、思わず後方へ跳躍する。
魔剣が火の光によって美しい光沢を魅せる。
その場には、魔剣を握ったタイムが立っていた。




