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13話 各々の捜索

 タケは、通路を慎重に歩く。

 (トラップ)を警戒し、少しずつ前へ進む。

 まさに石橋を叩いて渡っている状態であり、この世界であれば「身代わり千体」という似た意味の慣用句がある。

 だがその慎重さが功を奏したのか、まだ魔物に遭遇していない。

 それどころか何一つとして音が聞こえない。

 魔物はもちろん、人がいるような音さえ、何一つとして存在しない。

 その事実がタケを安心させると同時に恐怖をあおっている。

 タケの頭の中にネガティブな考えが浮かんでくる。

 このまま誰とも会えないかもしれない…………もしも、あの曲がり角に魔物がいたら…………次の一歩で罠が発動しない保証はない…………それよりこのまま何も無く死んだら?

 そんな考えがタケに付きまとう。

 タケが歩いていると、部屋を発見する。

 これまでにも幾つか殺風景な部屋を横切ってきたが、その部屋にタケの目が止められた。

 その部屋の中心には、一つの宝箱が設置されていた。

 タケが部屋を除きこむが、その部屋に目立った罠はなく、タケの目には安全そうに映った。

 だが、一見安全だったのしても巧妙に隠された罠がある可能性がある。

 タケは何を思ったか、その部屋の中へ入っていった。

 部屋に入った瞬間、落とし穴が開くなどということはなく、タケは五体満足だった。

 タケは一旦、安心する。

 そしてタケは宝箱の中身が気になり、開けようと手を伸ばす。

 そして宝箱に触れる一寸ほど手前で手を止める。

 タケの知識が手を止めた。

 この宝箱に罠が仕掛けられているかもしれないと、手の動きを鈍らされる。

 タケはその事を想定した後、そまま手を宝箱に触れさせる。

 この時点で罠は発動していない。

 タケは安心して、スキル【盗人】を発動させる。

 タケの所有する固有能力(ユニークスキル)【盗人】。

 その機能の一つである『盗人の腕』。

 効果は、触れたもの――――人や箱などから、内包もしくは所持している物体を自身の手の中か『盗人庫』内に移動させるというものだ。

 使い方次第では、とても危険な能力だが、タケはその事に気が付いていない。

 タケは、宝箱からその中身を手に移す。

 中身は、綺麗な装飾が施された大剣だった。

 宝箱の大きさにそぐわないが、タケはダンジョンのそういう物なのだろうと納得した。

 タケは、その大剣を『盗人庫』に収納し宝箱のある部屋を出る。

 そしてまた通路を一歩一歩慎重に進んでいった。


 ◇


 タイムは通路を進む。

 その足取りは速く、堂々と通路の中央を通っている。

 タイムが一歩踏み出すと、床が抜ける。

 落とし穴の罠だ。

 タイムは慌てることなく、穴の淵を蹴り、軽々と落とし穴から脱する。

 矢が飛んでくれば剣で弾き、床から棘が突き出せば壁を蹴って回避する。

 タイムには、この程度の罠は通用しなかった。

 そんな彼の現在の目的は、一に仲間との合流、二にダンジョンからの脱出、三に攻略がある。

 タイムは歩きながら考える。


『こんな危険な罠だらけで皆――――――いや、パキラは、まぁ大丈夫だろうし、アイリスも何だかんだ無事そうだから問題はタケだな』


 タケを心配しながら捜索にいそしむ。

 そして魔物に遭遇した。

 その魔物は、天井に逆さまにぶら下がっている。

 名を毒蝙蝠(ポイズンバット)と言う。

 冒険者ギルドでは、一体の討伐難易度がBランクの強力な魔物だ。

 その脅威は、飛行が可能な翼の機動力と毒による消耗戦の優位性だ。

 ように倒すのが面倒くさく、じわじわと体力を削ってくるのだ。

 本来ならば単騎での戦闘は、厳しい魔物だが…………


「…………」


 タイムは剣を抜き、飛んでくるその魔物を無言で切り捨てる。

 普段ならばその場で解体し、素材にするが、今は緊急事態のため無視し、先へ進む。

 それからと言うもの罠や魔物が不定期的に襲ってくる。

 襲ってくる魔物はどれも恐ろしいもので、岩亀(ロックタートル)毒蜘蛛(ポイズンスパイダー)土蜥蜴(ソイルリザード)などなど、BからAランクの魔物たちに遭遇している。

 もちろん多少の時間を取られるが、タイムは損傷なしで討伐に成功する。


『いやー、あのロックタートルは厳しかった』


 タイムが剣を見て鞘に納める。


『危うく刃こぼれするところだった』


 そんなことを考えながら道を進む。


「誰かー! いないのかー!」


 タイムが通路に声を響かせる。


「タイムさん! ここです」


 するとタケの声が返ってきた。

 少し進んだ曲がり角でタケと合流した。


「タケ、大丈夫だったか?」


「タイムさんは、大丈夫なんですか? 装備に血が付いてますけど…………」


 タケはタイムの鎧に付着した血を指差す。


「大丈夫だ。これはさっきから切ってる魔物からの返り血だな」


「魔物と遭遇したんですか?」


 タケが聞く。


「あぁ、何匹か。タケは遭わなかったのか?」


 タイムは、タケが魔物から逃げ回る姿を想像しながら聞き返す。


「僕の方は、一匹も遭いませんでしたよ」


「それは運が良かったな」


「あとは、アイリスさんとパキラさんですね」


 その言葉にタイムは、少し考える。


「…………もしかしたら、アイリスとパキラは、別の階層にいるかもしれない」


 タイムは、感であるその考えをタケと共有する。


「それじゃあ、下か上に続く階段を探さないと」


 二人は、また通路を歩き出した。


「ちょっと! タイムさん! 何普通に歩いて罠を起動させてるんですか! 気を付けてください!」


 ◇


 ダンジョンの一角にて、殺戮兵器のように猛威を振るう者がいる。

 階層はタケやタイムが飛ばされた階層の一つ上である。

 通路に魔物たちの肉が潰れる音が響く。

 骨が砕ける音が響く。

 壁に何か重い物を叩きつけたような音が聞こえる。

 このダンジョンに突入した一人の冒険者は、通路の端に震えながら座り込む。

 つい先程までは、ダンジョンの特性に焦り、仲間を捜そうとしていたが、今はそれどころではない。

 今はただただ、この階層に存在する化け物に怯えている。

 そして視界に映る通路の角から赤い液体が撒かれる。


「ぎゃあぁぁぁぁ!」


 冒険者は、恐怖のあまり逃げ出す。

 薄暗い通路へ右へ左へと一心不乱に走る。

 そして落ちる。

 普段の彼ならば落とし穴などの罠があることを予測できたのかもしれないが、そんなことを気にする余裕などなかった。

 暗い暗い穴の中へ一人の人間が落ちていった。


「ん? 今、誰かいたのか?」


 赤い血を踏みながらパキラが顔をのぞかせる。

 そこには無人の通路が続くだけだ。


『気のせいか…………』


 パキラは少し肩を落として歩き出した。

 今、人に出会っても逃げられるだろう。

 何故なら今の装いは、真っ赤に染まった棍棒を持ち、所々血で汚れた格好だ。

 それに本人が姿も見せなくとも逃げた前例が一人いる。

 パキラが歩いているとポイズンバットの群れに遭遇する。

 ポイズンバットは、天井からパキラへと牙を剥く。

 噛まれた場合、毒に侵され徐々に弱っていくだろう。

 パキラは棍棒を一振りし、内の数体を蝿を叩くようにして潰す。

 だが、全てではない。

 棍棒を逃れた個体がパキラに牙を立てる。

 パキラは素手で数体を離れさせるが、一体だけ漏れがでてしまう。

 パキラはその個体に噛まれる。

 急いでその個体も掴んで壁に投げるが、もう遅い。

 パキラの体に毒が回る。

 普通の人間では、噛まれた瞬間から目まいや頭痛などを引き起こし、最終的には死に至らしめるほどのものだ。

 普通の人間ならば。


「噛まれちゃった…………」


 パキラは特異体質のため体が丈夫であり、この程度の毒であれば活動に問題はない。

 それにパキラは、見境なく様々な物を食べるのでEXスキル【毒耐性】を獲得している。

 つまりポイズンバット等の決死の特効は全くの無意味に終わってしまったということだ。

 パキラは壁に叩きつけられたポイズンバットの中から原型を保っているものを選び、口に運ぶ。

 こんなものを食べているから【毒耐性】というスキルを手に入れるのだ。

 パキラは『栄養補給』により体内にエネルギーを補充する。

 そして補充されたエネルギーは消費されるわけでもなく『胃袋』に蓄えられる。

 滅多に消費しないエネルギー。

 パキラはそんなことを微塵も気にせず、先へ進み続けた。


「ん? 何だこれ?」


 パキラがそう言い放ったものは階段だ。

 階段は下へ続いており、そこそこの長さがあるように見える。

 パキラは皆を捜すために下層へと進んでいった。


 ◇


「タイムさん…………さっきから聞こえてくる、この音は何なんですかね?」


「さぁ?」


 タケの疑問に対してタイムはそう返す。

 二人が合流してから程なくして、その異音が聞こえるようになった。

 その異音は、端的に言って不気味で恐怖心が揺らされるような音だ。

 何かが潰される音、何かが引きちぎられる音、何かがきしみ、折れ、砕ける音、コツコツと通路を反響する足音。

 タイムは気にした様子はしていないが、タケは気が気ではない。

 そんな時、二人の前方にある角から魔物の死骸が飛び出す。


「ぎゃあぁぁぁぁ!」


 タケが半泣きになり叫ぶ。


「その声! タケか!」


 角から血まみれで笑顔のパキラが顔をのぞかせる。


「ぎゃあぁぁ! 出たぁぁ!」


「タケ、落ち着け」


 タイムがタケに言った。


 ◇


「なるほど、階段を下りてこの階層に来たと?」


「あぁ」


「それで魔物は片っ端から倒して来たと?」


「あぁ」


 タケは異音の正体を知り安心する。


「アイリスは見なかったんだな?」


「あぁ、それどころか他の冒険者だって見かけてない」


 パキラは正直に答える。


「なるほどな、ここは最低でも二階層以下か…………魔物の強さを含めると、おそらくは最下層に近いかもな」


 タイムは自身の考察を共有する。


「そうなるとアイリスさんはもっと上の階層にいる確率が高いですね」


「それなら脱出できてる可能性もあるからアイリスは大丈夫だ。俺たちはこのままダンジョン攻略を進めてもいいかもしれないな」


 タイムとタケが話し合っている中、パキラは話に付いて行くことができず、頭の上に疑問符が浮かんでいる。


「まだ行っていない通路だと、あっち側か」


「はい、多分その方向にボス部屋か下層に続く階段があると思います」


 二人の話がまとまり、パキラを連れて先へ進んでいった。

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