取り巻きのモブのまま終わりたいアリシアの災難?王太子に見抜かれて王太子妃になりました
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モブとして過ごしたいアリシアと、そんなアリシアを気に入ったレオナルド殿下のお話
私、伯爵令嬢のアリシア。
私には前世の記憶があります
日本という国です。どうやら交通事故で若くして亡くなったらしいです。
そうして異世界に転生しました。こちらには貴族様が存在します。
現在、私はレオナルド殿下の周りの取り巻きとして、影を潜めております。
「目立ちたくない。」
出来れば取り巻きのモブとして終わりたい。
年頃の娘としては、「早く誰かと婚約を」という話になるけど、前世の記憶持ちの私としては、平穏に過ごしたい。
ここでレオナルド様の取り巻きを隠れ蓑にして、婚約をやり過ごし、行き遅れになりたい。修道院とかどうかしら。さらさら銀髪青眼のアリシアの心境。
この国のレオナルド殿下は見目麗しく、美丈夫だ。蜂蜜色の髪に碧眼。これぞ王太子!という容姿で佇んでいる。
王城の庭園。レオナルドは沢山の取り巻きの令嬢達に囲まれている。アリシアはやや取り巻きの外側にいて、レオナルドに夢中の様を周りの令嬢とともに真似なければならない。何故なら取り巻きだからだ。
アリシアはややうんざりしていた。邸に帰ったら、お気に入りの読みかけの本を、侍女のアンが淹れてくれた紅茶を飲みながら、ゆっくり読みたいわ、と考えていた。
その時、レオナルドがアリシアのいる取り巻き一群へ微笑みかけた。
「「「「キャー!」」」」
取り巻きの令嬢達は頬を染め、悶えている。
アリシアも本来ならそれに従うところだった。
何故ならレオナルドの取り巻きだからだ。
しかし、のんびりと大好きな本のことを考えていて、アリシアの気が抜けていたのだろう。ふいっと顔を逸らしてしまったのだ。
ああ、やってらんないとばかりに。
ほんの一瞬ではあったが、その姿をレオナルドは見逃さなかった。
レオナルドは目を僅かに見開いた。誰が見ても気が付かないほどに。
それだけの事だったのに、アリシアはレオナルドに気に入られてしまった。
それからというもの、アリシアはレオナルドから怒涛のアプローチを受けるようになり、あれよあれよという間に婚約して、王太子妃になってしまった。
(どうしてこうなった??)
アリシアの疑問は消えない。ある時、レオナルドに聞いてみる。
「レオナルド様は何故、私と婚約されたのですか?」
「ぷいっと横を向いたアリシアの顔が可愛かったから」
だそうだ。
(訳が分からない。それだけで??)
レオナルドに微笑みながらも、眉根を寄せるアリシアであった。
レオナルドはアリシアに出会った時のことを思い出していた。
最初は(取り巻きの中に、可愛い令嬢がいるなあ)だった。
長い銀髪で眼は青。美しい儚げな令嬢。取り巻きとはいえ、なにか違和感があった。その違和感が確実なものとなったのが、レオナルドがアリシアのいる取り巻きに向けて微笑んだ時だ。
アリシアが、ふいっと顔を背けたのだ。
「あの時は驚いたな」
レオナルドは取り巻きを見なれている。普段からアリシアに感じる違和感は何なのか?
レオナルドが微笑んだら、彼女は顔を背けた。取り巻きとしてレオナルドにまとわりついているが、実は好かれていない。その事実は辻褄が合わなくて。
「何故アリシアは取り巻きとして、俺のそばに居るんだろう?」
気になって仕方がない。こんなに令嬢のことで考えることはなかった。
聡いレオナルドは「もしかして俺はアリシアのことを好きなのか?」とすぐに自分自身の気持ちを分析した。
(沢山の取り巻きの中にいるアリシアのことが以前から気になっていたのは、そういうことなのか?)
もしアリシアが他の男のものになったらと考えたら、胸が苦しくなった。その男を排除したくなった。
(アリシアを誰にも渡したくない。チョロいな俺は)
アリシアのことを手に入れたくて、すぐに婚約の話を決めた。
「まずは手に入れてから、アリシアの心も手に入れよう。ゆっくり確実に。」
こうして、アリシアはレオナルドの妃となって、今も幸せに暮らしている。