第一話 転生
「死刑」
凶悪犯として更迭された僕は、そう言われた。
僕はやっていない、そう言いたかった。
僕は何度も、やっていないことを証言した。
しかし、判決は変わらなかった。
死刑が執行される日、遂に僕は命を失った。
目が覚めると、僕は現代の街中にいた。
あれ、俺、死んだはずじゃ……。
そう思って周りを見回したけれど、手がかりになりそうなものは一つもなかった。
そして、その街並みは僕が知っているものとは少し違った。
まず、走っている車の車種を一つも見たことがなかった。僕は生前車オタクだったが、どの車も見たことがなかった。
僕はまず、聞き込みから始める。コンビニに入って西暦を聞いた。なんど聞いても、死ぬ前と同じ西暦2023年だった。
しばらく手がかりを探すべく歩き回っていると、一人の女の子が道にうずくまっていた。
「どうかしましたか?」
手を差し伸べて事情を聴くと、どうやら、家出した後で途方にくれていることが分かった。
幸い、お金は沢山持っているようで、今夜の宿には問題ないようだった。
「あなたはどうしたのですか?」
今度は少女が僕に質問をした。僕は死んだらここにいたことを隠して、今現在どこにも行く当てがなくて途方に暮れていることを明かした。
少女は不思議そうな顔をして、答えた。
「じゃあ、私についてきませんか?」
僕は、お言葉に甘えることにした。少女の財布にはお金が詰まっていて、沢山膨らんでいた。
まず、僕らはホテルを取った。転生した場所は東京で、安い宿を取った。
そして、身の回りのアニメティとバッグと着替えを買いに行った。
ふと、少女がむずがった。
「なんだか。手がムズムズする」
僕も同じように手がムズムズした。なんだろうと僕ら二人が思っていると、手から光が出た。
「わああああ!!!」
僕ら二人は驚いた。路地裏でのことだったので、幸い人に見られて騒ぎになることはなかった。
「おい、あんちゃん」
突然、僕らの前に不良三人組が現れた。
この辺りを縄張りにしているやつだろう。
手にはバットやナイフなど、穏やかじゃないものを持っている。
僕らが彼らを無視していると、リーダー格の人間が怒りだした。
「しかとしてんじゃねえ、コラぁ!!!」
その人間が僕に向かってバットを振り下ろした。
ピカーン! さっきまで光っていた右手が光りだして、バットが消えた。
こ、こ、これって……。
転生と探検を繰り返して、僕の頭は鋭くなっていた。
間違いない、これは異世界転生でおなじみのチート能力だ。
僕は、少女ーーアメリアと言ったーーの手を握り逃げ出す。
こうして、僕の異世界転生ライフが幕を開けた。