第1話 異世界来て早々死亡
俺は死んだ。
名前は東山雅人。40手前の男だ。死んだ理由は過労死。ブラック企業で働いていると、こうなった。
最悪〜とか思いながらだったが、死後の世界はどうなるのだろうか? 異世界に転生したりとか? それとも天国か地獄か。そのどちらかか。
だが、俺の目の前に繰り広げられる世界は鬱蒼とした森の中。空は灰色の雲空で正直薄気味悪い。
まるでホラーゲームかの様だ。森の中に佇む洋館。そこでクリーチャーから追いかけ回される……とか?
よくスマホでやっていたホラーゲーム。
そんな場所にそっくりだ。
「ここは、どこだ?」
声を出すことはできる。そこはOKだ。ノープロブレム。だが、何故だ?自分から見えるこの格好は。
黒いローブに片手には大きな鎌まで持ってるじゃないか。俗に言う死神。と言うやつか。
死を司る死神に俺は転生してしまったらしい。魔物? いや、邪神? そこは分からないが、ここは異世界だろう。
死神ということは、もう既に死んでいるということか? だが、骸骨じゃない。
死神のイメージでは、黒いローブを纏い、大きな鎌を持ち、そして全身骨格な骸骨だと思っていた。
だが、何故だ? 手を見ても健康的な肌色。
なのに、どうして死神なのだ?
(死神で人間……どっち?)
そう思っていると、背中に妙な痛みが走る。
それが何か。分からない。
だが、痛い。痛みが走る。背中からお腹に向かって貫通しているのか、自分の視界から分かる血に染まった銀色の剣。
誰かが刺したのだろう。
(い、一体、誰が……!?)
異世界に来て早々こうなるとは予想外だ。
「だ、だれ……だ」
俺は何も分からぬまま、地面に倒れ伏した。一体、誰がやったのか。
「さぁ、誰でしょうね」
妖艶な声を出す人。声色からして女性だろうか。その人が刺したことに間違い無いのだろう。だが、何故刺される? 俺が何かやったのか?
思考は回り続け、混乱に陥るばかり。俺が見た異世界って、こんな感じなのか? それなら理不尽すぎる……。
背中に刺さっていた剣が思いっきり抜かれ、更に痛みが上乗せされる。
憎悪と怒りで溢れ返る。俺が何をした? と。
俺はこの世界に来て間もなく、何者かによって殺された。
過労死で死んだ時は痛みなんて無い。だが、刺されると叫びたいぐらい激痛が走る。
血溜まりが広がり、時間が経つにつれ痛みなんて無くなっていく。お腹部分が痛い。
そして何故、俺はあんな格好をしていたのか。分からない事だらけだ。
こんな理不尽さ。まるで通り魔の様じゃねぇか。
そんな風に怒りと憎悪が黒い渦の様に、俺の心を掻き乱す。
よくゲームとかではステータス画面が見れるはず。この世界にステータスという概念が有るかどうか。それは分からない。だけど、やってみる価値はありそうだ。
(す、ステー、タス)
そう思うも何も表示されない。やはりステータス画面は存在しないのか。
だが、諦めてたまるか。と言う、新たな感情が渦の中に入る。
(……ステータス!)
ゲームなら見れるはず。ステータス項目が。
レベル、名前、体力、魔力、職業、称号など。
何度も何度も唱えた。ステータス画面を出すため。
だが、何度も何度もやっても、ステータス画面が表示されることはない。
(何だよ、それ)
何でこうなるんだ。やはりゲームの世界じゃないからステータス画面が表示されないのか。と、俺は諦めようかと思った。
だが、先程のことがどうも諦めきれない。
(刺されてたから、何分経った……? なのに、何で意識がある?)
刺されてから間もないのか、随分経っているのか。時間感覚が分からない。だが、随分経った様に感じる。痛みでなのか、違う理由か。
(もう一度……あの、クソ女を……)
復讐心で溢れていた。最初は異世界に来て嬉しいと思った。過労死で死んでしまったことはしょうがないと割り切る。家族、友人には悪い気もするが、俺は十分働いたと思っている。
だが、異世界に来てその仕打ちは何だ?
そう思うとやはり怒りは収まることを知らない。
(ステータス!!)
力を振り絞って呼び出す。すると今度は脳裏にステータスという項目が現れた。
何が違ったのか。その違いはわからなかったが、出たことに関しては助かる。
(体力が3……。徐々に減っていってるのか?)
元々のステータスでの体力はわからない。だが、こう言うものの体力はそこまで多くなどない。
体力が2……1……となり、とうとう0に近づく。
【体力】0
なったはずだ。見間違えない。なのに、何故意識があるのか。
(………な、何でだ?)
『死亡を確認したな』
脳裏に謎の声が聞こえる。耳からじゃなく、脳から。その男の声か。男はどこからか俺を見ているのか、そう呟いた。
(死亡を……確認?)
その男が言っていることが正しいのならば、俺は何故。意識が保たれているのか。
『俺は貴様が持っている鎌だ』
(………これの……ことか?)
右手に持っていた鎌から話しかけられていた。そんな事があるか? と普通は疑いたくなる。だが、ここは異世界。そう言う武器もあるのだろうと、こじつけを付ける。
『貴様は何者かによって殺された。そしてお前の声により、ステータス画面を表示する』
自称鎌は、偉そうにそう答える。鎌がそう言うと脳裏にステータス画面の体力以外が表示された。
【名前】リーパー
【種族】死神
【職業】無職
【状態】死亡
【レベル】1
【体力】0/10
【魔力】10/10
【スキル】なし
【称号】なし
(………リーパーって誰?)
『リーパーはお前の名だ。新しい名である』
(ふーん……って、え、もしかして俺の名前を?)
リーパー……と言うのが俺の新しい名前らしい。呼ばれ慣れるのには時間がかかりそうだが、どうして俺が死んでも意識があるのか。そして自称鎌から声が聞こえるのか。
それが気になるばかり。
『あぁ、お前が疑問に思っていることは簡単だ。お前は既に死んで、死神になった。だから、意識があって俺の名前が聞こえる』
と言うことだった。異世界に来て早々死んでしまったことは、想定外過ぎる。
チート能力だとか、勇者だとか。そんな異世界生活を期待していたが、まさか死神になるとは思ってなかった。
俺はひとまず起き上がることにする。お腹から見えるその傷はかなり、痛々しい。
すると何故か。視界から見える手が明らかにおかしい。
(え、えぇえええええ!? 骨!? 肌色は!? 嘘だろ!! 誰かが言っていた……。『過ぎた時間は気にするな』と。気にするよ!! 骨だよ!? 指の骨が丸見え! グロ!)
だが血は出ない。まるで自分の体が溶けている……いや、そんな事はなかった。突然骨になった様な。そんな感じだ。俺の体は見慣れたはずの体から、骸骨の様に変わり果てる。
それは俺がイメージしていた“死神”の様な姿に。
『お前は死んだから骨になったんだろ』
(どんな理由!?)
死んだから骨になる? たしかに人間は死んでから年月が経つと骨になるが、そんな一瞬で? と思った。そんな一瞬で骨になる事があるのか? いや無いはずだ。それはもしかしたら、死神だから? いや、理由にならない。
【名前】リーパー
【種族】死神
【職業】無職
【状態】死亡 骸骨
【レベル】1
【体力】0/10
【魔力】10/10
【スキル】鎌の声
【称号】死を司るもの
異世界に転生して、死んで、死神となった俺は、頭の整理など追いつかなく、そして全身が骨格に覆われてしまった。
骨となった俺は、新たな称号を得て、その情報を見た瞬間、俺は意識を手放した。
スッーと意識が薄れていき、俺は人間となくなってしまった。
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