Act.3.反撃開始(リスタート)
トカゲモドキは崩れた壁の向こう、隣の教室から、衝撃波を放った。
けれど、今ならそれも怯える必要が無い。
俺は右手に持った刀を振るうと、灼熱がそれを相殺し、爆発が起こった。
手応えは十分だ。
「行くぞトカゲモドキ!」
「色喰らい!」
俺は全速力でトカゲモドキに近づく。それに泉ヶ丘も続く。体が軽いのを実感した。これならやれる!
トカゲモドキは咆哮すると、尾から弾丸を放つ――が、それを泉ヶ丘が雷撃で叩き落とす。
程なくしてゼロ距離に達した俺たちは、ヤツの胴体を斬りつける――が、想像以上に硬い。それでも力任せに刃を押し込み、どうにか炎を流し込む。
「ガアアアアアアアア!」
効いてる!
「『雷斬』!」
彼女がそう叫ぶと、放出していた複数の雷撃が刃の形を模し、そしてそのまま切りつけた。
トカゲモドキは苦しそうに呻きながら、再び折りたたまれた後ろ足で前に距離を取ろうとする。
それを俺は咄嗟に腹部を斬りつける。手応えがあった。
「わかった。あいつは腹が弱点だ!」
外皮は鬼のように硬いが、腹部は柔らかい。見れば、トカゲモドキは俺たちの後ろで盛大に転け、先程よりも苦しそうにしていた。
「腹部ね、了解」
しかしトカゲモドキは再び尾を俺たちに向け、そして――弾丸の雨を浴びかけてきた。
「って、ガトリングかよ!聞いてねぇぞ!」
「くっ……!」
泉ヶ丘が咄嗟の起点で、天井を攻撃し、上階の床を崩壊させた。そのおかげで遮蔽が生まれ、俺たちはそれに隠れる。
「このままじゃ近づけねぇぞ!さっきの雷斬でどうにか出来ねぇよかよ!」
「無理。射程距離は3mだもの」
「ほとんど近接攻撃じゃねぇか!5f1sq換算で2sq攻撃じゃねぇかよ!」
「何言ってるかわかんないんだけど!」
そう言っている間にも、トカゲモドキの放つ尾からのマシンガンは止まらない。遮蔽が少しづつ削られていく恐怖を感じた。
「あああああクソ!」
俺は身をかがめて走りながら、教室の壁を炎撃で破壊した。目指す場所は、廊下だ。
「ちょっと江畑くん!」
「俺が気を引く!あとは任せた!」
要はヘイトをとって、タンクをやりゃいいんだ。屋内戦ということもあって遮蔽はいくらでもあるし、地形破壊が可能なのも相まっていくらでも作れる。
問題は俺に気づいてくれるかだが――問題なく、トカゲモドキの銃口は俺の方を追いかけてきた。
廊下の薄い壁ではガトリングを数発受ければ廊下に貫通してくる。ガラスなんて初段で貫通だから、身をかがめて素早く走り抜けるしかない。
と、ほぼトカゲモドキの真横まで来た時、あいつは撃ちながら体重を後ろに傾けた。
これは――飛びかかり!
刹那トカゲモドキが飛びかかるのに合わせて、俺は体を宙に預けて――天井を蹴って見せた。
立体機動での回避!
トカゲモドキは向かいの教室へと侵入すると、再度体制を崩した。
「お前の攻撃はもう見切った!」
そして先までトカゲモドキがいた場所から全力で距離を詰め――見れば、右で泉ヶ丘も全くおなじ行動をしているのが見えた。
ならば後は、合わせるだけだ。
トカゲモドキは首を左右に振り、雄叫びをあげると、俺たちがヤツに近づく直前に、前足の刃で勢いよく地面を叩きつけた。
「なっ……!」
トカゲモドキは、俺たちの目の前で下階へと降りていったのだ。
「……見た目以上に賢いわね」
ヤツは上階の俺たちを睨みつけると、再度尾の銃口をこちらに向けてきた。
「追うわよ」
「もち!」
そして、トカゲモドキがガトリングを放つ――よりも早く、俺たちもまた地面を叩き切り、飛び降りた。飛び降りる最中、背中を弾丸の雨が通り過ぎていく。だが、当たらない。
そうしてその勢いのまま、トカゲモドキの背に――落下攻撃を浴びるのだった。