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神降ろしの存在召銘(アイデンティティ)  作者: 霜山 蛍
第1章.覚醒(アウェイクン)
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Act.2 存在召銘(アイデンティティ)

 ――いつまで経っても、彼女を突き飛ばした後に衝撃は訪れなかった。

 恐る恐る目を開けば、俺の右手の甲が輝き、そしてあのトカゲモドキの前足の(ブレード)を不思議な力で防いでいた。

 

「江畑……くん……?どうしてここに……」


 見れば、突き飛ばされた彼女が刀を杖に膝を着いて、起き上がっていた。

 目を丸くしている彼女の姿を見れば、あちこちに擦り傷や切り傷が見られた。


「俺にもよくわかんねぇけど……でも、黙って見てらんなかった」


 言いながら、右手にかかる圧力が増してる気がした。見れば不思議な力の正体は障壁(シールド)であり、半球状に展開された赤いそれが、トカゲモドキの前足を防いでいるのだ。

 改めて間近で見るとマジで気持ち悪い。爬虫類独特の質感があるくせに目がひとつで肌が黒いせいで、クリーチャーとかモンスターとか言う表現がぴったり合う。

 ラノベやゲームの連中はこんなのと戦ってるのか?いくらチート能力があっても異世界にだけは行きたくないね!


「まさかそれ……刻印(キー)?江畑くん、ひょっとして……」


 なんてバカげた現実逃避をしていると、泉ヶ丘が何かに気がついたようにブツブツと呟き始めた。


「は?何!鍵?」


「手の刻印(こくいん)よ!」


「刻印?」


 見れば、たしかにそこには印があった。――今朝、猫に引っ掻かれたクロスマークが、紅く光っているのだ。


「なら存在召銘(アイデンティティ)を!接続詠唱(キーコード)を叫んで!」


「なんなんだそのアイデンティファイだのキーコードだの!」


存在召銘(アイデンティティ)!何でもいいからそれっぽい事叫んで!」


「どっちも似たような意味だろうが!あとそれっぽい事ってなんだ!!ここに来て丸投げかよ!!!」


「いいから早く!」


「嘘だろ?!ええぃ!」


 刹那思考を超高層で回転させる。俺の厨二病的ワードセンスが、ここで発揮出来なきゃいつ使い道がある。

 俺が読んできたラノベや、やってきたゲームの知識が、ここで生きなきゃいつ生きる。


 もう時期障壁が砕け散るだろう。こうなりゃヤケだ。直感(フィーリング)だ。


「くそ!――()く燃え(たぎ)れ!」

  

 しかし、それだけでは何も変化が無い。何かが足りないらしい。


「名前を!」


 再び泉ヶ丘の声が耳に飛び込んできた。

 名前?文脈からしてその存在召銘(アイデンティティ)の名前のことだろう。

 ――いや待て。知らんが?知るわけないが?何?ここに来て名前までつけろと?お前名前を練るのにはなぁ!小一時間くらい悩んでだなぁ!


「早く!」


 彼女の声と同時に、障壁が音を立てて砕け散った。

 ここまで来てダメなのかよ……! 

 嗚呼(ああ)だけど、どうやら神は俺らの味方をしていたらしい。


 衝撃が襲い来るよりも早く、リンと

鈴の音が鳴り響いた。直後、声が耳元に響いた。


火之迦具土神(ヒノカグツチ)だ」


 知らない女性の声だった。妖艶で、艶やかな声。それが、どこからともなく聞こえたのだ。


火之迦具土神(ヒノカグツチ)!」


 考えるよりも早くそう叫んだ俺に、予期した衝撃は訪れず――むしろ、あのトカゲモドキを吹き飛ばしていた。


 現れたのは、赤黒い刀だった。灼熱の熱波を帯びた、炎鉄の刀。

 その熱波が、トカゲモドキを後方へと吹き飛ばしたのだ。

 吹き飛ばされたトカゲモドキは教室の壁を突き破り、隣のクラスで椅子と机と瓦礫に埋もれ、唸り声を上げていた。


「……すごい」


 泉ヶ丘が呟いた。


「これが……存在召銘(アイデンティティ)?」


「そう。……でも、詳しい事は後。今はあの色喰らい(モノクローム)を」


 そう言うと彼女は俺の隣に立ち、構えた。


「分かってるって。さぁ――」


 俺は刀を構えて、トカゲモドキを見据えた。さっきまでは苦戦していたが、それは彼女が1人で戦っていたからだ。

 だが、ここからは違う。俺と泉ヶ丘で、2人だ。


「――反撃開始だ!」

 

 剣先を突きつけて、俺はそう高らかに宣言した。

 2人なら、負ける気がしねぇ!

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