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神降ろしの存在召銘(アイデンティティ)  作者: 霜山 蛍
第3章.心の内界(リフレク・ダンジョン)
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Act.4-2 心の内界――添野氷藍Lv.1(コンフリクト・パーク)

 さて、俺たちが終始無言――おおよそ遊園地に来た男女の姿とは思えない――で木々のトンネルを抜けると、視界に映ったのは1つの門だ。巨大なアーチ門は、風船と、当パーク名物であろう――実際、パークのあちこちで見かけることができる――赤と青の兎が描かれた看板で装飾されている。

 ポップな看板には、『アトラクションパーク』と表示されていた。


 奇妙なことに、門の外の景色は見えるのに、門の向こうの景色だけがくぐもってきちんと見えない。

 例えるならあれだ、ソウルシリーズのボス前の霧。多分あんな感じ。


「……行くか」


「えぇ」


 俺たちは、その門を警戒しながら慎重に潜った。

 

 ――アーチ門を潜り、視界に映ったのは、またしても大きな広場だった。カラフルな赤レンガはそのままに、広場から4つの道が広がっている。

 そしてその広場を取り囲むように出店や土産屋が並び、ここまで来るとうっすら聞こえていた悲鳴や、ジェットコースターの音が大きく聞こえる。


 さてこのザ・遊園地な2つ目の広場では、奇妙な光景を見ることが出来る。

 

 アテンションプリーズ!右手に見えるのは、ちっちゃくて可愛らしい、ブカブカの軍服姿の添野が、台座に立って腕組みをしています!

 その手前には大勢の、恐らく色脱者(カラーイーター)たち。二頭身で、おもちゃの兵隊のような、赤い軍服――皮肉なことに、こいつらは色鮮やかだ!――に身を包んだそれらは、顔をよく見るとおもちゃのそれらしく、極めて簡素なものでございます!


 そして左手に見えるのは、同じく台座に乗る、一際背の高い、そして全身を白銀の甲冑に身を包んだ、1人の騎士であります。右手には当パーク、『そえの遊園地』のポップなロゴの描かれた旗槍を携え、仁王立ちしているではありませんか!

 その手前には同じく大勢のおもちゃの兵隊たち。

 そう、まるで戦の前の静けさであります!


 なんて馬鹿な実況は心の中で留めるとして。

 だとしても、ひとつだけ突っ込ませて欲しい。


「場違いすぎるだろ、あの騎士!というか旗がだせぇ!」


 ――2つ突っ込んでしまった。


 いや、おかしいだろ。あの漂う強キャラ感!そして某ジャンヌダルクよろしく手に持った旗槍!

 迫力満点!!ってところから飛び出すシュール過ぎる遊園地の旗!

 そもそもにして前線に立つのがおもちゃの兵隊の時点でだいぶ場違いだ。

 変なところでバランスを取らないで頂きたい。


「しっ!静かに」


 なんてツッコミを、即座に泉ヶ丘が制した。


「悪い、つい……」


「そのツッコミ癖、どうにかならないの……?」


「無理だ。性分だ」


 こればっかりは……ねぇ。関西人の血は引いてないはずなんだけどな。

 きっと、周りにボケが多すぎるからかもしれない。


 なんてやり取りをしていると、一瞬ノイズがその場に走った。と思うと、何やら可愛らしい声がこの広場中に響き渡った。


「やぁやぁやぁ!われこそは、この『そえの遊園地』のおーなー!そえのひょうらんだ!」


 やたらと舌っ足らずな声に、思わず癒される。

 ……じゃなくて。どうやらこれは館内アナウンスを通して行われているらしく、よく見れば彼女はインカムをつけていた。

 ヒーローショーか何かかな?


「やぁやぁやぁ!我こそは、この『そえの遊園地』を乗っ取りに来た悪徳業者!アークトクだ!」


 名前まんま!


「我々は当パークの買い上げに参った!貴殿のパークは度重なる土地代の高騰、課税、重税、施設維持費、並びに光熱費の高騰、そして少子高齢化に伴う来客数の減少、加えて不景気の末、赤字経営だそうでは無いか!これはひとえに無能なオーナーのせいである!」


 うわ、世知辛……。急にリアルな要素を持ち出すな!


「ち、ちがうもん!ぜーきん?とかじゅーせい?とかカンケーないもん!

お客さんが来ないのも、あなたがこのゆーえんちにつながる、いちばん便利な道を……ゆーりょーどーろにしたせいだもん!」


 ちゃんと悪徳業者なの面白いからやめろ。


「不景気故、致し方なし!こちらも固定資産税が痛いのだよ!」


 というか私道かよ。恐らくバイパスみたいな道路が私道かよ。そりゃ税金も高いだろうなぁ。


「ぐ、ぐぬぬ……こうなったら……!」


「あぁ、こうなったら……」



「「戦争よ (だ)!!」」


 ――俺たちはひょっとしたら、本当にヒーローショーでも見せられているんじゃなかろうか。



 少なくとも、俺はこの時まではそう思っていた。 



 だってそうだろ?

 こんなシュールな光景から、まさか本当の戦場さながらの乱戦を目にするとは、夢にも思わまい。


 ――まぁ、半分夢みたいなものだほうけどさ、この世界。


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