第12話 王との謁見
王都テンカワ家
実家に戻ってきた。
「ただいま、もどりました」
「おかえりなさいませ。ルナス様」
クラインが出迎えてくれた。
アレスとルル、レレーナとアルーゼは応接室で待ってもらい一人で父とハルト兄さんに報告に行くことにする。
「ルナス、入ります」
ハルト兄さんの部屋に入ると丁度父も一緒にいた。
「帰ってきたか、ご苦労だった」
「思ってたよりすんなり攻略できたようだな」
父と兄が言う。
「ああ、異世界語さえわかればオレじゃなくても良かったんじゃないか?」
「まぁ、そこは気にするな」
父が答える…いや、おかげで仕事辞めさせられたんだが…
あんたらは気にしろよ…
続けてハルト兄さんが調査結果の説明をはじめた。
「遺跡の調査結果だが、魔法人形は10体ごとに制御装置を分割できるようでな、各地の警備隊に組み込む予定だ。地下4階にあった服だがあれも魔道具のようでな…
着た人のサイズに合わせてサイズが変わるようだ。お前にも分配される好きに使え」
なるほど…
「いや、あの服、女性用ばっかじゃなかったか…?」
「うむ、嫁さんにでも着せたらいいんじゃないか?ハハハ」
父が嬉しそうだった…このおっさん…
「金銭的報酬だが、通信でも言った通り王との謁見後に財務局からギルドを通して支払われる。期待しておけ」
「ああ、わかった…それで謁見はいつなんだ?」
「明日の昼に王城で行われる。」
「わかった、今日はゆっくりさせてもらうわ」
「あ、母さん戻ってきてるから挨拶しとけよ」
兄に言われ母に挨拶しにいくことにする。
コンコン…ノックをして母に声をかける。
「母さん、ルナスだけど…」
「あ、おかえりー。入って」
「ただいま、久しぶり」
「うん、元気してた?」
「ああ、それなりに」
「ところで、お嫁さんは紹介してくれないのかな?」
「…ああ、ちょっと待ってて連れてくるから…」
レレーナとアルーゼを呼び、母に紹介する。
「レレーナとアルーゼだ」
「レレーナです。お義母さま。よろしくお願いいたします。」
「アルーゼです。よろしくお願いいたします。」
「あらあら、お二人とも美人ね。こちらこそよろしくお願いしますね」
親に婚約者を紹介するのがこんなに微妙な気分になるものだったとは…
「ルナス、ちょっと出ててくれる?」
母に部屋をでるように言われる…
「えっ?なんで?」
「お二人とお話するからに決まってるじゃない」
ニコニコしながら母が答える。
「いや、オレがいてもいいだろ?」
「ダメー。夕飯の頃には終わるから大丈夫よ」
ダメなのか…不安しかない…何を話すつもりなのか…
「はいはい、出て出て!」
母の部屋から追い出されてしまった。
仕方ない…
応接室でアレスとルルと話していると夕食の時間になり全員で食事をとった。
レレーナとアルーゼが、母とどんな話をしたか気になったが、こんな皆いるところで聞けないので他愛のない会話で夕食は終了した。
アレスとルル、レレーナとアルーゼは客室に泊まってもらう。
さすがにうちは伯爵家なのである程度部屋はある。
もちろんアレスは一人部屋である。
明日は謁見があるので4人とも屋敷で待っていてもらうことにした。
次の日
兄でありテンカワ家当主でもあるハルトと王城で陛下に謁見することになった。
今回の遺跡攻略の褒美を受ける為である。
褒美の内容次第でアレスとルルへの分配金も決めれるというものだ。
かなり遺跡で貴重な魔道具を発掘したので期待できるだろう。
「テンカワ家当主、軍部局副局長ハルト・ファン・スレイン・テンカワ卿、並びにビャレット辺境伯領遺跡攻略者ルナス・フォン・スレイン・テンカワ殿、王の御前へ…!」
王の御前までいき膝まづく。
「頭を上げるがよい」
「余が、アスレイア王国国王アスレイア27世である」
さすがに一国の王様である。油断できない感じがする。
ちなみに王のとなりには父が立っている。
父は王の護衛兼相談役になっていた。
今回の遺跡の件では父が王に頼み込んだのではと噂が立っていたが父はそんなことはしていない。純粋に利権を他の貴族に王が分散させないようにしただけであった。
「ルナス・フォン・スレイン・テンカワであります。」
「ふむ、遺跡攻略ご苦労であった。これより遺跡攻略任務達成の褒美を与えることとする」
「我アスレイア27世はハルト・フォン・スレイン・テンカワを『第3位侯爵』に陞爵させるものとする」
「はっ!ありがたき幸せ!謹んでお受けいたします」
やっぱりうちの家の格を上げるつもりだったか…兄貴なんもしてねえのに…
「続けて、我アスレイア27世はルナス・フォン・スレイン・テンカワに第5位『男爵』位を授けることとする」
ん…えっ???貴族位だと…?なぜ…?
(オイ…)ハルト兄さんが横からつついてくる
あっ!返事しないと…
「はっ!ありがとうございます!お受けさせて頂きます!」
ワア…ぱちぱちぱちぱち…周囲から拍手と歓声が上がる
「うむ。では続けて財務局より、今回の報酬の説明をせよ」
この上報酬か…もう働かなくていいんじゃ…
「はっ!かしこまりました!財務局より説明させて頂きます」
財務局局長が返事をする。
財務局局長ガッツ・フォン・ギューネイ侯爵である。
そして部下らしき人物が説明に入る。
「まずは今回の報酬は全てテンカワ男爵家への報酬となり。同行者への分配はテンカワ男爵殿から行うようにお願い致します。」
もとからそういう話だったしな…
「では見つかった魔道具は王国が買い取る事となっております。テンカワ男爵への分配品は魔法武器10本、魔法服10種類3着づつで30着、転移魔道具2機、その他魔道具10品となります。別途報酬金としての報酬額は8億4000万レンになります」
は、は、8億!!やべえもう無職でいいんじゃないか…!
「えっ!あっ、ありがとうございます!」
なんとか返事をする。
「ふむ、少し安くないか?ギューネイ卿よ」
ギューネイ卿がすこしビクッとしたのをオレは見逃さなかった…
「い、いえ。そんなことは…」
「あれだけの魔道具に魔法武器、魔法人形制御装置に魔法人形。もっと報酬をあげてもよかろう。そうだな…10億レン丁度にしてはどうか?」
「い、いや、それは多すぎであります!」
「そうか?魔法人形は警備隊への編入により警備隊の予算も減らすことができる、武器も多数ある、今回見つかった魔道具を研究し活用すれば各局の予算も減らせる。問題なかろう」
「はっ!御意に…報酬額10億レンにさせて頂きます!」
報酬が上がってしまった…
こうして多額の報酬と魔道具、そして爵位を貰ってしまったのだった…
まぁでも家にもいれないといけないので全部貰うわけにもいかないが…
「私とアルーゼの分は全てルナス様で管理してください。」
実家に戻り報酬の分配の話を切り出すとレレーナが言ってきた。
「しかし…いいのか。かなりの金額だぞ?」
「私たちは、ルナス様の嫁になるのです。大丈夫ですよ」
むぅ…やっぱそうなるのね…
「10億か…実家に1~2億で残りを5分割すると一人1億以上…」
と一人でぶつぶつ言っていると…
「おーい、おれ達そんなにいらねえぞ」
アレスが言ってくる。
「魔法武器ももらったし…そうだな2人で1億ももらえれば十分だ」
「そうね。ルナスの功績だし、それに…」
オレの取り分が増えていってるんだが…
それに…の後が気になるが今は聞かないでおこう…
「そうか…わかった…」
なんか釈然としないが、2人がいいと言うのならいいのだろう…
次はハルト兄さんか…
「失礼します」
念のため敬語で挨拶をしハルト兄さんの部屋にはいる。
「ルナスか…いやもうテンカワ男爵か…」
少しにやつきながら兄が返事をする…
そうだった…男爵になったんだった…
「今回の実家の取り分なんだけど…」
「ふむ、そうだな。うちはいらないぞ」
「えっ?なんでだよ?」
「侯爵家に陞爵したしな。それにお前、分離独立したんだから男爵家らしく家臣もとらないといけないし、家も買わないといけないだろうし、結婚もするんだろ」
…家臣だと…そして家…
家はわかる…嫁さん2人もくるし…家臣って…まためんどくせえなぁ…
「えええぇ。貴族の当主ってめんどくさいんだな…」
「領地持ちよりはマシだ。結婚式は早めにしろよ。家は探しといてやるから」
兄に礼を言って部屋をでる…
そしてみんなのもとにもどるとアレスが声をかけてきた。
「どうなった?」
「家には金いれないでいいから、家買って、家臣雇え言われたわ…」
と返事をするとアレスとリリがニヤッと笑った。
「そうか。じゃあオレとリリを雇ってくれるよな」
こいつらもとからそのつもりだったな…
「わかった。好きにしろよ…」
「ありがと。ルナス」
ルルが笑顔で返事をした。
しかし今回の依頼を終えてしまったため、貴族ではあるが職業は冒険者である。
家と家臣の給金と貴族としての生活費…
当分は大丈夫だがやっぱり稼がないといけないのであった…