07.【閑話】それは、私ではありません[エレナ]
「あれは、一年生?」
仲良く歩くアリアーネ様とクライシス様を見送っていると、入れ替わるようにサージスが来て、私の隣の椅子に座った。
「そうです、確かお二人共、第三クラスだと思いますわ」
「エレナちゃん、二人の事知ってたの?」
「名前を聞けば、だいたいクラスは分かります」
一年生の名前とクラスは、入学前に覚えていた。
顔はさすがに分からなかったけどね。
「さすがだねぇ」
「そうだ!サージス、私の事絶対にエレって愛称で呼ばないでくださいね」
「え、いつかは呼べると思ってたんだけど。ダメ?」
「絶対にダメです。エレーナ様って、私と顔が似てるご令嬢なんですが、手紙に自分の事を"エレ"って書いてたの。彼女と一緒の愛称を呼ばれるのは嫌だわ」
「あー、あの子ね。エレナちゃんに似てるかな?全然違うと思うけどね」
「そう?間違えたりしない?」
「僕は絶対に間違えたりしないよ。でもそうだな、同じが嫌なら愛称変えちゃおうか」
「何て?」
「レナ」
「!!?」
「レナちゃん、でどう?」
「い……いいと思う……」
「僕が『レナ』って呼べるようになるまで、皆には内緒だよ」
そう言って、彼は悪戯っぽく笑った。
子供の頃の彼は、どちらかというと大人しくて、思慮深くて知的な雰囲気だった。
学園で再会した彼は、とても社交的で常に人の中心にいて、私はその中には入れないなと思った。
でも、優しい所と笑顔は変わっていなくて安心した。
私にしてくれた告白は、本気だったのかな?
好きな人に、あんなに簡単に告白できるものなのかな?
私には、よく分からなかった。