30.【閑話】貴方を信じてもいいですか?[エレナ]
自分の加護の事を調べる為に読んだ本の中に、【深淵の森に住む少女】があった。
伯爵令嬢シャルロッテ様のお気に入りの本で、彼女はこの物語に出てくるライオス王子が大好きだと言っていた。
主人公は、加護の力を持つ少女ティアナ。
少女の育つ村には、星の神アストと流れ星の巫女セレが祀られた祠がある。
村で生まれた子供は、十五の歳になるまでに流れ星を見つけると、流れ星の加護を得る事ができるという。
ただ、村から出るとその力は失われてしまうと書かれていた。
少女は、土地による枷に囚われていた。
ライオスとティアナは、運命に導かれるように、その村で出会い恋に落ちた。
けれど、後々王席を抜けるとはいえ、辺境伯を賜る予定の第四王子と、村から出ると加護を失う少女が結ばれるのは、身分差以上に難しいものがあった。
でも、それを全て乗り越えて、二人は結ばれるのだ。
そんな夢のような事が現実にあるわけがない。
物語の中だから……。
そう思っていたけれど、この物語は多少の脚色はあるものの、実話だと知る。
スワリエ侯爵領にある魔の森と、この物語で語られる深淵の森は同じ森で、隣国側にある獣道を通ると、実際に村にたどり着くらしい。
現在は、外から入る事が出来るのは、年に四回、その村専属の流星商会の行商のみ。
今アイルテール王国で取り引きされている守護石は、その商会からこちらの国に入ってくるのだと聞いた。
この奇跡のような二人は実在した。
加護の力を悪用せずに、ティアナ自身を愛したライオス。
加護の枷から解放されて、愛する人と幸せになったティアナ。
こんな素敵恋ができるなら、人を愛してもいいのかもしれない。
私も恋していいですか?
人を愛していいのでしょうか?
貴方を信じてもいいですか?
私はサージスを信じてみようと思います。




