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私も恋していいですか?  作者: ぽち焼きタマゴ
第4章 ホワイトデイ
20/30

20.一度話し合う必要がありそうだ

 今日はバレンスイートの一室で、ホワイトデイのイベントの打ち合わせが行われていた。



「ホワイトデイか、またエレナ様は面白い事を考えますね」


「今回の発案者は、サージスなのよ。だから"ホワイト"デイと名付けたの」


「あぁ、ホワイトって坊ちゃんの髪色ですか」


「サム、サージス様の事まだ坊ちゃんって呼んでるの?やめてあげなさいよ。泣いちゃうわよ」


「キャスリンこそ、子供扱いしてないか?坊ちゃんが泣いていたのなんて五歳頃までの話だろ?」



 キャスリンとサム、二人が揃うと必ずサージスの昔話が始まる。

 彼らはサージスの事を幼い頃から知っていた。


 今は男爵家で働いているけど、二人は元々スワリエ侯爵家の料理人兼兵士だった。

 侯爵領の住民は非戦闘員は子供だけだ。

 料理人も有事の際は兵士になる。

 そして、怪我をして戦えなくなると、男爵領に職を探しに来るのだ。


 男爵領で作られる作物の半分は、侯爵領に納品している。

 だから、戦えなくなっても男爵家で働く事で、彼らは外から故郷に残る人達を支えていた。



「ホワイトデイ用のお菓子作りですか、バレン・タインデイの時と種類は変えた方がいいですね」



 サムは料理人だったけど、お菓子作りも好きで、孤児院の子供達に差し入れしている所を私がスカウトした。

 一年間バレンスイートで修行して、最近タインスイートの店長になった。



「バレン・タインデイでいっぱい告白とお菓子を貰った子は、断るのが大変そうね」



 キャスリンは、元々菓子職人で、キラキラ輝く宝石や綺麗な花束のような、見ても楽しめるお菓子を作るのが得意だった。

 弟子を育てながら、バレンスイートの店長として腕を振るっている。



「お菓子を四種類にして、それぞれに意味を込めましょうか。お菓子を渡しただけで返事になるように」


「好きな人にお返しする時は、何でもいいんじゃないかしら?」


「そうだな、男なら好きな子には直接渡して言葉で伝えるべきでしょう」


「では、好きな方への贈り物には、可愛いアクセサリーや花を添えて渡すというのはどうでしょう」


「いいわね!私も欲しいわ」


「お前誰かにバレン・タインにお菓子を贈ったのか?」


「サム、あの日私の新作ケーキ食べたわよね?」


「あれは試食だろ?」


「お菓子はお菓子でしょ、期待してるわよ」


「まじか」



 お返しに他の物を付けるのは、好きな人にだけなんだけど。

 と思ったけど、あえて言わなかった。

 二人とも仲がいいな。



「お菓子だけ渡されたら、告白した子は振られたって事でいいのかしら?」


「そんなに、キッパリ気持ちの振り分けはできないだろ。友達として仲良くしたいって奴もいるだろうし」


「優柔不断ねぇ」


「友達から恋人になる事もあるだろう」


「確かに学生の間は、チャンスがあるなら潰さなくてもいいのかもしれませんね」



 私達は、ホワイトデイに販売するお菓子を選んで、それぞれのお菓子の意味を考えた。



「マドレーヌは少し特別で『仲良くなりたい』でいいだろ」


「クッキーはよくあるお菓子だから『友達』かしら」


「ホワイトチョコレートは、『もう少し考えさせて』ですかね?」


「普通のチョコレート返されたら、『興味なし』だね!」



 いつのまにか部屋に居たロイズが、話しに入ってきた。



「そうだな、全く興味を持たれてないなら、それもはっきり伝えてあげないと次に行けないよな」


「そーでしょ?友達はまだ好意を感じるもんね。可能性が全くないなら、バッサリ振ってあげないと」


「ロイズちゃん、いい事言うわぁ。お姉さんのお店に来ない? 可愛い制服着せてあげるわよ」


「キャス姉の可愛い衣装は、動きにくそうだから遠慮しとく。タインスイートの制服も動物耳の帽子だから、かなり可愛いぞ」


「ロイズは、可愛い制服が着たいの?」


「別に、お客様に好評なら何でも着るけど」


「サム!ロイズちゃんを、うちにちょうだい!」


「ダメだ、俺はキャスの魔の手からロイズを守ると決めている」


「そんなに酷い事はしないわよ!ちょっと可愛い、フワフワした服を着て接客してもらうだけ」


「それをやめろ!」



 キャスリンとサムの言い合いをら聞きながら、私はお菓子と一緒に販売する品物の事を考えていた。



「ミリィの家の雑貨屋で、手頃な価格のアクセサリーを取り扱っていたわね、相談してみようかしら」


「花はマリちゃんの家に頼めばいいよな」


「ロイズは、マリを知っているの?」


「バレン・タインのチョコレート作りの時にね。ミリィちゃんにも挨拶したよ。今度タインスイートに遊びに来てくれるって」


「さすが、売上トップの店員さんね」


「いやいや、お嬢ほどではないよ」


「彼女達の家のお客様を奪わない為にも、商品は直接仕入れないで、雑貨店と花屋を通して納品してもらったほうがいいわね」


「お店の宣伝をしてあげれば、少し安く仕入れる事が出来るんじゃない?」


「いいわね!相談してみるわ。でも高位の貴族の方は、好きな人には、もっと高価な品をお返ししたいと思うかもしれないわね」


「まぁ、そこまで気にしなくていいんじゃない?」


「それもそうね、あくまで学生達の恋を応援する為のイベントだから、学生でも買える物で考えてみるわ」



 ホワイトデイの打ち合わせがある程度終わった所で、ロイズが申し訳なさそうな顔をして私に言った。



「お嬢、ごめんな。エレーナ嬢が大量にチョコレートを買ったの俺知ってたんだ」


「え?!」


「タインスイートにチョコレート買いに来たんだ。でも、友達に配るって言ってたから、まさか男友達だとは思わなくてさ。普通に売っちゃった」


「友達として贈ったのに、相手にそれが伝わらなかったのね」


「メッセージカードに何て書いたんだろうな?」


「何となく予想はつくわ」


「もっと誰に渡すのか、詳しく聞けばよかった」


「それは仕方ないわよ。それより、エレーナ様が、チョコレートを何個買ったのか分かる?」


「チョコ三十個にカップケーキが一個だよ。カップケーキは、好きな人に渡すみたいだった」


「半分くらいの方が、間違えて私にお返しを贈ってきたのね」



 そもそも、友達や好きな人に、プレゼントを直接手渡さない人がいるのは想定外だった。

 私の予想外の事をするエレーナ様。

 手紙に書く名前の件も含めて、一度話し合う必要がありそうだ。

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