16.【閑話】それは、キット気のせいよ![ロイズ]
学園の中庭のベンチに座ってメッセージカードを眺める、サージスを見つけた。
「おーぃ、サージス何見てるんだ?」
「んー、ロイズ来てたの?」
俺は孤児だが、元は侯爵領に住んでいて、両親は魔術師で侯爵家に仕えていた。
男爵領にある孤児院にいた同年代の奴らはみんな幼馴染だ。
そして、侯爵子息であるサージスとも兄弟のように育った。
「昨日お嬢に呼ばれてな、氷の魔石を貸したんだ、その回収と報酬の受け取り」
「そうなんだ、昨日ってチョコレート作りの時なにかあった?」
「チョコレート冷やす場所がなくなったんだと」
「あぁ、だから氷の魔石か」
「そ、で?さっきから何ニヤニヤしてんだよ」
「エレナちゃんからチョコレート貰ったんだけどさ、エレナちゃんの友達の言葉と、幸運にも引き当てたこのメッセージに幸せ感じてた」
良かったぁぁぁ!
とりあえず、俺の予想通りの展開になって安堵した。
お嬢、女友達とチョコレート交換出来るのが嬉しすぎて、絶対サージスの準備してないと思ったんだよな。
だから、俺は今回の報酬に『多めにチョコレート作っといて』とお願いしておいた『余ったら俺が全部もらうから』と言う事によって、多分一袋以上余分に作ったはずだ。
他に渡したい人ができても、俺の分を気にせず誰かに渡せるくらい。
「チョコレート貰えたんだ、良かったな」
「ありがとう、エレナちゃんの友達が言うには、手作りチョコレートを気軽に渡せるくらい僕はエレナちゃんと親しくて、信頼し合ってるんだって」
「なるほどな、お嬢の友達いい子だなぁ」
「あと、頑張ってって応援された」
「いや、まじでそれな。本当にサージス頑張れ。俺達もお嬢の幸せ願ってるから」
「頑張ります」
「おぅ!さて、報酬の一つは今貰ったから、余りを受け取りに行ってくる。じゃあな」
俺の言葉に、サージスは不思議そうな顔をしていた。
一つ目の報酬は、嬉しそうな幼馴染を見る事。
なんて、さすがにサージスでも気付かないだろう。
今から受け取りに行く、お嬢が作ってくれた報酬のチョコレートは、みんなで分けて食べるから許してくれよな。




