15.【閑話】それは、キット気のせいよ![サージス]
『その恋、私が応援いたしましょう』
【閑話】とほぼ同じ内容です。
バレン・タインデイの話を聞いた時、多分僕は貰えないだろうな、と思いながらも当日エレナを探していた。
僕は彼女に一度告白しているけど、本気にされていない。
原因は僕の軽い言動にある。
本気なんだけどな。
まぁ、昔の僕を知っていれば、今の僕の言葉はふざけていると思われていても仕方がないけど。
ただ、人脈を広げる為には、明るくて軽くて話しかけやすい、相手を油断させて警戒されない。
そんな僕が、学園の中では必要だった。
中庭のベンチで空を見上げるエレナを見つけた。
そして、エレナからチョコレートを貰った。
友達にあげた余りだという事は分かっている。
それでも嬉しい。
メッセージカードには、「大好きです」って書いてあった。
友達には素直に好意を伝えるんだな、と少し羨ましく思ったけど、このカードを引き当てたのは僕だ。
家宝にします。
「エレナ!受け取ってもらえたよ!」
「マリ、よかったわね」
「私も、名前を覚えてもらえました」
「そう、ミリィ頑張ったわね」
エレナのクラスの友達が、結果を報告しに来たみたいだ。
僕は二人にベンチを譲って、後ろのテーブル席で見守る。
エレナが楽しそうで良かった。
貰ったチョコレートのラッピングをほどいて、中のチョコレートを一つ食べた。
幸せです。
幸せを噛み締めていると、エレナにマリと呼ばれていた子がニコニコしながら近付いてきた。
「サージス様、そのチョコレート、エレナから貰ったんですか?」
「そうだよ、君達にあげた余りを僕に恵んでくれたんだよ、エレナちゃんは優しいよね」
「なるほど、なるほど」
僕の返事を聞いて、何故かニヤニヤ笑いになった。
「どうしたの?」
「いえ、エレナが言ってたんですよ、手作りのチョコは安全性の問題で貴族の方にあげる時は、よほど親しくないと受け取ってもらえないから、お互い信頼できるようになるまで渡してはいけないって」
「え?」
「だから、エレナとサージス様は、とても親しくて信頼し合ってるんだな、と思って」
「え、本当に?」
「少なくとも、エレナにとって、無意識にチョコレートを渡せてしまう相手って事ですね」
「う……嬉しいです」
「サージス様、頑張ってくださいね。私達エレナにも幸せになってもらいたいので」
そう言って、彼女はエレナ達の所に戻って行った。
僕は机に肘をついて、火照る顔を手で覆った。
嬉しくて胸が熱くなる。
そして、誰も聞いていないけど、真面目な言葉で呟いた。
「エレナ、大好きだよ」




