12.前編 その恋、私が応援いたしましょう
『その恋、私が応援いたしましょう』
連載用に加筆修正したものです。
「私は好きな人が居るんですが、なかなか告白できなくて」
「みな平等に恋愛できると言われても、どうすればいいのか分からないんです」
今日はクラスメイトをランチに誘い、クロニア男爵家が王都に出店しているスイーツ店の新商品の試食をしてもらっていた。
平民向けの価格で質の良い商品を提供する為に、新たにオープンした『タインスイート』の新商品なので、花屋の娘マリと雑貨店の娘ミリィに試食をお願いした。
一通り試食した感想をもらった所で、マリが恋愛相談を始めたのだ。
「マリは好きな人が居るのね」
「はい!隣のクラスのクロア様が好きなんです。何度かお話させてもらった事はあるんですが、親しくなるにはどうしたらいいのか分からなくて」
「なるほど……。ミリィは好きな人はまだいないの?」
「はい、素敵だなと思う人は何人かいるんですが、話すキッカケがないので、遠くから見ているだけです」
みんなキッカケが欲しいのね。
王立ストアール学園では、爵位に関係なく自由に恋愛する事が認められているけれど、他のクラスや学年の生徒と交流できるような、出会いの場がなかった。
「キッカケね……。もし、今試食してもらったスイーツを可愛くラッピングして好きな人に渡して告白する。みたいなイベントを企画したら、みんな利用してくれるかしら?」
「参加したいです!お店のイベントになれば、告白しやすいと思います」
「素敵なイベントですけど、面識のない人にいきなり告白する勇気はありませんね」
マリは告白したい相手がいるので乗り気だが、ミリィはまずは知り合う所からなので告白は難しそうだった。
「では、恋愛の告白だけじゃなくて、知り合いたい、友達になりたい、など色々な意味を持たせてメッセージカードで想いを伝える。なんてどうかしら?」
「いいですね!メッセージカードを添えるなら、両親や先生、お世話になった人に、普段なかなか言えない感謝の気持ちを伝えるのにも使えそうです」
「お友達になりたい女の子同士で、交換できると、交友関係が広がるキッカケになるかもしれませんね」
それなら、貴族でも需要があるかもしれないわ。
彼女達の話を聞いて、私は貴族向けの店舗と合同でイベントを開催する事を決めた。
父からの許可はすぐに出たので、二つの店舗の代表、サムとキャスリンを呼んで話を詰める。
チョコレート菓子をメインに、クッキーやカップケーキをデコレーションして可愛くラッピングした物を売り出す事にした。
高級店『バレンスイート』は、貴族のお嬢様がお小遣いで買える物から、奥様方がお茶会に出せる品まで揃えた。
庶民向けのお店『タインスイート』は、子供のお小遣いで買える物から、ちょっと特別感のある物を手頃な価格で揃えた。
それと、チョコレートを溶かして好きな型に入れて自分で作れる物も型と板チョコなどんセットにして用意した。
ただし、渡す相手が貴族令息の場合は、よほど親しくなければ手作りの食べ物は安全性の問題で受け取ってもらえないので、友達同士で交換するのがお勧め。と注意書きがしてある。
各店舗の宣伝と、学園内での口コミでかなり情報が広まった。
イベントの開催日は、一週間後の二月十四日。
当日は予約商品の販売のみで、すでに注文が殺到していた。
あとは、イベント前日に友達と交換するチョコレートを作るだけだ。
私は残りの準備に取り掛かった。




