10.【閑話】確かな友情が芽生えました[ルカリオ]
久しぶりに、シャルの友達にと認めた彼女は、とても俺に似ていた。
警戒心が強い所、内に入れた者には甘い所、話の組み立て方、物事の考え方、情報収集能力は俺以上かもしれない。
しかも、考えている事がここまで読めるのも珍しい。
まぁ、彼女も俺の考えを俺以上に理解しているみたいだからお互い様だけどな。
俺とあそこまで言い合える奴もそういない。
同性なら間違いなく、気の合う親友になれたと思う。
あと、恋愛に関して他人の事には聡いのに、自分の事はよくわからない所。
俺から見える位置にいて、ずっと俺達の事を見ていた彼。
彼女が俺に笑いかけた時に睨まれたが、あとは冷静に見守っていた。
俺が無害だと分かっているからか、彼女の為に話の邪魔をしなかった。
彼の方は、明らかに彼女の事が好きなんだと分かる。
そして、彼女も俺が『王子様』と言った時、辺りを見回して一瞬彼に目を止めて笑った。
それなのに、『王子様』とは結びつかなかったのか困惑していた。
無自覚か、相当拗らせていそうだな。
俺も昔そうだったから分かる。
相手の気持ちも、自分の気持ちも深読みしすぎて素直になれないんだ。
俺の助言を思い出して、彼に素直に気持ちを伝えたら、きっと上手くいくだろう。
「ルカ、ごめんね。本選びすぎちゃった」
「大丈夫、俺が全部持ってあげるから」
「あ、待って、この本は私が持つから」
そう言ってシャルが大事そうに抱えた本は、【深淵の森に住む少女】シャルのお気に入りの本だ。
いつものように、俺は機嫌が悪くなる。
その時、彼女の言葉を思い出した。
『ちゃんと愛されているんですから、物語の中の人に嫉妬しないで下さいね』
ーーそうだな、善処しよう。
そう考えて、思わず笑ってしまった。
「ルカ、どうしたの?何だが楽しそうね」
「いや、なんでもないよ。シャルは可愛いね、好きだよ」
俺の素直な言葉に、シャルは嬉しそうに笑った。
「私もルカの事大好きよ!」
本を机に置いて、シャルは俺に近寄り抱きついた。
なるほど、嫉妬をして彼女を悲しませるより、想いを伝えて笑顔をもらえる方がいいな。
貴重な助言をしてくれた事に感謝する。
そして、自分の事に不器用な友人の幸せを心から願うよ。




