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プロローグ
_こんなに必死になって走ったのはいつ以来だろうか、
重くなり縺れる足を前に出し、だるさとともに上がらなくなる腕をそれでも振りあげる
肺が燃えているようにとても熱く感じ、口の中は鉄の味がした
もう限界のはずなのに、私は足を止められない
止めてしまえば楽になるのに、こんなに苦しい思いをしてまでどうして私は…__
…そんなの、理由は1つしかない
ただ、あの人を失いたくないだけだ
(間に合えっ…間に合え!!!)
汗と涙で顔はぐしゃぐしゃで、身体の限界を知らせるように節々の感覚が鈍り、痛みさえ感じなくなった
今すぐ足を止めたい、休みたい、やめてしまいたい
_もう、疲れた、
下を向きかけたその時、やっと私はあの人を見つけた
_事件が起こるまで残り僅か、
私の手は、ようやくその背中に触れることができた