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アプローチの仕方?

 俺はベッドの上で作業をしている彼に聞いた。


「家森先生、面談は?」


「……終わりました。資料をまとめる作業は今しています。ヒイロに覗かれてはいけないので……距離は取ってますよ。」


 ああなるほど、だからヒーたんは今までテーブルのとこでPC使って作曲してたんや。俺は言った。


「あんたらいつも一緒におるなぁ……」


 家森先生を見ないように背を向けてベッドに座ったヒーたんが静かに言った。


「……さっきメールでは今日は会えないって家森先生が言ってたんですけどね。やっぱり会いたいって来ちゃったんだもうええ!?何ですか!?」


 ざっくばらんに話すヒーたんの背中に家森先生の綺麗な素足のつま先がちょんとヒットした。俺だったらもっと豪快に蹴られてたと思うで。ええなあ大切にされて。


 そして次に家森先生は照れ隠しなのか俺のこと睨んできはった。ヘーンごまかせてませんよー。


「……ヒイロ、少し足で突いたことは謝ります。高崎は何の用ですか?分かりますよね、テスト期間中彼女と会ってなかったんです。邪魔しないで頂きたい。」


「ふーんそうですかー。でも今日は月曜やのに。会うのは確か、火曜やなかったっけ?」


 俺の言葉に二人がギュンとこっちを向いた。ヒッヒッヒ。


「どうしてそのことを?」


 そう聞いてきた家森先生に俺はしーっと人差し指を口に当てた。


「それは秘密や。とにかく二人して協力して欲しいねん!お願いね!」


 ヒーたんが訳が分からないといった様子で首をかしげる。


「いいけど何に?」


 家森先生は興味ないのかまたカタカタとPCをタイピングし始めた。まあヒーたんが協力してくれるってことは彼も協力してくれるってことやからええわ。


「……俺な、実は。俺な、ヒーたん……」


 ああ何でや。彼女のことを話そうとするだけでこうなるなんて。


「俺……実は……「高崎、ヒイロは僕のものです」


 ……。


 何を誤解してんねん。俺は声を荒らげた。


「知ってますて!この前の朝、見たんやから!」


「え?何を……どこで?」


 恐る恐る聞いてきたヒーたんが面白くてつい笑ってもうた。俺は話した。


「そんなきょどる?こないだの朝見たよ、家森先生の部屋の玄関のとこでキスしてんのを。クックク!」


「……もう玄関でやらない」


 ヒーたんが顔を真っ赤にして俯いてしまった。次に家森先生の方を見ると彼はヒーたんがやらないって言ったことに不満を持ったのかちょっとムッとしながらヒーたんのことを見てた。もうこの二人は見てて飽きないわ。


 あ。家森先生と目が合った。俺のことめっちゃ睨んでる。まあそうよね、俺が言ったからヒーたんが玄関でキスしてくれんようになってしまったんやから。


「……それで実は何です?」


 ああ。俺は座り直して息を整える。


「俺…………もう彼女への愛を止められへんねん。そう!俺はもう、俺はもう……ベラ先生が好きやねん!」


「えぇぇぇえー!?まじですか!?」


 ヒーたんが驚きと笑いが混じった顔で見てくる。俺は何度も頷く。


「まじや。こないだベラ先生の部屋にお邪魔した時に無理矢……いや普通にお酒を二人で飲んでな。案の定、俺あかんかったんやけど、彼女が看病してくれはって、一緒に過ごしていくうちに……こんなに好きになってしもた。せやから協力して!ヒーたんは彼女のクラスやし、家森先生は彼女の上司兼親友でしょ!?」


 うーんと唸る家森先生、PCを操作する手を止めて思案顔になった。


「しかし彼女はゲイだと。」


「性転換するの?」


 ヒーたんの突拍子もない質問に俺は笑った。


「何でや!せーへんて!めっちゃむずいけどそれ無しで俺のとこ来てくれる方法考えてやー!アンタら付き合ってるんやろ?ヒーたん、先輩として俺に好きな人と付き合えるコツ教えてよ!」


「え?付き合ってないですよ?」


「えっ!?え!?」


 え?


 ……やば。見たことないぐらいにめっちゃ家森先生がテンパってる。あかんぞ俺、笑うな俺。このタイミングのハハハはあかん。絶対に死ぬで。


 ああ……なるほどな。家森先生はもうお付き合いしてると思ってたんや……まあキスしたり束縛したりあれだけの状況になってるのに、ヒーたんは付き合ってると思ってなかったんやからそうなるか。クックック!


 ヒーたんが頭の上にはてなマークを乗っけたまま言った。


「まあでもどうしたらいいんでしょうね。うーん、あ!そうだ!ベラ先生に好きな人のタイプ聞いてみればいいんですよ!」


 パッと笑顔になったヒーたん。確かにそれはいいかも!


「お!聞いて!今すぐ聞いて!」


「今?わ、わかりました……」


 ヒーたんがお尻のポケットから携帯を取り出してメールを作成し始めた。俺はちょっと家森先生の様子を見ると、彼はヒーたんの背中をチラチラ見て何か言いたげだった。まあそうなるよね……ヒッヒッヒ!


「送信しましたよ。なんかドキドキしますね!」


「せやね。家森先生はちゃうみたいやけど……イッタァ!」


 ベッドに座った俺の背中を家森先生が思いっきり蹴ってきた。ヒーたんとの違いがいちじるしすぎるし、かかとが背骨にクリーンヒットしてめっちゃ痛い!もう俺に当らんといてよ!


「……ヒイロ」


「はい?」


「後でお話が」


「え?はい……あ!来ましたよ!」


 さっきからヒーたんのスルースキルがやばい。ツボりそう。でももうこれ以上痛い思いしたくないから俺は笑わんもん。にやけちゃうけど。


 そして彼女がメール画面を見せてくれた。


 ____________

 いきなりそういうこと

 聞くなんて珍しいわね。

 ふふっ、そうねぇ

 明るくて私にはない

 ユーモアを持っていて、

 癒してくれるような

 受容的な雰囲気もあって、

 可愛らしい女性かしら。

 家森くんに飽きたら

 私のところに来ても

 いいのよ?

 ベラ

 ____________


 ……。


 ……。


 読み終わった俺はヒーたんの携帯を俺に向かって手を伸ばしてきた家森先生に渡した。すぐにその文章が気になったのか彼の眉がピクッと揺れた。


「……何でやねん。何でや。アンタ今モテ期か?」


「そ、それは知らない……でもホラ!明るいとユーモアと受容的な雰囲気ってタライさんに合ってる!押したらいけますよ!」


 俺はヒーたんの肩をベシッと叩いた。


「行けるかい!女って断言してるやんか!」


 ヒーたんは口を尖らした。


「うーん……じゃあ外見だけでも中性的にするとか。」


「ああ確かにそれはええな……この髪型やめるか。」


 俺はアシメの黒髪を指で触った。確かに、もうちょっと髪伸ばして、中性的を目指すってのはいいかもな。男の部分をなるべく消してったらチャンスあるかもしれんし。


「あとは家森先生が遠回しにベラ先生にタライさんの魅力をほのめかすとか。」


 ヒーたんの言葉に家森先生が、はあとため息を吐いた。


「僕がですか?なぜそんなことを……」


「だってこのままじゃタライさん食べれなくてもっとガリガリになりますよ?あれ?でもなんかタライさん筋肉増えました?」


「実は最近……毎朝ベラ先生とジムに行ってんねん。」


 ヒーたんが驚いた顔をした。


「えええ!仲良い!どんな話するんですか?」


 どんな?確かに分からんなぁ……俺は髪をかき上げながら考えた。


「どんな話やろ。学園のこととか、筋肉の話やな。まあ仲はいいかもしれんけどその先が難しい。性別の壁は乗り越えんとあかんし。ほんでヒーたん達はどっちから告白して付き合ったん?」


「ですから付き合ってませんよ?」


「……。」


 彼女がそう答える度に家森先生がムッとする。クックック!この質問面白すぎて何回でもしたくなるわ。


 ヒーたんが家森先生の方を向いた。


「ねえ家森先生、ベラ先生にほのめかしてください。」


 またそのスルースキルがツボる。やめて。


「……仕方ありませんか。どうなるかは分かりませんが、職員室にいる時間が被れば明日にでもそうしてみますよ。」


 えええ!?家森先生天使なん!?

 なるほどな……なんだかんだ優しいもんな。前だって俺の彼女のこと黙っててくれたし。そうなると俺が敵わんかったのも分かる気がするわ。


 今はベラ先生が好きやけど……そうや、家森先生のやり方を参考にして彼女にメール送ってみようかな。送ってもしゃあないかな。俺は家森先生に聞いた。


「家森先生っていつもどういうスタンスでメール送りまくるん?」


 イッテェ……彼にプチ蹴りされた。


「どうとは……そんなに僕は頻繁ですか?」


「まあ比較的そうかと。元気?とかです?」


 ヒーたんが答えた。


「元気?とか何してる?とか今帰ったとか会いたいとかですよ。」


「なるほどな!それや!俺も送ろ……」


 よっしゃ!俺は早速メールを作成することにした。その間に視界の端でヒーたんが家森先生に足で突かれたのが見えた。


 ____________

 何してはります?

 何だかベラ先生に

 会いたいです!

 タライ

 ____________


 ああどうかな〜……こんなん中学の時以来やで。いくつになっても人ってこういう気持ち持てるんやね。ふふっ!


 俺が送ったメールをヒーたんにも見せたところで返事が来た。彼女と一緒に見る。


 ____________

 何って今日の面談の

 資料に変更点が出たから

 まだ職員室にいるわよ。

 明日の朝会うじゃないの

 ベラ

 ____________


「なんか普通に返されたんやけど……家森先生、これでどうしたらいいの?」


 俺は家森先生にもメールを見せた。彼はつまんなそうな顔してメールのやり取りを見た後に、俺に携帯を返しながら言った。


「……それはそうだが待てない、とでも申せばあるいは。」


「なるほどです!」


 ____________

 待てません

 タライ

 ____________


 これは決まったやろ!こい!こいこいメール!

 するとすぐに返事が来た。


 ____________

 …ヒイロに言いなさいよ

 忙しいからまたね

 ベラ

 ____________


 ……。


 俺は静かに携帯をヒーたんに渡した。


「終わった。何でや。何でやねん!もううどん食うしかない……ちょっとみんなでうどん食べましょ」


 ヒーたんがキョトンとした顔で見てきた。


「え?今日ここでお夕飯食べるの?」


「あかんのか?俺はもう一人じゃ何も食べられへんねんあ!?何!?ちょっと!」


 いきなり家森先生が俺の背中を押してきはった。しかもグイグイと玄関の方へ導こうとしてる!


「何でや!ここ家森先生の部屋ちゃいますやんか!そんな身勝手な振る舞い許されませんて!」


「いいから出て行きなさい!彼女に大切な話がある。」


「そんなん!俺がいても話せるやん!なあヒーたん!あんた家森先生が彼氏でええやん!な!今日は俺を一人にせんといて!」


「違いますって……」


 何でヒーたんもそうかたくななん?……俺を助けてくれてもええやん。


 そんな想いは誰にも届かず、俺は家森先生に真顔で彼女の部屋から廊下に追い出されてしまった。家森先生が玄関のドアノブに手を掛けたまま俺に聞いてきた。


「ところで金曜の面談ですが、やはり親御さんは来られないと?」


「ああはいそうですね。連絡遅くなってすみません。部屋に入れてください。今日は3人で一緒に仲良く過ごしましょうよ。」


「そうですか。」


 ドアをバタンと閉められた。


 冷たっ……なんなん家森先生とか。聞くだけ聞いといて。まあそれは俺が伝え忘れてたんが悪かったんやけど。


 もういいもん……。


 頬を膨らまして廊下を歩いていると、階段からリュウが上がってきたのが見えた。俺はすかさず声をかける。


「おい!」


 リュウが振り返って笑顔になってくれた。


「あれ?タライさんじゃん!ちょうどよかった世紀末ランズ一緒にやりません?」


「おー!やるやる!今日泊めて!」


「え〜いいですよ」


 ああよかった。リュウがいてくれて。ヒーたんは優しいけどその隣にくっついてる魔王様が問題なんや。全くヒーたんの優しさを気に入って独り占めしやがってあいつめ……もう今日はリュウと世紀末ランズして騒ご。


「はいどうぞ!」


 ガチャ


 ……。


 リュウの部屋は汚かった。俺はまず掃除する事にした。

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