↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/105

家森の提案

 ヒイロの部屋からの帰り道で僕は真っ直ぐに調合室へ向かった。全く、一体ヒイロに何があってあんなことに……もう思考が追いつかないほどに僕は動揺している。


 まさか、彼女がそんなに遊んでいるとは思わなかった。彼女に話した通り、僕が言える立場ではない。しかしこの1、2年は僕だって生徒の誰とも付き合わずに教師の仕事を真摯しんしに取り組んできたのだ。


 だからこそなのかもしれない。人は自分の中から消した部分を持つ相手を見ると嫌悪感を感じるものだ。だからと言ってヒイロを完全に嫌いになれるか、それは分からなかった。


 廊下をスタスタと歩いていく。早く、早く。もつれるくらいに早歩きをしてようやく調合室の扉を開けると、中には僕の担当する有機魔法学の専攻の生徒達の補習を指示した生徒たちが居て、僕に驚きの視線を向けた。


 誰もサボっている生徒がいないことを確認して少し安心すると部屋に入り、一番奥の調合台で背を向けながら薬草を煮詰めている生徒の肩をポンポンと叩いた。


「高崎、ちょっと」


 彼は振り返ると驚きの表情をした。


「あお!?家森先生……今日は実習で、薬草煎じたら職員室に提出でしたよね?」


「そうですが、ちょっと」


 僕が彼を手招くと怪訝な表情をしながら彼はランプの火を止めた。周りの生徒がクスクスと高崎がまた何かしでかしたのだろうと笑っているのが聞こえてきた。


「皆さん、これまで何度も手元から目を離さないでくださいと言ったはずです!火を扱う以上もっと注意するように」


 僕の声が調合室に響くと生徒たちは静かになった。そしてランプの火を消し終えた高崎が僕に話しかけてきた。


「どうしました先生。また僕、配合率間違えました?」


「またってあなた何年専攻しているんですか……違います、少し廊下までいいですか?」


「は、はい」


 少し怯えた様子の高崎が僕の後について来る。調合室から廊下に出ると僕はドアを閉めて高崎の目の前に立った。


 彼はじっと僕を見つめている。聞くべきか迷ったが致し方あるまい、聞くことにした。


「これはプライベートな質問になりますが、彼女さんと言うのは本当に地上にいるのでしょうか?本当はヒイロとお付き合いしているのでは?」


「ええっ!?いいえ!本当に地上ですけど……」


 高崎は驚きと笑いの混ざった表情で僕のことを見つめる。しかし、彼女の話では高崎と……男女の交わりをしたのではないのか?一体どう言うことだ。彼は股をかけているのか?そんなこと僕でもしたことがないのに。


「……ならば、どうしてヒイロとしたんです?」


「したって何をです?」


「アレです。男女の」


「え?」


 はあ。物分かりが悪いのか、勘付いているのに分からないふりをしているのか。


「えではありません」


「え?え?」


 高崎はまだ分からないと思っているのか、口を尖らせて考え込んでいる。まったく……はっきり言うしかないか。


「分かりませんか?セックスです。」


「エエエエエッ!?」


「えではありません」


 高崎はブンブンを首を振りながら何故か僕に向かって合掌し、頭を何度もヘコヘコと下げている……そんなに僕のことが怖いのだろうか?


「そんな!そんな滅相もございませんて!俺はぜっっっったいに彼女に手を出してへん!俺は真面目なんです!地上の父親は警察官、母親は高校教師なんや!ほーらね!この真面目っぷり、分かるでしょう!?」


「まあ僕はあなたの担任なのであなたの家族構成は存じていますが……しかしヒイロ本人がそう言っているんです!」


 僕の言葉に高崎は動揺した。


「え!?ほんまですか!?そんなん嘘です!してませんて!俺かてこないだヒイロからリュウとジョンとしたって聞いてビックリしたばかりなんですよ!」


「え!?……一体どう言うことですか」


 どういうことだ。高崎も聞いて驚いただと?すると高崎は僕の腕を掴んで廊下を歩き始めた。


「もうそんなん本人に聞いた方が早いですって!行こ行こ!先生!」


「え、ああ……」


 僕は高崎に従うことにした。



 *********



 ドンドンドン


 この荒々しい叩き方は隣のマーヴィンに違いないと思って開けたら、そこには歯をくいしばったタライさんと、何故かさっき出て行ったばかりの家森先生が立っていた。


 ……今日は全く騒がしいな。一体何事なんだろう、もう全く見当がつかない。


 二人はズカズカと私の部屋に入って来た。お茶を用意しようと思ったらタライさんがぐいと私の腕を掴んできた。


「おい!ヒイロちゃん。ちょっといいかな?」


「え」


 何故か言葉に怒りが含まれている。私が何かしでかしたに違いないが、見当がつかない……いやアレか。栄養状態の件か。


「もしかして……例の件ですか?干し肉の」


「例の干し肉の件とは何ですか?」


 あ、違ったぽい。やばいやばい。私はタライさんにアイコンタクトでその事実を伏せるように伝えた。


「ああこいつ、ここに入学してから干し肉ばっかしか食うてへんかったらしいですよ」


 なんで言うのか!?私は驚いた顔をするが、もうそれは家森先生の耳に届いているのだ。先生は眉間にしわを寄せながら私を見つめる。


「ええ?ヒイロそれは本当ですか……!?」


 私はタライさんの肩をむんずと掴んで叫んだ。


「ちょっとタライさん!家森先生にどうして言うんですか!ベラ先生に伝わっちゃうじゃないですか!」


 するとタライさんは口を尖らして言った。


「そんなんベラ先生には俺からも言う予定やったけどなー!それくらいあかんことをしていたんやで!」


「しかし、どうしてヒイロは干し肉しか?」


 家森先生の言葉にタライさんも私をじっと見る。これは言えない。


「……それはちょっと言えない」


 すると今度はタライさんが、私の肩をまたギュッと掴んできた。痛い。


「ええ!?それもそうやけどアンタ、なんで俺とそういうことしたなんてしょうもない嘘をついたんや!お陰で俺はこの先生に殺されるところやったんやぞ!」


 え!?なになに!?男女二人の話?それってそんなにダメなことなの?家森先生はメガネを調節しながらボソッと言った。


「別に殺しはしませんよ……問い詰めることはあっても」


「ほらほら!もう俺は家森先生に怒られたくないんや!分かるやろ!?この人実は超ドSなんやで!もう何年も一緒にいて、どんだけ俺が怯えて生きてきたか分かるか!」


 へえ……家森先生は実はドSなんだ……それはひしひしと感じてたけど。でもでもちょっと待ってよ!私は首をブンブン振りながら言った。


「ちょっと、ちょっと待って……でも嘘じゃないですよね?」


「はあ!?何言ってんの!?なんで!?俺がいつしたんや!」


「えーっと……課外実習の前の週末に普通にした。」


「高崎……?」


 タライさんの肩に手を置きながら、家森先生は引きつった顔で呟いた。タライさんは慌てて首を何度も振る。


「え?え?え?ちょっと待って!た、確かに一緒に俺の部屋で遊んだけど、してへんやろ!」


「高崎の部屋で……?」


 また家森先生が冷たい声で反応する。


「ちょっと何とか言ってよ!ヒーたん!」


「ヒーたん……?」


「もういちいち反応せんといてください〜〜〜!俺はここで殺されるんや〜〜!」


 タライさんが膝から崩れ落ちると、ドンとグリーン寮が揺れた。ヒーたんは謎だけど……でも何でゲームがそんなに悪いことなのか?私は思い切って聞くことにした。


「そんなに悪いことなの?それならもうしないけど……あーあ、楽しかったのにドラゴンハンター。」


『ドラゴンハンター?』二人は同時に聞いてきた。


「はいドラゴンハンター」


『ドラゴンハンター?』二人は同時に聞いてきた。


「はい、ドラゴンハンター」


 タライさんと家森先生が目を合わせた後にタライさんが聞いてきた。


「ドラゴンハンターってゲームやんか。確かにこの前、俺の部屋で一緒にプレイしたけど……」


 家森先生が戸惑った表情で私を見て聞いてきた。


「そ、それでは、あなたがしたと言っていたのはドラゴンハンターというゲームのことだったのですか?」


 あ、違っていたんだ。男女が二人ですることってゲームじゃなかったんだ……そうなのだとしたらもしかしたら迷惑をかけてしまったかもしれない……。でも調べても学園のPCや携帯からだとセーフティサーチに引っかかって何故か調べられなかったのだ。


 だからアニメやドラマで推測するしかなかった。まあそれも間違いだったと言う訳だけど。私は肩をすくめながら話し始めた。


「アニメチャンネルを見て仲のいい男女が同じ部屋ですることはゲームだと思っていました……だからドラゴンハンターだと思って。違うんですか?」


 私の目の前の二人はまた目を合わせた。どういうことなのか理解出来ないという雰囲気を醸し出している。家森先生が私に聞いてきた。


「どういうことですか?ヒイロ、高校で保健の授業は受けてきたでしょう?」


 高校……そうか。この学園にいる生徒は高校を卒業した人が来るところなのか。それすらも理解出来ていないなんて……ああ。


「……。」


「どうしたん?何かあったんか?」


 タライさんの言葉にちょっと泣きそうになる。でも怖い。言ったらどうなるか、怖い。それも大切な二人の前で。


「……嫌われるかもしれないから言わないです。」


 二人が同時に鼻で溜息を吐いたのが分かった。すると家森先生が私の肩を撫でながら言った。


「嫌いなどしません。僕も高崎も。」


「そうやで?どうしてヒーたんを嫌いになれんねん。」


「ヒーたん……?」


 またさっきの様子で家森先生がタライさんのことを凝視している。それに笑おうとしたら、ぽろっと涙が零れてしまった。


「もう反応せんといてくださいって!と、とにかく何があったん?」


 それで言えたら苦労はしない。どうしよう。言えない。


「それはちょっと。まあもう勘違いしてたと言うことでお開きにしましょうよ……」


 流そうと思って頑張ってニコッとしたら、タライさんが真顔で隣で立っている家森先生の肩をポンと叩いたのだ。


 ん?これは何だろう……二人は何か通じ合っている雰囲気で少し怖い。


「先生、今こそ有機魔法学の出番では?」


「はい、その様ですね……ならば家森スペシャルを飲ませて吐かせるしかありませんか。」


 すると家森先生が白衣のポケットから紫色のポーションの入った試験管と取り出した。私は涙を吹き飛ばして慌てて首を振る。


「な!なにそれ!?それを飲むの!?なにそれ!?」


「だってヒイロは僕たちに内緒にしたいのでしょう?これを使うのはいつぶりでしたか。いやあ、久しく使用していないので楽しみです」


 キュポン


 家森先生が楽しそうに試験管のコルクを取ると中から紫色の湯気が出てきたのだ。もう明らかに毒か毒の親戚じゃん!とにかく死ぬかそれに近い状態になるのは間違いないだろう!ここまでくると話は変わってくる!


「ちょっと待って!無理無理!」


「なら訳をどうぞ聞かせてください」


「それも無理!」


「ならこれをどうぞ、ふふっ」


 ああん!どうあがいても地獄!タライさんはさっきからお腹を抱えて笑ってるだけだしちょっとムカつく。彼の大好物が人の不幸だとは思わなかったよ!だけど私だってせっかくなので長生きしたいし、ここは命乞いをすることにした。


「わ、わかりました!言います!言いますからそれを近づけるのをやめてください〜!」


「ああ、そうですか。では話してください。はいどうぞ。」


 そう言う割に先生は家森スペシャルをしまおうとしない。なるほどな、私が話さない限りはそうしてかざして置くという……もうタライさんの言った通り彼はドSなんだ。もう……もう分かりましたよ。


「……内緒にしてくれますか?」


 私の問いに、二人は「はい」「うん」と同時に頷いてくれた。もう話すしかなくなった。


「……実は、はあ」


 少し間を置いてから言った。


「実は入学した時から記憶喪失です。」


『!?』


 驚きを隠せない表情を二人がしている。それもそうだろうな。


「それ以前の自分を含めた人の記憶とか出来事の記憶とか、思い出せない。歯の磨き方とかPCの使い方とかそういうのは分かります。でも他は何一つ、思い出せない。」


 ショックを受けたようなタライさんと、事情を理解してくれたのか何度も頷く家森先生がいる。彼は家森スペシャルをポケットにしまってくれた。良かった。


「ほんまなん?って言ってもほんまなんよね……」


「はい」


「しかし、原因は?何か思い当たることは?」


 家森先生の問いに首を振った。その時にポロリと涙が落ちてしまった。


「分からないです。」


 家森先生は私にハンカチを渡してくれながら言った。


「何故今まで言わなかったのです、僕でなくても担任のベラ先生にでも。」


「い、言ったら……ダメだと思って。」


 ひくつく背中を先生はさすってくれる。タライさんは真剣な表情で聞いてきた。


「せやから、干し肉ばっかやったんか?」


「はい。料理の記憶も無い。それ以上に貯金を何かあった時のために取っておきたかった。それまでの自分が貯めててくれたから、大事にしたかった。」


 タライさんが私のことを見つめながら言った。


「そんなん……食事は俺が今度から「食事に関しては僕に提案があります。それよりも僕が装置を持ってきてこの部屋で行いますから、一度脳波を調べてみませんか?それで原因が分かるというところまではいかないと思いますが、今ヒイロの頭に何が起きているのか、はっきりさせることは大事かと。」


「確かにそうや!一度診てもらったほうがええよ!」


 二人は嫌わないで私の為にと考えてくれた。それがとても嬉しかった。


「じゃあ……お願いします。でも、みんなには言わないで」


「あのなぁ、」


「え?」


 タライさんはニヤニヤしている。


「俺に言ったってことは、みんなに言ったってことやから!」


「え!?何で!?」


 私がタライさんをどつこうとするとタライさんは避けた。


「ええやん!みんなで支えあって、話しあお?」


「タライ……!」


 すると家森先生が私の肩をポンと叩いてきた。


「まあ僕も、ベラ先生には話したほうがいいと思います。それに記憶がないと言ってあなたのことを嫌うようなことはありませんよ。今のあなたのことを、皆は好きですから……」


「先生……」


 やっぱり家森先生は優しい人だった。


「特に先生がな」


 ギュン


 黒い革靴が紺のスニーカーに勢いよく落ちる音がした。


「いったぁーーー!」


「何か言いました?」


「もう体罰やん!……全く。なあヒーたん。ほんなら男女のアレも分からんのやな?」


「ああ、知らないです!」


「ああそう……クックック」


 何その不敵な笑みは。しかし二人が優しくてよかった。自分のことを話せて少し楽になったのも事実だ。


「家森先生、タライさん、ありがとうございます。」


 すると二人はええよ、はい、と同時に答えてくれた。


「とにかく測定の準備をしましょうか高崎。」


「はーい!」


 そしてタライさんは測定する機械を取りに行き、家森先生は自分のPCを取りに行ったのであった。


 すぐ後に、私の部屋で家森先生とタライさんが私の脳波を調べてくれた。私はベッドにじっと横になっていただけで、ものの数分で測定は終わったのだった。


 結果としてはやはり原因は分からないみたい。でも脳は至って健康のようだ……。


「ところで、」


 それまで静かに測定機器のお片づけをしていた家森先生が急に言葉を発した。何だろう。


「食事の件ですが、僕から提案があると」


「あ、ああ……そう言ってましたね。提案ってなんですか?」


「何や、それなら俺が毎日お弁当作ってあげる言おうと思ってたんやけど〜」


 えっ!?タライさん!!まじですか!?


 私がパアッと明るい笑顔をタライさんに向けると、何故か家森先生が白衣のポケットから紫のポーションを取り出し、彼にグイグイ近づけ始めたのだ。


 何が起きているのか、その展開の凄まじい早さに私の頭が置いてきぼりを食らっているし、タライさんは首をブンブン振って後ずさりしている。


「ちょっと!嘘ですやん!やめて!嘘ですって!」


 嘘だったんかい……ついタライさんの話し方が移ってしまう。


「……提案ですが」


 何事もなかったかの様に家森先生が紫ポーションを持ったまま話し始めた。もう彼のことが好きなのか、恐ろしいのかわからなくなってきた。でも多分好きです、はい。


「僕が代金を払うので、あなたが作って頂けたらと思いました。協力関係を作るんです。」


「え……と言うことは、家森先生のお金で材料を購入して、私が二人分弁当を作ると言うことですか?」


 そうです、と先生が頷いた。ヒッヒッヒと例の笑い声がこの部屋のBGMになっている。もう彼のことは放っておこうと思った。


 と言うことは私が弁当作るんだよね……自信ないけど。


「でも作ったことないし味が。」


「実を話せば、僕は一切料理が出来ません。」


「ああ……」


 誰にでも得意不得意はあるんだ。家森先生は眼鏡を取ってハンカチでレンズを拭きながら話し続けた。


「お昼、僕やベラ先生は大体売店の弁当を買って食べていますが、その弁当も大体同じおかずなので毎日続くときついと思ってきました……あなたに料理を任せるのは悪いことだと思いますが、僕はどんな味付けでも構いません。あなたが作ってくれるのなら。」


「そうやんな〜。好きなあがっ!」


 家森先生がタライさんの足をまた踏んだ。そのうち私も彼に踏まれるのだろうか……。


 しかし家森先生の提案はもしかしたらいいかもしれない。ただお弁当を作ってもらうだけっていうのは何だか悪くて気がひけるし、料理を学んで作るなら二人分の方がモチベーションも上がるし。でも、


「……でもお金はやっぱり「構いません。僕はお金に困っていませんから」


 まあ、生徒よりはそうなのかな。タライさんも良い話じゃないのと言わんばかりに何度も頷いている。家森先生は私の手を取りながら言った。


「現在、地下世界にはこの本校の他に、山林校や雪原校、南島校があります。その学園全体の理事長とこの本校の学園長はイコールと考えてもらって構いません。実はシュリントン先生は学園全体の理事長で、僕は副理事です。何が言いたいかと申せば、僕はお金には困っていませんということが言いたかったのです。ヒイロさえ良ければ、僕は是非とも協力関係を結びたい。」


 家森先生はじっと私のことを見つめてきた。お金に困っていないのは分かったけど……ここまで真剣に提案してくれているし、家森先生も私に作って欲しいと思っていることだし、ならお言葉に甘えてもいいのかな。


「……分かりました。じゃあ私が作ってみます。でもみんなには内緒にしましょう?ほらファンの生徒が怖いし……」


「せや!そうした方がええよ!」


 ……主にアンタに言ったんだけどと思いながらタライさんのことを睨むと、彼が分かったよとおちょぼ口で応えた。家森先生は満足げに頷いた。


「それでは今日の夜からにしませんか?」


「え!?」


 え!?弁当の話だよね!?今日の夜?何で?


 私の方が疑問に感じるべき瞬間なのに何故か家森先生の方も首を傾げている。


「うん……まあ基本は昼ごはんをと思いますが、休日などは夜も一緒にどうかと思いました。」


 そう言うことか……それならいいけど。でも今夜は明日の準備したいからなぁ。


「今夜はちょっと明日「ゲフンッ!おっホェ!ガッ!来週からでいいですやんか!ほら、図書館でレシピ見て調べる時間とか必要やろ?ヒーたん?」


 タライさんが家森先生の背後でウィンクをしてくる。ああ、なるほどね。これは内緒の方がいいんだ!理由は分からないけど、彼に乗っかろう!


「そ、そうです!レシピ見てちょっと考えてから作りたいので、来週からにしましょう!キリがいいですし!」


「そうですか……分かりました。それではそうしましょう!」


 ニコッとしてきた家森先生にニコッと返した後に、彼の背後に立っているタライさんに向かってウィンクをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。