第6話 俺は変われない。
注意: 主人公は、前世で普通だと思われていただけです。全く普通な性格だったとは限りません。
〜父親サイド〜
空に巨大な魔物が飛んでいた。ドラゴンだ。
真っ黒な鱗に身を包み、赤く光っているかのような迫力を持つ瞳を持つ、絶望そのものが真っ直ぐにこちらに向かっていた。
「逃げろ!」
みんな逃げようとした。が、ドラゴンは俺たちが逃げられるスピードではない。地面に着陸するなり、すぐに尻尾で俺たちをなぎ払った。
俺は、盾でなんとか攻撃を和らげ、受け身をとった。しかし、俺の横には妻、ティファーナが倒れていた。その後、すぐにドラゴンを息を吸った。
「まずい、ブレスだ!」
どうやら、本気でティファーナ目掛けてブレスを放とうとしている。俺は、ティファーナの前に出て、盾を構えた。
「うおおおお!」
なんとかそれを防ごうと、勇者がドラゴンを停止させるため、勇者が飛び込む。
しかし、それも間に合わず、ブレスがこちらに放たれる。
放たれる、見たことの無いような青い熱線。
俺の盾がどんどん溶けていき、俺自身まで溶け始めた。俺は、ここで最後なようだ。だが、せめて、妻だけでも守りたい。勇者がドラゴンを停止させるまで、なんとしても耐えたい。
が、俺はもう持たないようだ。遺言だけでも残しておこう。
「愛してる。」
誰にも聞こえていないだろう。だが、もう俺に叫ぶための喉は焼かれてしまっている。
俺の人生は、子どものころ思っていたよりも短く、そして楽しい人生だった。孫の顔を見れないのが残念だなぁ。あいつはどんな男に育つんだろう。
…………
彼の命は、そこで燃え尽きた。
〜テルサイド〜
俺はズドン!という大きな音を聞き、後ろを振り返った。そこにいたのは、黒いドラゴン。聞いたことがある。魔王すらも凌ぐ強さを持つと言われている、邪竜と同じような特徴を持っている。
「は?」
ものすごい量の砂や木片、石がこちらに飛んでくる。
目を閉じて、耐えきった。まだ砂埃で遠くが見えない。が、そのすぐあと、耳を貫くような轟音と同時に、青白い熱線が俺たちの500メートル近く離れた場所を、下から上へ切り裂くように放たれた。
その後、ドラゴンの方向に、白い閃光と、ドラゴンの悲鳴
「グオオオオオォォォ」
その後、ドラゴンは東の方へと飛び去っていった。
〜勇者サイド〜
なんでこんなところに邪竜がいるんだ!
賢者ミリィに叫ぶ。
「結界張れ!」
「分かってる!」
しかし、彼女の防御結界でさえ、あいつの尻尾は強すぎるせいでほんの僅かに速度を遅くしただけで壊れてしまう。
タンク役のガイルが咄嗟に前にでて、盾を構えて尻尾を止めようとする。俺たちは、彼に全身全霊で、全ての防御系魔法をかけた。
「よし!止めた!」
そう思っていた。たが、数人ほど尻尾がしなったせいで吹き飛ばされていたようだ。
その中に、神の言っていた、ティファーナという女性も含まれていた。彼女は、今では失われた魔法、人を瞬間移動させる魔法を持っているらしい。俺たちは、それを教えてもらうためにここに来たのだ。
邪竜は、それを消すためだろうか?彼女だけにめがけて、ブレスを放とうとする。
「うおおおお!」
俺は、ドラゴンを停止、撃退するために、身体強化、俊足を使い、全力で駆け寄る。が、間に合わなかった。それでも、俺は聖剣を邪竜に刺した。
「グオオオオオォォォ」
ドラゴンが叫び、どこかへ逃げ去る。
ブレスの放たれた方を見ると、人の面影を残したドロドロになった遺体と、口を開け、涙を流し、虚ろな目をしたティファーナの姿があった。
〜テルサイド〜
ドラゴンが逃げたそのあと、勇者がなぜか俺に話しかけてきた。
「すまない。君のお父さんは、お母さんを守るために、死んでしまった。
僕が守ることができなかった。本当にごめん。」
俺は、涙が出てきた。久しぶりだな。赤ちゃんを卒業していらい、初めて泣いているみたいだ。
「はい。わかりました。大丈夫です。」
俺は全然大丈夫だって言える表情じゃない。わかってる。お母さんの怪我は完全に直してもらえた。が、まだ家のベッドの上で虚ろな返事をするくらいで、寝ている。
なんで、こんなことになったんだろう。
防ぐことができたんじゃないだろうか?
いや、俺がサボらず、もっと強くなって、身体強化とか、気配察知とかを習得していれば、早急にエマに襲いかかるゴブリンをたおし、ドラゴンの気配を察知して駆けつけて、ブレスを吐かれる前に目を潰していれば、お父さんは死ななかったんじゃないだろうか。
前世からそうだ。俺は道半ばで飽きて、めんとくさくなって、すぐやめて、逃げて、空っぽな人形になる。
転生しても、イジメから助けられても、圧倒的な魔力を得ようとも、修行の仕方を教えてもらっても、全く変わらない。もう正気を保てる気がしない。
俺はいつまでも俺だ。
情けない。
醜い
汚い
キライダ
「アアアアァアアアアアァァァァァァァ、、、あぁ。」
俺が転生してごめんなさい。
お母さん、俺の子どもが俺でごめんなさい。
エマ、俺のために時間を取らせてごめんなさい。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…
結局おれは、ゴミでしかないみたいだ。
異世界転生しても、人は、いや、俺は根本から変わることはできないようです。
俺は、弱いくせに正義感をふるい、じぶんが勝手にとばっちりを食らって善行をなした気になるようなやつだ。
俺は、努力ができないやつだ。
少しずつ、心が荒み、冷静な気分になってきた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
彼はここからどのように成長していくのでしょうか?