第15話 入学
さあ、入学試験だ。
「行ってきます!」
「いってらっしゃい。」
どうせ転移ですぐ帰って来れるから、いつも通りでかける。
さて、俺は平民だから、平民の列に並んでいる。
列に並んでいる間に、友達ができた。暇だったから、前にいたやつに話しかけて、友達になった。名前はライン。話しかけやすい雰囲気で、美少年だ。
「なあ、この列すごい長いから、話し相手になってよ。」
「うん。いいよ。僕はライン。王都に住んでるよ。」
「俺はテル。ここから少し遠いけど、カルロ村に住んでたんだ。」
「え!?カルロ村って、3年前に邪竜が攻めてきたところだよね!?」
邪竜の話で盛り上がった。もちろん、父さんを殺されたことは伏せている。まぁ、せっかく話が弾んでいるのに、気にしてるわけでもないのに水をさす必要もないからね。
面接から始まった。
住所と、使える魔法を聞かれた。ファイアボールが使えることを教えたらめちゃくちゃ驚かれたな。
実技の時に確認された。
その時にも、無詠唱で発動させたことに驚かれた。俺、一応英雄だからね。
「すごいな、テルは。ファイアボールを無詠唱とは、、、」
「いや、ラインだって他の人と比べたら強いだろ。アイスアロー使えるやつなんて初めて見た。」
ライン、相当才能があるみたいだ。
同じクラスになれる気がする。そんなレベルだ。
そのあとは、別れて帰った。
あいつはまだ寮に来る気は無いみたいだ。
もったいないな。ここの学食、母さんのご飯の次に美味いのに。
俺は、寮の庭で素振りをしてから走り込み、反復横跳びをして、訓練を怠らないようにしている。
エマともうすぐ再開するのだ。
エマが仲間に欲しいって思うくらいに強くないといけない。
ちなみに、一気にファイアボールをいっぱい撃つのは難しかった。全然できない。
それから毎日、転移して帰ったり、筋トレしたり、ファイアボールを練習した。
クラス発表日、俺はファイアボールを自由に動かせるようになった。
俺にはたくさん撃つような芸当はできなかった。ショットガン的なやつ、欲しかったんだけどな〜
成績順位を見る。あ、エマ主席や。
ん?俺3位なんですけど?
2位ケイン ホーネスト
誰やねん!
よく見てみると、3位二人おるやん。
3位 テル
3位 オリガ
ああ、オリガか。そりゃそうだ。俺はあいつにファイアボール習ったわけだし、ブレスの劣化版も使えるんだから。
15位 ライン
あ、ラインもすごい上だ。
クラス分けを見てみようクラスは、S〜Qまであった。めっちゃクラスあるやん。18クラスくらい?1クラス100人以上いるのに?
そりゃあまあ全国から集められてるわけだから、そんな数にもなるか。
まぁ、さっさとSクラスの教室に移動しますかね。
ん?あ。
俺は、気づいた頃には走りながら、叫んでいた。
「エマアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!!」
「え!?テル!?」
俺は、エマに飛びついた。禁断症状が出たようだ。エマには強力な中毒性がございます。お気をつけください。
「えっちょっと!離れてよ!」
「ウゴアァ!」
右フックをくらい、俺は地面に倒れた。
そして、何もなかったかのように立ち上がり、こう言った。
「久しぶり、エマ」
「何なかったことにしようとしてんのよ。」
「いや、1年近く会ってなかったんだよ?そりゃあこうなるのも仕方ないんじゃないかな?」
「いや、そんなわけないじゃん。」
「まあ、そんなことより、再開を喜ぼうよ?ね?」
「うん。久しぶり、テル。」
「さ、教室行こうぜ。」
教室に入ると、ラインがいた。
「おっすライン!お前やっぱり凄かったんだな!」
「いや、3位の人にそんなこと言われても全然嬉しくないんだけど。」
「何言ってんだ。俺は自称人族最強の男だぜ?こんな子どもの集まりみたいなところで負けるはずねぇだろ?」
「ふーん、1位って知ってる?」
「ん?ああ、横の女神様のことだろ?」
「いや、誰が女神よ!」
「ははは、またまた。ご謙遜を。」
「はぁ、あんた1年でなにがあったのよ。」
「背が伸びたんだ。」
「いや、そりゃそうだけども。」
「あれ?テルくん、僕のこと置いて楽しまないでくれる?」
「あぁ、ごめん。ライン。
こいつはエマ。俺の幼馴染で賢者だよ。」
「エマです。よろしくお願いします。」
「あ、敬語使えるんだ。」
「前から使ってたよね?」
「お待ちになって?バカにしたのは悪かったから…ぎゃあああ!」
「ああ、主席の人か。」
ラインは納得した様子で、俺が頭グリグリされてるのを無視している。助けて?
「なにをやっているだい?エマ。」
誰だこいつ。無駄にカッコつけた喋り方しやがって。とは思っても、口には出さない。
俺、平民だから相手が貴族だった場合大変なことになる。
「別に何かしてるわけじゃないわよ。幼馴染との再会を喜んでいただけよ?」
「ああ!これはエマの愛情表現なんだな!?
この照れ屋さんめ〜」
デュクシッ!
エマのチョップがすごい音鳴らした。
デュクシって、本当に鳴るんだ。
俺、死にそう。
「ふーん、じゃあそいつがエマの言っていたテルか?」
あれ?こいつ、俺の見る目がいきなり軽蔑の目から恨むような目になったな。
「エマ、誰?この人。」
「こいつが私と同世代の勇者、ケインよ。」
「へ〜、この人が勇者様か。」
そうだ。こいつ、なかなかイケメンなのに、滲み出る自信がウザさを感じさせる。そんなやつだ。
「そうだ。俺は勇者だ。敬意を払えよ。」
「え〜、次の勇者こんななの?」
「何か文句があるのか?」
「いや、俺とエマの対応の変化がしらけるんだけど。」
「なにを言っているんだ?俺は勇者で貴族だ。平民への対応を雑にしてなにが悪い?」
「いや、エマ見てからお前見たら、お前ノミにしか見えないんだけど。」
「こいつ!後悔させてやる!」
「ハッ、ダッセェ捨て台詞だな。」
我ながら辻褄の合わない返答をしてしまったなと思う。あいつがアホでよかった。
「あいつ、面倒くさいのよね〜、なんかすぐ話しかけてくるし、いきなり「君は僕が守る」とか言ってくるし。」
「エマ、お前、大変だったんだな、、、」
「本当に大変だったよ。」
「ま、俺の方が大変だったと思うけどな。」
「そういえば、邪竜の時の話聞かせてよ。」
お互い、苦労してるなぁ。