第12話 絶望の目撃者
タイトルが思い浮かばなかった。
今日は休日2日目
明日の訓練めんどくせ〜
そんなことを思いながらベットから出た。休日がかあさんと被らなかったので、もうかあさんは仕事に行った。
オリガは魔法の才能があるらしい。すごいスピードでどんどん覚えていく。1日で魔力結界も無詠唱で使えるようになった。加熱は流石に苦戦していたけどな。まぁ、オリジナルだからな〜
「おはようオリガ」
「おはようございます!」
「加熱使えるようになった?」
「はい!最初から無詠唱なのは難しかったですが、テルさんのお陰でできるようになりました!」
「ははは、それはオリガの才能と努力の結晶だよ。さあ、今日は俺の必殺技の劣化版を教えようと思う。」
「おおお!しかし、劣化版ですか?」
「そうだ。俺の必殺技は1撃使うのに、MPを38010Pも使ってしまうからな。俺以外では使い勝手が悪すぎる。」
「そりゃわたしには一撃も使えないですね、、、では、劣化版というのはどれくらいですか?」
「オリガのMPの量次第だな。どれくらいあるの?」
「500くらいです。」
「おおう、まじか。まぁ、使えるだろう。じゃあ、やり方を教えるぞ。」
「はい!」
「じゃあ、まずは魔力結界をあの木の方向だけ穴を開けて出して。」
「ええっ?えい!」
「おっけー。もうできたのか。早いな。じゃあ、それにくっつけるようにしてもう1枚普通の結界を張って。」
「はい。」
「んで、その中にアクアで水を入れて。」
「はい。」
「あとは、その中の水を思いっきり加熱する!」
ピュン!
そんな音を立てて、水蒸気は木を貫いた。
「おおおお!」
「いい感じだな!これ、木は燃えてないけど、相手を火傷させることもできるから、本当に最終手段として使ってくれ。」
「わかりました!」
本当に覚えるの早いな。俺が何年かけたと思ってんだ。まぁいいか。たくさんEPもらえたし満足だ。
さて、整形にまた注いだ。
「頑張りますかね〜」
「なにをですか?」
「ん?ああ、俺の鎧のデザインを考えるんだ。やっぱり鎧はカッコ良くねえとな!」
「へ〜、私もいっしょに考えたいです!」
「おお!手伝ってくれるのか!助かる!俺、センスないもんでさ!頼むよ!」
兜は口の部分だけは開いていることだけは守らなきゃ行けない。俺がブレスを吐けないからね。
また仕事か〜
かったりぃな〜
そんなことを思いながら、やっぱりまた団長にしごかれるわけだ。次は、剣投げ禁止で戦って団長に勝たなきゃ行けない。
また筋トレ、走り込み、反復横跳びを終え、団長と模擬戦をする。
「行きまっせ!」
ドッと地を蹴り、剣を横に振る。すると、団長はバックステップで避けて、突いてくる。
体をねじってギリギリでかわしながら、左手で剣を持ってる手を思いっきり殴って、剣を離させて、団長の木刀を奪う。
そして、何気に習った2刀流で切りつける。
団長は驚いた顔になりながらも、またバックステップでかわした。
団長は速いことが売りだが、俺も同じくらい速くなったのだ。毎日毎日死ぬ思いをしたんだ。
もしかしたら、団長は俺に達成感を味あわせて俺の心が折れることに対策したのかもしれない。だが、それでもいい。そろそろ勝ちたい。負け戦ばかりじゃ楽しくないんだ。
だが、ここで欲張らない。焦らない。
これはゲームで習ったことだ。
焦れば負ける。はやとちるな。
団長は身を低くして、一気に懐に入り込もうとしたみたいだ。動き出してからでは間に合わないので、今、俺はやや下目に回転切りをした。
ガンッ
当たった!
割と早かったけど勝った!
もうあれからどれだけかかっただろうか?
1ヶ月経ってなくない?
「ッシャアアアアア!」
「はぁ、まさか負けるとはなぁ。最後の回転斬り、あれ、予測じゃろ。あの予測は見事じゃった。アラン様に報告しとおくからの。」
「ありがとうございます!」
「うむ。しかし、日頃の鍛錬は積み続けるのじゃぞ。しなければまたワシに追い抜かれるぞ。」
「肝に命じておきます!」
何はともあれ、今の俺はハイテンションだ。
みんなが慈悲の目で見てくる日々とはさっさとおさらばさせてもらうぜ!
ん?俺、これからなにやるんだろ?
魔法の練習でもしよう。そういえば、武器に属性を纏わせるとか、そういうのしたの多分エマをゴブリンから守ったとき以来やってないな。あれを魔法でできるようにしよう。
「団長、剣に火を纏わせるとかってどうやるんですか?」
「ん?俺に勝つような奴がそんなことも出来なかったのか?火を纏わせたきゃ、魔力を武器に流して、火に変換すればいいんだよ。」
「ほうほう、なるほど。つまりイメージでできると。」
大剣を出し、火を纏わせるイメージで魔力を流す。
ボウッ
「おお!燃えた!」
最近どんどん強くなっていく。
知ってるぞ。俺はこういう時に一番弱くなりやすい。自分から強いって勘違いする。
だから、俺は成長を実感した直後にステータスを確認するのを禁止している。
俺は調子にすぐなるからな。前世のテストでもそうだった。1度いい点数をとったら、そのあと確実に学年底辺の成績まで落ちて、なかなか戻れなくなる。
あれは、惨めでダサかった。
さあて、見回りの時間が終わったらオリガのところにでもいきますかね。って、え?
「ウォルト村で魔物の襲撃が来てます!」
なんだと!?
「僕は襲撃の対処をします!誰か代わっといてください!」
急いで森の方へはしり、隠れたところで転移する。
見事に魔物が押し寄せてきている。
なぜかふと、邪竜が思い出される。
それと同時に嫌な予感。俺はとりあえず武器の容量にEPを全振りして、俺がさっき思いついた鎧と太刀を装備し、襲いくる魔物を蹂躙する。
ズバーン!
太刀を普通の鉄製にして、長く伸ばし、一気に薙ぎ払う。嫌な予感は強くなる。
俺は魔物が来た方向の空を見る。
邪竜だ。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…
「ありがとうございます!」
後ろで、オリガの声がする。
魔物を全滅させたと思ってこっちにきたみたいだ。助かった。俺は正気を取り戻した。
「オリガ!早く逃げろ!邪竜だ!」
「ええ!?ああ!?あれは邪竜!?ええ!?」
「驚いてんじゃねえよ!早く逃げろ!」
「ええ!?でも、テルさんは!?」
「俺はいつでも逃げられるから!だから早く逃げろ!!!」
ようやくオリガは逃げてくれた。
バーーン!
俺のスチームブレスが轟音を立てる。
遠くで邪竜に命中し、邪竜から血が出ているのが確認できた。
「よお、邪竜。あん時はよくも父さんを殺してくれたな。次はこの村ってか?お前の目的はなんだ?」
バーーーーン!
もう一度ブレスをお見舞いする。
「ヘヘヘッ、どうよ?俺の魔法は。科学と魔法の融合だぜ?こんなこと考えるのは、この世界では俺だけだろうなぁ。」
パーーーン!
口で煽りながら自分の逃げ出したい心を押し殺しながらどんどんブレスを打ち込む。
俺のブレスの球は、団長なんかよりも数倍速い。かわせるわけがないのだ。
俺は、邪竜の方へ走っていく。
村に被害を出すわけにはいかないんだ。
「今ここで、お前を、俺が殺すッ!」
そう言った瞬間だった。
ズドーン!
ブレスが飛んできた。俺はとっさに武器を大剣に変え、自分の前に立てて守った。クソが!油断した!
俺の大剣は、壊れることがない。俺の魔力がなくなるまで、耐え続ける。
俺は、10000ほどMPを持っていかれたが、耐え抜いた。しかし、口周りが火傷した感覚がする。
バーーーーン!バーーーーン!
また俺はブレスを撃ち込む。やはり、こちらの方が魔力があるようだな。ブレスの消費はでかいのか、あいつはなかなかブレスを撃ってこない。
魔力状況を確認しながら、どんどん撃ち込む。
人とドラゴンのブレスの撃ち合い。
今回は俺が相性勝ちした。あいつはすぐに山の方に逃げ込んだ。
「逃すか!」
ブレスを撃ち込む。当たったかどうか、わからない。しかし、あいつに近づいて、俺が恐怖心に勝てるのか。そして、俺はあいつの物理攻撃に耐えられるのか、全然わからない。
クソッ、せっかく父さんの仇を取るチャンスだったのに。
俺はやっぱり弱いなぁ。
接近戦で勝てる気がしないし、
ブレスの威力だって、、、ハッ
後ろを振り返る。被害は出てないか!?
俺の居る位置から、25メートルくらいがえぐれ、場所によっては溶けている。だが、それだけだ。村には届いていない。
「はぁ、はぁ、だが、今回は、大丈夫だったな。」
今になってドッと疲れが出てきた。MPをだいぶ使った。まだ半分も使ってないけど。
「痛ッ!」
ああ、そうだ、口周りを火傷したんだったな。オリガに直してもらえるかな。
「よお、オリガ。邪竜はどっか行ったぜ。」
「口のあたりが赤くなってるじゃん!すぐ直すから!」
初めてオリガのタメ口を聞いた。
そんなことより、俺の火傷はほとんど治った。少しヒリヒリするが、まあ、他人から見ればなにも変わらない。
口が出ているせいでこんな風になった。なんとかしなきゃな。そうか、ブレスか。
マフラー。なぜか、口を覆えてかっこいいものを考えると、マフラーがでてくる。
鎧の上に布を巻く。なかなかいい気がするな。
「本当に心配しましたよおぉ。本当に、死んじゃうんじゃないかってぇ」
オリガは泣き始めてしまった。へへへ、そういえば、初めて会った時も泣いてたか?泣きやすさは前世の俺以上だな。
「お前は泣き虫だなぁ。俺があの程度で死ぬわけねぇだろ?ほら、だいたい魔力じゃあいつより上なんだし、それに、俺はあんな技が思いつくくらい強いんだぜ?安心しろよ。」
「はああぁ、よかった〜」
俺と邪竜の初戦は、俺の勝ちで終わった。