第10話 あけおめ
あ、やらかしました。2本同時上げです。
「明けましておめでとうございます!」
この世界でも、年明けという概念がある。日数は、地球とほとんど変わらない。1日の長さも大体同じだ。
ただ、閏年がない。ちょうどで回っているのか、それとも、人類が気づいていないのか。それは、神様すらしらない。創造神は、全知全能ではなかった。
エマと俺も、今年中に9歳になる。
つまり、どういうことか?
今年、エマの賢者教育が始まるのだ。
そういえば、自分のことでドタバタしてたからかもしれないが、邪竜のことがあってからエマが賢者になったことを自慢しているところを見ていない。
「エマは今年から賢者教育だろ?
いつ頃から始まるんだ?」
「7日後からだよ。けど、、、」
「けど?」
「なんでもない。」
「俺に会えなくて辛い?」
「そんなわけないでしょ!」
「ですよね〜。
お前賢者として闘うのビビってんだろ?(ニヤニヤ)」
「そ、そんなわけないじゃん!私はテルよりも強いんだから!」
それはないと思うぞ、、、そりゃお前、人間辞めたことになる。
「ま、大丈夫だって。何のために俺が体鍛えてきたと思ってんだ。お前を守るためだぞ?
魔王だろうと邪竜だろうと、お前に指一本触れさせねぇよぉ!」
「あはは! 自分が一番ビビってるくせに!」
「は、ハァ?そそ、そんなわけねぇだろ!」
元気が戻ったみたいだな。やっぱり邪竜のせいだったみたいだな。
まぁ、俺が枯れ果ててたのを目の当たりにしていたわけだし、その原因に立ち向かわなければならない事が怖くなったのだろう。
正直俺ももう会いたくない。
さて、残り7日でエマポイントを溜め込んでおかねば、1年なんて持たない。
残り7日間はひたすら遊んだ。
筋トレはやったけど。
「いってらっしゃい!」
「行ってきます!」
家族や職員全員に送り出されて、エマは行ってしまった。王都へ。そこで、勇者とも会うわけだ。勇者って男なのだろうか?
勇者と賢者は両方とも性別に関係なく生まれる。女性勇者。いいな。
さあ、この7日間を取り返さねば!そう意気込んで、とりあえずスクワットを始めた俺に、アラン様が俺に言ってきた。
「テルくん、これから1年だけ、うちの騎士として働いてみないかい?」
「ええ?いいですけど、どうしてですか?」
「テルくんは、今はうちの料理人として働いているけれど、身体を鍛えてるよね。だから、興味あるかなって思ってさ。」
「まぁ、興味あるんですけど、騎士ってなにやるんですかね?あと、僕なんかが騎士やってるとナメられません?」
「騎士は、街の見回りとか、魔物の襲撃から街を守ったりする仕事だよ。まぁ、子どもが騎士なんかやってると、ナメられるかもしれないってのは確かだけど、できれば、学校に通い始めてからは君にエマを守って欲しくてさ。同い年だし、ちょうどいいかなって思ってね。」
「わかりました。やらせていただきます。」
早速、騎士団の方を8割ほど集め、紹介してもらう。
「彼は、今日から騎士団に入る、テルだ。
しっかりと戦い方を教えてやってくれたまえ。」
「テルです。よろしくお願いします。」
本当に嬉しい提案だった。エマがいなくなったせいで訓練保たないかもなって思ってたところだったんだ。
「じゃあ、一回どれくらいの実力があるか見せてもらおう。テル、そこにいるコランと模擬戦してみろ。」
「ルールは?」
「なんでもありだが、危ないような魔法は使うな。」
団長はそういうと、俺に木の剣を渡す。同じく木の剣を持った若い青年が出てきた。この人がどうやらコランさんらしい。
「「よろしくお願いします。」」
まだ俺は8歳だ。8歳児に先手を取るようなマネはしないらしい。
じゃあ、こちらから行かせてもらおう。
「ッラアァッ!」
全力で木の剣を投げつける。
まさかの行動に、コランは不意を突かれ、木の剣に直撃。
「そこまでッ」
「早ッ!?」
「まぁ、コランだからなぁ」
そんな声が聞こえてくる。やめたげて!その言葉なかなか刺さるんだからねッ!
「俺が行こうか。」
騎士団長がいきなり出てきた。
俺はもう一度木の剣を取った。
「はじめっ!」
今度は始まった瞬間に身体強化をかけ、一気に後退してから、木の剣を投げる。
「んんッ!」
流石にかわされるか。ほぼ目に見えないスピードでかわされた。やばいかもな。
そして、すぐに団長はこちらに仕掛けてきた。俺は、自分で木の剣を生成し、予測して投げた。
バアアアアアン!
ん!?投げて当たった地面少し前で、すごい砂埃が起こる。多分、いきなり団長が方向転換をして地面を蹴った時に起こったんだ。
ヤバイ!
もう一度木の剣を生成し、応戦しようとするが、途中で団長を見失い、気づいたら剣を首に突きつけられていた。
「そこまでッ!」
「団長、強いですね。びっくりしました。」
「こっちがびっくりしたわ!バカめ!2本目の剣投げられた時、見えてないと思ったったのに、精密に投げて来おって。」
「予測で投げました。それに、僕は武器投げ放題ですからね。」
「あの僅かな瞬間に予測とは、、、子どもの割に強すぎるな。あの親バカアランがエマの護衛にしようとするわけだ。
まあ、何はともあれ、これからよろしく頼む。」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
そういえば、この人は侯爵家の騎士なんだな。王様の近衛とかもっとヤバいってことか。俺もやっぱりまだまだ人間だな。
いや、魔力量はすでに化け物か。
「では、街の見回りを始めましょう。僕が街を紹介しますね。」
俺は、コランさんに引き連れられ、街を巡回し始める。
「テルさん、本当に強かったです。完敗でした。」
「いえいえ。不意打ちしただけですよ。普通いきなり剣なんか投げてくるなんて思いませんよ。」
「いやいや、あの速度、相当投げ込んでるでしょw 身体強化も使い慣れていましたし。
団長があんなこと言うなんて。
これから覚悟したほうがいいんじゃないですか?」
「大丈夫ですよ。それが目的で入ったんですからね。エマを守りたいのは、アラン様だけではなく、僕も同じですから。」
あらやだ。俺ったらかっこいいこと言ったんちゃうの?
とりあえずは、団長さんを倒せるようになることを目標に頑張ろう。まず、団長さんの動きが目で追えない時点で未熟だ。そこから鍛えることが必要だろう。
なんて考えていたら、どうやら騒ぎが起きたらしい。
「そいつを逃がすな!」
「捕まってたまるか!大体、なんで貴族だってだけで俺たちより大事にされんだ!」
はぁ、とりあえず捕まえよう。身体強化を使い、捕まえる。
「ありがとうございます!こいつ、来客された貴族様の馬車を襲おうとした一味のやつでして…」
さっきの発言から察するに、こいつ相当なおバカさんだ。別に貴族にならなくても、英雄になればいい待遇を受けられるのに。なんで逆の方向へ走ってんだこいつは。
「全く、アホらしい話です。それにしても、今日お客様が来られるんですか?」
「そうですよ。アイク様の婚約先のヘンリック侯爵家の方々です。」
「へ〜。ちなみに、騎士団の強さ的には、ローレンス家とヘンリック家では、どちらの方が強いんですか?」
「こちらでしょうね。団長が強すぎます。
模擬戦でわかったでしょう?見えないスピードで走るような人がいるのですから、相手を混乱させて、そのうちに刈り取る。なんてこともできてしまいます。」
「はぁ、やっぱり団長は異常なんですね?」
「ええもちろん。勇者ステイル様の師匠ですからね。」
「ええ!?そんなすごい人だったんですか!?」
「王様の誘いを断ってなければ、今頃王様の近衛騎士やってると思いますよ。」
やっぱり、あの人はバケモノみたいだ。
と、バケモノは思った。