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ヴァルタリア大陸記  作者: 久万 聖
第二章〜ヴァルザル平原の戦い〜
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ヴァルザル平原にて

 ヴァルザル平原。


 平原と聞いてしまうと平坦な大地を連想してしまうが、このヴァルザル平原は起伏に富み、またいくつもの小さな川が流れている。


 ヴァルザル平原の戦いと、後日に称されるようになった戦いは、ただ一つのことを除けばありふれた戦いに過ぎなかった。


 そして、その意義も遊牧民族と定住民族の戦い以上のものでは無かった。


 それがなぜ、ヴァルタリア帝国において大きく取り上げられるのかといえば、大帝マクリルの初陣であり、そしてその人生に大きな影響を与えたからである。


 言い換えるならば、大帝マクリルがこの戦場にいたからこそ、この戦いには意義があったといえる。


 ヴァルザル平原を案内してくれている、フリードリヒ・カッセル卿はそう語る。


 互いの兵力は、ナザール帝国軍三万に対して遊牧民族キタイ族一万。


 ナザール帝国軍の三万は、記録が残っているため確定している。

 その一方でキタイ族一万というのは、ほぼこの辺りの数字ではないかという推定である。


 これは、少なくとも当時のキタイ族に、細かな記録を残す習慣が無かったためである。


 ここで少し、キタイ族について簡単に整理しておこう。


 元々キタイ族は、大陸中央の北寄りの地域を主な放牧地としている、中規模部族だった。


 だが、このキタイ族族長にアブーチという男が着いたことにより、状況は一変する。


 アブーチは周囲の弱小部族をまとめあげると、さらに中規模部族に戦いを仕掛けたのだ。


 その部族の中には、マクリル帝の最初期の功臣であるユーディンやサティエ、ティティエのいた部族も含まれる。


 アブーチは次々に他部族を撃ち破り、また糾合する事で勢力を急拡大してきたのだ。


 だが、東方と南方はすでに強大な部族が支配しており、それらの部族に対抗するため、必然的に西に目を向けることになった。

 西方諸部族を平らげ、吸収した先にあったのがナザール帝国だったのである。


 そしてナザール帝国では、対遊牧民族として緩衝地帯を設けてあり、そこにある小国家群を援助することで直接的な戦闘は避けてきた。


 その小国家群による防衛線を破られた結果、ナザール帝国も軍を派遣することになったのである。


 その軍の中に、十四歳のマクリル帝もいたのである。


「ですがカッセル卿。当時、マクリル帝は領地を持たない無地貴族だったはず。

 指揮する兵士がいなかったのではありませんか?」


「はい。確かにマクリル帝は、ご自身の兵力などありませんでした。

 帝立学院を卒業して、ナザール帝国皇帝の直轄地の行政官となっておりました。」


「そのことは承知しておりますが、帝立学院を首席で卒業したほどだったのですから、大学院には進まなかったのでしょうか?」


「そのことはよく言われますね。

 ですが、ナザール帝国帝立大学院には、入学資格は十六歳以上という規定があったのです。

 そのため、マクリル帝はベルナイス伯の推薦があったにもかかわらず、大学院に進むことができなかったのです。」


「すると、十六歳になったら大学院に進学したのでしょうか?」


「はい。当時の記録を見てみますと、それが既定路線だったようです。」


「なるほど。十六歳までの四年間、行政官としての経験を少しでも積ませようとしたわけですか。」


「優秀な人材を、遊ばせておくわけにはいきませんからね。」


 カッセル卿はそう言って笑う。


 確かにその通りだろう。

 そして、行政官として着任した時期にこの戦いが起こり、マクリル帝はその地の兵を率いて参陣することを命じられた。

 その兵力は一五〇人。


 私は、カッセル卿から布陣図を見せられながら、その戦いの進展を説明されたのである。


 そして、この戦いには後にマクリル帝の第一皇妃となる、ユリドの存在があった。




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