第一話 日常的な光景
「空はいつも青い・・・」
そういて見上げると、今日もまぶしく太陽が光っていた。
静かそうに見える、青い海原とは対照的に。
俺は、一日一回空を見たくなる。
何故かは、自分にも分からない。
しかし、この空が自分に何か不思議なものを勇気付けるのは確かだ。
そういってまた仕事場へと向う。
途中の駅で昨日の夕刊を買っていく。
朝刊は、金融恐慌のためか妙に高い。
最近は、テレビで「またや倒産!」など叫んでいる。
そう思えば、俺の会社が倒産してないのが不思議なぐらいだ。
どうでもいことを考えているとすぐに列車がやってくる。
あいにく、どっかの駅で混雑しているため列車が15分程度遅れているらしい。
とんだ迷惑だ。
俺は、だるそうに列車の扉の中に吸い込まれていく。
「扉が閉まります!」
駅員が叫びだす。俺にとっては日常的な光景で新鮮な感覚もしない。
「シュ〜。ガチャン」
扉が見えない俺にとっては、この合図が大事なものとなる。
なにしろ、混雑の列車の中では将棋倒しになることがしばしばある。
合図と同時に通路と反対側に背をそらす。
他の人から見れば不審者だ。
俺は、毎回しているので気にも留めない。
そして、俺の朝は始まった。
新聞も広げることが出来ない車内では、退屈な時間だった。
あいにくにも、この列車は各駅どまりだった。
俺は、腕時計を眺めた。
「後、40分か。まぁ、間に合うか」
俺は、その後は景色を眺めていた。
いつも眺めている景色でも、空の色が違えば、また別のものに化ける。
駅員の仕事とは対照的に景色を眺めることは俺を飽きさせない。
「まもなく〜大阪。大阪です。扉付近が大変混雑しますので、お気をつけください」
今日の放送はいつもより大きめだった。
スピーカーに近い俺の場所は大変危険なところだった。
「シュ〜。ガラガラ」
扉が開いた。それと同時に中の人が俺たちをぐいぐいと押してくる。
俺はここで降りるので、たいした問題は生じない。
いつもどおり、改札口へと向う。
改札口付近では、駅員が見張っていた。
金融恐慌の今では、切符をとるやつがいるらしい。
なんとも、怖いところだ。
俺は、16番出口へと向う。
大阪駅には、何番か出口があるが16番出口は利用者が一番少ない。
悪いことはないのだが、何か寂しい。
「ファーン」
階段を上る途中で聞こえてきたのは、どっかの車のクラクションだった。
これも日常的な光景だ。
事故も、最近日常的なものとなっている。
階段を上り終えた後、交差点を右に曲がり、そして左に曲がる。
そうすると、俺の会社に着くわけだ。