表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
和菓子屋たぬきつね  作者: ゆきかさね
《第2期》 ‐その願いは、琴座の埠頭に贈られた一通の手紙。‐
96/259

   『その願望の答え合わせを』




 天井花イナリいわく、《グラシャ・ラボラス》の《未来と過去を知る力》、その対象となるのは、現在時間より二時間ほど前か後でなくてはならないという。

 つまり十時頃に起こった過去の出来事をその《能力》で知覚しようとするなら、必ず十二時を過ぎなくてはならない。それまでは見ることも聞くことも出来ないのだ。

 そして未来を知覚するのも同じ。過去と同様に、《魔力》の続く限りはるか先の未来まで知覚する事は出来るが、現在時刻より二時間後に近づいた未来は対象外になってしまう。

 現在から二時間前、二時間後、その間だけが彼女、《グラシャ・ラボラス》の《未来と過去を知る力》の対象外なのだ。

 だから、今のひづり達の会話を《グラシャ・ラボラス》が知覚するには二時間以上は待たなくてはならない。ひづりたちの意思を知った彼女がどう出るのか、四人はただ待つしかなかった。

 あるいは待てど何の反応も無い可能性もあったが、けれど話し合いから二時間と数分が過ぎた頃、ひづりの携帯電話に一通のメールが届いた。

 ラウラ・グラーシャからだった。


『ひづり。明日、二人でお出かけをしませんか?』


 官舎ひづりは天井花イナリと共にラウラ・グラーシャを信じると決めた。そしてその話し合いをラウラは《未来と過去を知る力》によって、つい先ほど見て聞いたのであろう。その上で彼女が提案して来た事であれば、ひづりはそれを受け入れる。彼女が望む《順序》に従う。

 スマートフォンの画面を操作し、それからゆっくりと深呼吸をしてから、ひづりはその打ち込んだ短い文面を彼女に返した。


『いいよ、ラウラ』







「――ラウラ! おいラウラ!! どうしてお前、官舎に、あんな……感づかれそうな事を言ったんだ!? どういうつもりなんだ!? お前がその《願望》を官舎に打ち明けるのは良いだろう。けど、どうして俺の《願望》までバレるようなことをしたんだ!?」

「そんなもの決まっています。もう終わりが近づいているからですよ、百合川」

「……終わり?」

「物事には順序があります。起承転結があります。生まれたら死にます。それと同じ事です。私の《願望》はこれから数日以内に完遂されます。そしてそれは同時にあなたの《願望》の完遂も意味します。それと、言わせてもらいますよ百合川。あなたと私の《契約内容》に、『百合川臨の《願望》を官舎ひづりにバラすな』なんて項目は無かったはずですよ。《悪魔》の相手の仕方を知らない、《召喚魔術》も知らない身でも、あまりに後先を考えませんでしたね、百合川。……ですが、はっきりと言わせてもらいます」

「な、何だよ……」

「あなたの《願望》、あなたの真実。それらを知ったとしても、きっとひづりは――」











 《和菓子屋たぬきつね》第2期 9話 『互いに悪魔の王であるがゆえ』

お読みくださってありがとうございます。


 次回から本格的にラウラ・グラーシャ、《グラシャ・ラボラス》の計画が最終段階へと向かい始めます。

 彼女が求めているものは何なのか。

 その《願望》と《執着》の先にあるものは……?


次回、《和菓子屋たぬきつね》 第2期 10話


 『ハゲワシはその星月夜を待っていた』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ