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和菓子屋たぬきつね  作者: ゆきかさね
《第2期》 ‐その願いは、琴座の埠頭に贈られた一通の手紙。‐
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1話 『君はラウラという一人の転校生だった』

休暇を終え登校したひづりはいつもの学生としての日常へと帰って来た。

そんな折、「今日から一緒に学ぶことになった交換留学生を紹介します」との担任の言葉に、2年C組は沸く。


その日。ひづりの日常に《異常》が侵食を始めた。




 1話 『君はラウラという一人の転校生だった』




 遥か夜空に輝く一面の星々を、一柱の鳥の《悪魔》が眺めていた。

 フェリックストーの海岸線は背後に遠く、また《彼女》が佇む埠頭の先端部は立ち入り禁止故に人々の喧騒も無い。

 穏やかな潮騒だけが、埠頭を支える柱たちにぶつかっては流れていく。吹き抜ける風も今はただ優しく《彼女》の羽毛を柔らかく撫でている。

 けれどそんな安穏とした夜の沖合にあって《彼女》のその黄色の瞳は頭上とそして海の波間に反射した月光を受けてぎらりぎらりと輝きを放っており、水平線を見つめる眼差しには確固たる決意と煮え滾る様な《執着》の感情が滲み出していた。

「……官舎、ひづり…………」

 《彼女》の口唇が一人の少女の名を呟いた。それは数ヶ月ぶりに訪れた《人間界》の埠頭で立ち尽くしていた《彼女》が数時間ほどもしてようやく初めて口にした言葉だった。

 徐に《彼女》の艶やかな黒い翼が厳しく開かれた。幅にして十メートルを超えようというその両翼は羽の一枚一枚に冷たい潮風を受け始めると次第にゆったりと《彼女》の体を宙に浮かせ、やがて煌めく星月夜へと舞い上げた。

 《彼女》の金色の瞳はただ東を見つめていた。彼方、海を越え大陸を越えた先にある、《親友》が生まれ育ったその日本という国を――。







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