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和菓子屋たぬきつね  作者: ゆきかさね
《第3期》 ‐勇者に捧げる咆哮‐
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   『ご機嫌の出発』        2/7




 幼馴染と行う一ヶ月と一週間ぶりの長距離ジョギング。憂いの一つであったアインの体調が聞いていた通りずいぶん良さそうだったため、ひづりはほっと胸を撫で下ろしていた。

 着替えを済ませ軽く柔軟をしたりアインの体にもマッサージなどを施したところで、ひづり達は揃って家の前の道路へと出た。朝の十時前。味醂座家は住宅地にあるのでこの時間は閑散としているが、一応車の往来を気にしつつ、ひづり達は最後のストレッチを済ませた。

「じゃあ、今日も一時間くらいで戻って来るかい?」

 見送りに出て来てくれていたアサカの父親、味醂座頼朝が腕時計を見ながら言った。今日はいつもの散歩と違って天井花イナリと和鼓たぬこが来る事を彼は事前にアサカから聞いていたらしいがしかしそれをすっかり失念していたようで、先ほどは玄関に寝巻きの格好で現れて「やぁしまったな」と頭を掻いていたが、けれどそこでもう面倒くさくなったのか以降取り繕うでもなく、今もくすんだ水色の寝巻き姿のままだった。たぶんこの後二度寝でもするつもりなのだろう。

「うん、行って来る!」

「アサカ、アイン、ちゃんと天井花さん達のペースに合わせるんだよ?」

「分かってるって! 大丈夫大丈夫!」

 父親に返事をしながらアサカは体を軽くぴょんぴょんと跳び上がらせてジョギングのリズムを取り始めた。

「心配だなぁ……。ひづりちゃん、今日もアサカのこと、お願いするね?」

「頑張ります」

 調子を整え終えたひづりも地面を爪先でとんとんと蹴りながら彼に返事をした。

「イナリちゃんと和鼓さんは……本当にそれで行くんですね……?」

 頼朝はちょっと困った様に二人をじろじろと見た。

「うむ。見ての通り問題は無い。アサカとひづりもわしが監督しておく故、何も心配は要らぬぞ」

 和鼓たぬこを背負った格好のまま天井花イナリは如何にも自信ありげにそう答えた。味醂座親子と同じく、事前にそうすると説明されていたひづりでさえ改めて「本当に大丈夫なのか……?」と思っていた。やはり小学生くらいの少女が涼しい顔で成人女性を背負っている姿はかなり目立つ気がした。

「……ねぇひぃちゃん。私もひぃちゃん背負って走って良い?」

 するとスポーツ人間の血が対抗心でも燃やし始めたのか、アサカがそんな事を言い出した。ひづりは思わず少し吹き出した。

「ふふっ、ちょっと面白そうだけど、駄目」

「駄目ですか……」

「だってそれだと私の運動にならないじゃん」

「確かに……」

 アサカは悔しそうに納得しながら、また天井花イナリ達を羨ましそうにじっと見つめた。

「では準備は良いな? 行くとしよう」

 持ち物の最終チェックを終え、ひづり達はあくびをする頼朝に手を振ってから走り出した。

 大勢でのジョギングで楽しくなってしまったのか、アインは最初から成犬の様な軽い足取りだった。




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