77灯 ゴーヤシン
<TOKISDEO・RADIO>
「どうも、こんばんは。私、TSO宣伝部のゾン・クラヴィラです。今回も前回のおさらいあらすじしていきましょう。」
A1:ヤク一行はメスカル帝国の教会へと訪れる!
ーーメスカル帝国、とある教会の扉前にて。
「起きろヤク、さっさと行くぞ!」
俺はサンライトの声で意識がハッとした感じで目覚めた。
ちょこっと、ミルノへのご褒美を考えていただけだ。
だが、サンライト達には扉の前で立ち止まってるように見えてしまったらしい。
「……そ、そうだなサンライト。待たせてすまない。」
俺は教会の大きすぎる扉に手をつけて開く。
やはり、重かった。
教会の中ではもう、何らかの儀式が始まっていた。
木製のソファーみたいな所に如何にも信徒ですよという集まりが座っている。
彼らの視線は教会の奥にあるステージに集められている。
そのステージには、頭上に丸いサボテンを浮遊させている美少女が説教をしている。
「ーーさぁ、皆さん今こそ! 今こそ境界樹に祈りを、ををををを? あっれ~、信徒の遅刻ですか。」
彼女は天井の壁画を仰いだ。
と、思いきや運悪く俺らに視点変更した。
信徒達も、何事かと言わんばかりにこちらを睨む。
「信徒じゃねぇよ、クソアマ。
俺ぁサンライト。コイツらと洗礼されに来たんだぜ!」
「ほう、つまりはこのタイミングで信徒申請すると?」
「信徒にならないと洗礼出来ないで候か?」
「そうですよ、磯臭いヒトデの青年。」
ーーパチンッ!
蛍光色の黄緑髪を揺らす彼女は急に拍子をとり。
信徒達の視線を再度、ステージへと戻す。
「はい、今日は急用が出来たんで皆さん帰ってください。ではまた明日。」
その指示を聞いた信徒達は先程までの力を脱力させてぞろぞろと教会から立ち去っていく。
「さ、そこの机でお茶会しましょう?」
彼女が手で案内した場所にはいつ用意したか分からない五人用のテーブルがある。
ここは、おとなしく従って座ろう。
ーーコトッ
机に豊かな香りのするコーヒーを置いたのはお茶会を提案した彼女だった。
菓子でもなくお茶でもなく、出てきたのはこれだけ。
お茶会とは? ……気にしたら負けかな?
「私お手製の『ゴーヤコーヒー』です。どうぞ。」
サンライトは彼女の態度が気に入らないのか机を握り拳で叩き、言い放つ。
「クソアマぁ! 俺達ぁお茶会しに来たんじゃねぇんだよ。梅酒だせや!」
「怒るとこそこじゃないよねサンライト!?」
「カエデ、ナイスツッコミだ!」
「ヤクこそ何か言ってやんなよ。」
「恐くて何も言えないんだわ俺。てへぺろ。」
「はいはい静粛に静粛にっ! サンライトと言いましたか?」
「あぁ、俺はサンライトだ。文句あんのか?」
もうっ、何でいつも喧嘩腰なんだよサンライトは。
「何も文句つけるつもりはありません。
ただ、理由もなくクソアマ呼ばわりされるのは気に入らないので仕方なく自己紹介致しましょう。」
そう言って彼女は大の字のポーズをとり、口を開く。
「私は境界樹教司教『苦食』炎蟲族サソリ科。
名は、ゴーヤシン・タイダナ。
親しみを込めてゴーヤちゃんと呼びなさい!」
何だその引き運の良さそうな名前は。
と、俺は心の中で静かにツッコミするのであった。




