58灯 脱出
<TOKISDEO・RADIO>
「どうも、私TSO宣伝部のゾン・クラヴィラです。
今回も前回のおさらいあらすじしていきましょう。」
A1:カエデはツナミの挑発に乗って怪しい薬を服用した。
A2:クソ雑魚底辺作家50日連続投稿期間中
【project:Dragoon】の3日目を見ますか?
……yes/no
拙者は迷わずyesのウィンドウをタップする。
また、映し出されたのはカエデが監禁されていた部屋だ。
だが……!?
そこにカエデの姿はなかった。
あるのは無理矢理千切られたような竜翼、竜角、竜の尻尾で候。
生々しく、痛々しい鮮やかな血を流す残骸だけがその実験室に残っていた。
カエデはこの地獄からの脱出に成功したということなのだろうか? もしくは……
と、考察した辺りでタイミングよくモニターから光がつく。
そこに映るのは黒い笑みを浮かべた母上だった。
「ふふ……ッ!?」
ようやく、この部屋の違和感に母上も気が付いたようだ。
「どうゆうこと! カエデはどこ!」
必死にモニターから部屋の周囲を確認する母上には冷や汗が滴り落ちている。
「まさか……!?」
勘づく母上に焦りを見せる部下研究員が走り寄る。
「芋杉博士! すいません、実験室Rー0829に熱反応無し。脱走したと思われます!
さらに、他の失敗実験体『竜娘』が全滅されました!」
「そんなのわかってるわよ! さっさと実験体Rー0820を捕える部隊を行かせなさい。」
「先程、部隊を出動させました。
今から無線で繋ぎますか?」
「あら、貴方思ったより優秀じゃない。
すぐそれ頂戴。」
母上は部下から貰った携帯型小型無線を耳に当てて連絡をとる。
「もしもし、私は芋杉博士。
そちらのフロアに怪しい人物はいるかしら?」
「います、彼の周囲には黒い複数の線が浮遊しています。」
「黒い線……ふふ。面白い結果が出たわね。」
「何を呑気にしているんですか芋杉博士。
命令をお願いします!」
「殺して頂戴、後で解剖するわ。」
「了kーーぐふぁっ!」
「ーーどうしたの!」
「あー、お電話代わります。
どうも、芋杉博士。僕は成功実験体Rー0820です。」
「……あなた、生きてて良かったわ。」
「ふざけるな、お前とはこれっきりだ。
これ以上犠牲を出したくないなら俺の脱走を邪魔する行為は今から一切するな。分かったな?」
「ふざけてなんかいない、帰ってきて……貴方。」
「随分と上手い泣き真似だな。
安心しろ、お前の夫はやめても僕はナミを心から愛す父親であり続ける。ーープチッ」
「…………博士。」
「……いいの、これが私への罰だわ。快く受け入れましょ。」
拙者はその時見た。
母上の本物の涙を。無機質な金属床の窪みに溜まる水溜まりも。
ーー母上は泣き崩れた。
残酷な実験を以て拙者の些細な願いを叶えた母の醜き結末。
それを拙者は涙で曇る視界からただ眺める事しか出来ない。
悲しさに染まった拙者を置いていくように視界は黒に染まりあの画面に戻る。
【ツナミを葬る】を閲覧しますか?
……yes/no




